記事一覧
現代短歌2023...7/20『 蓮ひらく 』
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足守の みずぜめのあと 池ありて 腹きりしひと 蓮咲くをみるか
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本能寺 そのあけがたの うすぎりの 舟こぎだして 腹さきしひと
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秀吉は そのまま馬に またがりて おおがえしせん にぎしめし食らい
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いくばくの 蓮ひらかずば 魂がえり うてなひろがり すくいてあらん
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夏ひかり 蓮ひかりたる 色ごこち 命ついには 水にとけいる
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現代短歌2023...7/13『 原石 』
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原石の ダイヤモンドと みつめるは 原石のままの 自分だと言う
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DNA は いまだ未知なり 知らぬまま ここにありたる それをとくのは
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ありたるよ いまここにただ ありたるよ 見よそしてまた あけるなつのひ
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素朴なる 世界の誕生す 大地なく 海なくさらに 命さえなし
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そのときに 母と言うもの うまれたり その身体を まふたつにして
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現代短歌2023...7/10『 水没 』
・・・「2018年7月7日真備町の我が家は水没す。」・・・
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水没の 日を思いだす 雨の音 そして窓から およぎだした時
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水没す これがわが町 電柱が 隠れてしまう その水の中へ
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水中は さてもふしぎの 感覚を われにあたえる 胎内をゆく
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すべてみな 水没すると みえるとき きりさめがふる うすびかりする
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たすけられ 橋のたもとに たどりつく 盲目のひとの そのてをにぎる
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現代短歌2023...7/9『 雨ふると 』
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もろともに 諸天みるべし 夏ぞらに あますことなく わがつみみゆる
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さいはてと いう場所に来て さらになお さいはての地は 霧の中かな
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雨ふると かならず雨と したしくす どの町にふる どの路にふる
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すべて雨 雨の音さえ 消すは雨 ただつめたくて 雨の音する
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つめたさに 身をすくめるは かれである ぬれているなら あめやんでくれ
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現代短歌2023...7/8『 バンジージャンプ 』
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ジャンプする なにもつけずに ジャンプする それこそが意味 おお それこそが
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神ありて また虚無ありて 消えんとす あらわれんとす もどらんとする
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谷底へ われは落ちなん 永遠の まだみぬものよ おまえはだれか
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虚無ひかり 虚無あたらしく 消えんとす ここにありてむ 神の声とも
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みちびかれ そのしんえんに 落ちんとす われはわれなり そしてだれなのか
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現代短歌2023...7/7『 おけら 』
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めざめよと われめざめよと 「ちひろ」いう はなちりばめて にじませるもの
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じべたより おけらはいでる 星とせし おけらかわゆし 神のおぼゆる
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われおもう 夏の朝には あゆみだす 詩人ありせば 碧玉の日と
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ほうせんか あかしろ咲くは 都井岬 問われるままの 奔馬ありけり
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七月の アスパラガスは ゆたかなり しおからとんぼ むぎわらとんぼ
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現代短歌2023...7/6『 色彩 』
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色彩の おおくはやがて 仮色なり おぼろのちぶさ あわゆきのちぶさ
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母よ母 うれてゆく実は 夏の日の おだやかならぬ プラムの色か
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夏霧は かくしたまうな この道を あやしきこころ かなわぬこころ
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あまたある 色はどれとも いいがたし ましろきはなを ただ愛せると
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ゴーギャンの えがけるひとの 島ありて いまのいまこそ その背にふれる
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現代短歌2023...7/5『 永遠 』
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永遠を かたることばと そいねする 永遠たるは しらざる闇か
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永遠を このはなにみる このはなは 永遠の岸 さきいでるとき
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永遠を さまようひとよ めざめるか まだあけぬそら 息するときよ
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永遠の うちなるときは はてもなし ただしずめる滝 こおれる滝よ
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永遠の 微笑をきみは ふりむける 死をのぞむわれ 死を厭うわれ
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現代短歌2023...7/4『 あかずきん 』
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あかずきん たちどまりたり 夕ぐれに 森の内より 呼ぶ声のあり
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あかずきん 我が肉体の ここにあり 花つめという われのにくたい
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あかずきん ここよりさきは しるべきか おおかみやさし くいいる歯もまた
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おおかみは ぜつぼうせずば 生はなし 少女食うのに なみだはいらじ
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おおかみは ひとみかなしき 夕ぐれの はきだしてみよ いとし少女を
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現代短歌2023...7/3『 怪物 』
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とつぜんに 風雨きたりて 告げんとす 闇の国世の さけめあらなむ
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吹き飛びて おおくの家は 裂けんとす 闇走りなり 地獄のけしき
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奥底に けはいするもの うごめくは また来たらんとす うんめいのあさ
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かいぶつは そのしんぞうは くろき肉 うごく音する あけゆく空に
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しらされず 怪物ここに うまれるか つぶれたる眼に にくしみのくち
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現代詩2023...7/2『 ピカソ 』
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死する友 ブルー・ピンクなお アルルカン 女泣くかは 女しだいなり
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夜の海 のぞきこむ眼は 発見す 子供・クラゲほら ウミウシ・ヒトデ
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ゲルニカは すでに後方へ くらき部屋 突き出される手 やはりにんげんの
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画家はわれ モデルはおまえ 闘牛場 つきだす剣と かわされる愛
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肉体の 肉のさけめの おどろきの くるしきばしょと たのしめるわれ
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現代短歌2023...6/30『 ランボオ 』
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荒寥の みさきに立つは ランボオなり 沈める宮殿 とびされ倨傲
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草地あり 兵士くずれる 青空よ 死はひつぜんの ほほえみもちて
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歌よあれ 永遠はかなし 革命も 船よりおつる 皇帝のさけびも
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ランボオと 酔いつぶれる いしだたみ すくなくとも今 せいしんである
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撃てばいい 撃たれればいい このしゅんかん 永遠であれ 神よ見よここに
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現代短歌2023...6/26『 レオナルド 』
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ひかりさす つゆのはれまです つかのまの レオナルド描く ユリのつぼみです
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マリア来て ユリのつぼみは しずくちる 神は大海に あくびするごご
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名はイエス 名づけたらむは 神なるぞ つゆのはれまの 白ユリのさく
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ここに来て マリアかんばし 立ちたるは 神眠りたる 死海のほとり
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いなづまに うたれてわれは イエス知る それはグノーシス 神の愛なり
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現代短歌2023...6/25『 花と茶 』
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うつしみは はくらくするや つばきさく すいめんかにて 仁王たつらん
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そりあがる はなはまんてん 地底より あいにくしみの さざなみとせよ
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茶は古木 るてんするみは こぼれおつ ひどき声にて おお おお と言え
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毒酒あり そのむなじさく 白き花 どんどろどろん ふさぎ虫さえ
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ペリー来たり さくらのはなは アメリカへ しんけんうつや みどり葉ちるや
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現代短歌2023…6/23『 母と行く 』
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池川の 山の中なる 墓近く アリジゴクにて あそぶと言えり
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池川の その急坂の 上に立つ おおきなる門 その奥の庭
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池川の 北は崖にて 清水あり 鯉飼いたれば しんしんとわく
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池川の トウモロコシは 高く伸び その夏景色 その坂の道
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池川の 細き庭より のぞみみる この集落の コウゾ・ミツマタ
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