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広告デザインを考える ⑦ [模倣と試行]

「美しさ」とはなんぞや、という普遍的なテーマを深掘りしてみたいと思います。その美への追求のプロセスで経験する「模倣」と「創造」の問題にも触れていきます。
私たちは「模倣」から多くを学べます。ただ、その「模倣だけ」で果たしていいのですか? という話をします。

美とは、理屈で考えると個人によって受け取り方によって変わるように思えるのですが、美しいと感じる対象は人類で共通しています。
それは、何かの比率なのか、数値なのか、余白や間合いなのかよくわかりませんよね。皆さんもご存知のような歴代のアーティストやデザイナーだけでなく科学者や医学者など、自然界にある美しさには何があるのか解明しようしてきた方々が存在してきたわけですが、ここで一つの疑問が生まれます。


美しいと思うものを、ただ「模倣するだけ」でいいんですか?


まず先に断っておきますが、「模倣」はすべきです。たくさん「模倣」してそこから私たちは多くを学べます。ただ問題は、「模倣」だけでいいのか? です。

YESの方もいると思います。それはそれでいいと思います。
ここにおける模倣の良い点は何かと言うと、「時間の節約」でしょうか。それはエネルギー消費の節約でもあります。
例えばビジネス関連の書籍を例にあげると、すでに誰かが仮説検証をえて実証できるものが紹介されているものを見ることで、手取り早くその知見を習得するというのが大方の目的になるはずです。これは検証にかかる時間の節約です。また、たとえば、このnoteで有料記事を買うのも同じ「時間の節約」です。


では、こうした模倣の行為が意味することは何かというと



自分が「信じる」成功事例の反復
 と言えます。



つまり、以下のようにも言い換えられます。



一連の創造がただの模倣で終わる場合、
それは自分が「検証した」成功事例の反復ではない と言えます。



何かの問いを立てて、造形の美を探るというのは、時間も消費しますし疲れます。当然です。


また、一方では先ほどの問いに対して、NOの方もいるはずです。

未開の「美しさ」に行き着くまでに度重なる周り道や間違いから、私たちは多くを学び、造形力をあげることができることに気づいている方は少ないように思います。

[事例1]
1 → 10(解答)


[事例2]
1 → 6 → 3 → 9 → 8 → 10(解答)


[事例3]
1 → 2 → 6 → 3 → 5 → 4 → 7 → 9 → 8 → 10(解答)


ストレートに手っ取り早く、[事例1]でいいじゃないか。
これをインスピレーションでやってこなせるのはおそらく「天才」だと思います。ただ天才でさえも、[事例3]の長い回り道を事前に数多く経験しているので、[事例1]の境地に辿り着けるわけです。

ですので、この真実はこのようにも言い換えられます。

造形の「美しさ」とは、必ず実験的な試行をえて獲得するもの


上の例だとわかりにくいかもしれませんのでより具体的な例が以下です。
デザイン制作において、ロゴをデザインしたと仮定します。


[デザイン事例1]
ロゴ 3案 → ロゴ最終 1案デザイン(解答)


[デザイン事例2]
ロゴ 30案 → ロゴ最終 1案デザイン(解答)


[デザイン事例3]
ロゴ 300案 → ロゴ最終 1案デザイン(解答)


ここに共通するものは「ロゴ最終 1案デザイン」なわけですが、

これは「同じ」ロゴ最終 1案デザインには、なり得ません。

299の実験的なデザイン試行を通過してきている中でえた、微妙な形状の違いであったり、サイズであったり、色のバランスであったりが確実に内包されてきます。そしてこれは不思議なのですが、相手にそれも潜在的に伝わります。

ちなみに私の場合ですが、ロゴを作る場合、ロゴの案は少なくても事例3かそれ以上のラフ案を作ってます。だから時間がかかります。これはただ、たくさん作ってくださいというお話ではなく、

試行錯誤をしてください。

ということです。そこから得られるものが非常に多いからです。


最後に。
昔に私の先輩デザイナーがよく言っていた言葉をみなさんと共有させていただきます。その先輩がものすごく細かな文字の造形や感覚調整を行っているときによく私に言ってきました。以下です


「どうせこの調整は誰も気づかない。。ただ、なぜだか潜在的に美しさは伝わる」


「美しさ」というのは、わかりやすいものと、一見わかりにくいものが存在します。ただ、いずれも相手に必ず伝わります。

小さい、細かい、誰も気づけないような小さな美的な「違い」は客観的に見ても相手の目を説得しにくい。ただ仮にそれが「美しい」ものであれば、確実に相手の「潜在意識」に届きます。これは、うまく言えないのですが、美しいものは「たたずまい」が変わってくるんです。

感覚的に言うと、相手にとってこんな感覚で捉えれる傾向があります。

「なぜかよくわからないけど。。。いいね、これ。」




そして最後にもう一言。
もしみなさんがこれからデザイナーを目指されているのだとしたら、これは覚えておいてください。



「デザイナーは、細部にこだわれなければやる意味は全くないです。」



誰も気づけないようなことをやってください。

たくさん作ってください。

周り道を厭わないでください。

比べてください。

そのプロセスは楽しいですから。







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