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No.18/好きな作家の思考深掘り方法を知る【若い読者のための短編小説案内】(著 村上春樹)

スリランカカレーを食べてお腹が燃えているお昼すぎ、今日は久しぶりに小説でもと日本文学コーナーに。

小説家それぞれの個性が現れるタイトルがずらっと並んでいるのをみて、これは選ぶのがしんどいな、と思いました。というのも、エッセイや自己啓発、ノウハウ本、伝記、その他の本と違い、小説のタイトルはなんの話か分りづらいものが多く、表紙も見えない状態。なかなか読みたいと思える本に出会えませんでした…。

日本文学コーナー。個性がぶつかる。

手に取った理由


そんな中やっぱり目に留まるのは自分が知っている作家、それも好きな作家の本。例によらず、村上春樹さんのコーナーに目が留まりました。よく知っている“意味がわからない”に結局惹かれてしまったんです。

さて、では村上春樹さんコーナーから何もを読むか。これは割とすぐに決まりました。【若い読者のための短編小説案内】。「小説読んでいないな」と最近思っていたので、小説を。と思ったのですが、こちらが先に目につきまして、そこから村上春樹さんの文章について思いを馳せ始めました。

村上春樹さんといえば、数年に一回かなり長めの長編小説を出されるイメージがあり、その上、その長編小説はとても難解なイメージ。一種のアート作品と対峙しているかの様に理解できない、けど何か文章の端々で惹きつけられて読み進めてしまう(これは私の読解力の弱さもあるかもしれない)、そんな風に思っていました。

しかし、これがエッセイや対談などになると、変わって分かりやすく噛み砕いて、そして(ダーク)ユーモアを伴って(世間の正しい解ではなく)“村上さんの考え方、思考”を開いて下さるー。そんなギャップに惹かれる方は多いのではないでしょうか。

今日は、そんな村上さんが教えてくれる村上式短編小説の読み解き方を読んでみたいと思います。

『1ヶ月 毎日 本を読む』ルール


【ルール】
・手に取ったら、まずなんで取りたいと思ったのか、読みたいと思ったのか自分の心を深掘りして記す
・丁寧というよりはザッと読む
・要約と感想を書く
(ダラダラ書かない為に20分制限を設ける)


です。

要約してみる

戦後日本の代表的作家6人の短編小説を、村上春樹が既存の評価とは違う視点で読み解きながら紹介。

冒頭には、村上春樹が創作していく上で、短編小説が長編小説を書く上でどういった役割を果たしているのか、そしてこの本を作るきっかけとなったアメリカの大学で行った授業についてなど、(有名なものではなく)自身が愛する短編小説についてじっくり語る。

何気ない一文からの思考の深め方、物語の発展の仕方、村上の創作の秘訣も垣間見える刺激的な1冊。

読んでみての感想

村上さんは戦後日本の有名作家6人の短編小説を一つずつ紹介しているのですが、中でも【小島信夫 「馬」】について読み解いている話が面白くてそのまま本屋で探して、帰りに購入してしまいました。

文章としては読みやすく(リーダブルに)書かれているのに、話の筋が“ように変”で、その奇妙さにどんどん飲み込まれていく小島さんの短編小説について要約と共に紹介されているのですが、もう本当に意味が分からなくて面白いです。

左の本で紹介されている「馬」が右に収録

「馬」の要約:うだつの上がらない男が、奥さんに言い含められ、(まだ一つ目の家の借金も返せていないのに)何故か自宅の空き地に新たに二階建ての家を建てることとなります。その時点で男は(お金は仕事とアルバイトをしても足りないくらいなのに)何故建てるのかと混乱しています。ここまででもだいぶ奇妙でしたが、奥さんと棟梁の会話でさらにその家の一階には馬が暮らすための部屋が用意されることを知ります。完成後は馬との同居が始まり、そしてなぜか馬が人語を話し始めるー。

最終的には冒頭で男が心の中でぼやいていたことに着地をするのですが、もうずっと“妙”。でも、さらさら読めちゃう。そして確実にフィクションなのにリアリティがある描写が多く混乱しつつも面白いと感じるなかなか変な話でした。他の5人の短編も実際に読みたいと思うと同時にその時代のその方々周辺の小説を読みたいとも思いました。

まとめ

誰一人として同じ生き方をする人がいない様に、読書もまた同じ本を読んでいても捉え方読み方は十人十色。その中でも、村上さんの読み方に触れてどれだけの愛を持って、本に、その作家の思考に主体的に触れているのかを痛く実感しました。スピードを重視しがちで、音で聴いたり、誰かの要約を見て読んだ気になる。それが小説や物語でも。悪いというわけではなく、自分はどの様に読んで在りたいかなと思う読書でした。

本日もお付き合い頂きありがとうございました。
また明日


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