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広告デザイン制作に潜む問題と解決思考

広告制作のデザインプロセスにおいて、数多くの問題が発生します。それらは大概にして予期できないものが多いわけですが、この記事で綴る私の過去の経験が、皆さんが今後直面するかもしれない問題の根元が何かを突き止め、それに対処する何かのヒントになれれば幸いです。

制作プロセスにおける問題解決の難しさは大きく分けて2つあります。
まず広告制作を請け負うことで直面する問題と、広告発信側のKPIないしKGIに関わる問題です。つまり広告側としてはクライアントからの巨額予算をかけて行う施策で、望む効果を出す必要が出てきます。認知度をあげるための広告施策と異なり、短期的利益を狙う施策はわかりやすい定量的な利益を出さないといけません。
ですが、ここでは広告制作側で直面する難しさを焦点を当てて語ります。

まず私が過去手がけてきた仕事の中で以下のケースがありました。

① 発信者(クライアント)が広告したいものしっかり理解できていない。

② 発信者が受信者側(ターゲット)のことをしっかり理解できていない。

③ 発信者側の広告担当者、広報部署に複数の決定権を持った人がいる。

④ 発信者側の決定権のある人が、場当たり的な意思決定をする。

④ 発信者側が望む広告効果を上げるために必要な広告費がない。

⑤ 発信者側が制作側にかかるクリエイティブ修正の負荷を理解できない。

他にも細かくあげたら色々なケースがあります。単純に6つに分けられるものではなく、問題はいつも複合的です。

これをやれば解決できるなんて方法は書きませんし、あるかわかりません。問題はいつも目に見える問題と見えない問題が複雑な事情で絡みあって起こります。そして、クライアントも変われば制作時期や取り巻く環境でいかようにも変化します。センター試験対策じゃないので、過去問を解いて対策を取れるものじゃないんです。


言えることがあるとしたらこれです。


柔軟であること。


つまり、
過去の成功事例を忘れて
頭を常に柔らかく、新しい状況に慎重に対応すること。

広告デザインの現場で求めれられる、制作者として大切な姿勢です。


一方で問題というのはまた、一見外見からは捉えにくい影にも潜みます。

例えば、ケーキに例えてみましょうか。
私はケーキで言えば、ミルフィーユかモンブラン派です。
まあ、それはどうでもいいのですが、ミルフィーユというのはとにかく崩れやすい。上の部分からフォークが入りにくい。うまく差し込まないと簡単にケーキごと倒れます。ただ下の層は比較的残る。皿地に近いため倒れにくい。

一つの仕事にもミルフィーユのごとく、いくつもの層があります。


[case 1/広告代理店を挟む]


お客さん(企業経営者)

お客さん(広報担当)

代理店(営業担当)

代理店(プロデューサー)

外部デザイン制作会社(経営者)

外部デザイン制作会社(アートディレクター)

外部デザイン制作会社(デザイナー)

こうしてみると7層のミルフィーユです。

そしてさらに、人が関わる場合も多くあります。


[case 2/スチールメインの広告キャンペーン]

お客さん(企業経営者)

お客さん(広報担当)

代理店(営業担当)

代理店(プロデューサー)

代理店(クリエイティブディレクター)

外部デザイン制作会社(経営者)

外部デザイン制作会社(アートディレクター)

外注先(クリエイター所属事務所/エージェンシー

デザイナー/フォトグラファー/スタイリスト/ヘアメイク/モデル/タレント/ダンサー/俳優 など

細かく言えば、それぞれのクリエイターにもマネージャーやアシスタントもいれば、撮影物品のリース先、撮影機材レンタル業者、ロケバス、ロケハン、諸々の手配に必要なスタッフィングまで、関わる人々の層はさらに厚みを増します。
流石にここまで高さが増せば当然ですが、ミルフィーユも食べにくくなるわけです。


「この食べにくさ」=「問題の扱いの難しさ」


と考えてもいいと思います。
間に柔らかいカスタード層もあれば、生クリーム層もある。かと言えば融通の効かない硬いパイ生地層もあり、これらが連続するわけです。フォークという根本的ニーズが下までストレートインで刺さるかどうかです。層が厚ければ厚いほど刺さりにくい。当然です。


[case 3/直接クライアントと仕事する場合]


お客さん(企業経営者)

お客さん(広報担当)

外部デザイン制作会社(経営者)

外部デザイン制作会社(アートディレクター)

外部デザイン制作会社(デザイナー)

この場合はずっと食べやすくはなります。
私の場合は、広告代理店を挟まずに直接に企業経営者や、広報の決定権のある方々とお仕事をするこのケースが多いです。


当然ですが、私たちは問題を選ぶことができません。
それぞれに立たされた立場から、見えてくる問題と、見ることができない問題があります。そして見えてくる問題に対して、解決方法は少ないですが3つだけあります。


問題の「表層」の解決につとめるか


あるいは


問題の「深層」の解決につとめるか


これでダメなら


「静観する」しかないです。



3つだけですので、覚えておいてください。

そして、この考え方はディレクター、デザイナー、役職問わずに身につけておくべき思考法となります。
なぜかというと、私たちは問題が発生した時にどうしても、目の前に起こっていることに囚われてしまう傾向があります。ここで一歩引いて問題を俯瞰できるかどうかで、何が変わるかというと




時間を産むことに繋がります。




つまり、
「それ、そもそもやらなくてもいいんじゃない?」




本来であれば解決が不要なものに時間をかけること自体が無駄を産むばかりか関わる人の時間を奪い、コストがかかります。

そしてタチがわるいのが、広告施策で動く予算が大きければ大きいほどその無駄も広がるわけです。



長くなりましたが、最後にまとめます。

・可能であれば問題を事前に想定しておく
・問題が何かを見える範囲で探る
・問題の根本的な解決方法を探る



そして、最後にもう一つ付けくわて終わろうと思います。

問題の根本を見る習慣は、デザインでも大きく生きてくることになります。
問題を捉える力と、デザインの構成要素を捉えて組み上げる力は、同義といえます。
理由としては、いずれにおいても物事の優先順位を公正に捉える目が必要とされているからです。





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