マガジンのカバー画像

お仕事エッセイ

186
お仕事エッセイ
運営しているクリエイター

2023年11月の記事一覧

残心の哲学

残心の哲学

失敗や失望に打ちのめされたプロスポーツ選手が、感情を吐き出すために自分の用具を壊すというシーンをテレビでよく見る。その情熱は賛美されることさえある。テニスの選手がラケットを壊したり、野球選手がバットを折ったり、ゴルファーがクラブを曲げたりする。一時的な感情の発散になるかもしれないが、武道家としてその行為は無礼としか思えない。用具を粗末に扱うことは、そのスポーツ、そしてアスリート自身への敬意が欠如し

もっとみる
みんな違うから、みんないい

みんな違うから、みんないい

僕にはできないことが沢山ある。

重たい荷物をてっぱで運べない。
夜間作業のために昼夜逆転した生活を続けることはできない。
大型トラックの運転もできない。
機械の解体作業もできない。
CADを使い詳細な図面を作成することもできない。
見積のための積算をすることもできない。
苦手な人に対しても朗らかな営業トークができない。
膨大なデータを集計し見やすいグラフを作ることもできない。
基板の設計、機械の

もっとみる
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

毎回、アロハシャツを着て微分積分の講義をする先生など大学初年度の一般教養の授業では個性的な先生に出会うことが多かった。

ある英語の授業は洋画を見て聞き取れた英単語を3つ以上書いて提出するだけの楽単で、その講義の中で様々な洋画を見ることができた。
「ミセスダウト」、「ミリオンダラー・ベイビー」、「フリー・ウィリー」など印象に残る作品が多く早々と課題を終わらせ映画作品に没頭した。

特に「Good

もっとみる
タイヤ交換の効用

タイヤ交換の効用

昨日(2023/11/23)、タイヤ交換をした。
今週末に新潟県の平野部でも初雪と天気予報士がテレビで言ってた。
それでもいまだに町は落ち着かないような気がしている。

途切れた夢の続きを取り戻したくなるようなセンチメンタルな気持ちは脇に置きつつSpotifyで音楽を聴きながらタイヤ交換作業に取り掛かる。

ちなみに今聴いていたのはフジファブリックの「若者のすべて」である。

僕は毎年、自分でタイ

もっとみる
すべてが僕の力になる

すべてが僕の力になる

君の声が力になる
君の笑顔が力になる
今までの僕はいつも
ひとりで生きていると思ってた
大きな声で叫んでみても
誰も振り向いてくれないと
思ってたんだ
許せない事があっても
テレビのニュースに怒っても
やりきれない心のモヤモヤも
全部ひっくるめて力にすればいい
君の声が聞きたいから
君の笑顔が見たいから
何もかもを抱きしめたら
それが僕の力になる

今までの僕はいつも
勇気を出すことを恐れてた

もっとみる
WISH

WISH

疲労とストレスで耳が聞こえにくくなった時期がある。
周りが楽しそうに話をしているのに自分だけが膜のかかった世界に漂っているような疎外感を味わい、やるせない思いで日々を過ごしていた。

当時は何を見てもどんな音楽を聞いてもモヤモヤは解消されず、幸せそうなものを目にするたびに卑屈に感じた。
それほど辛い毎日を耐えるために心を閉ざしていたのだろう。

ドラマ「silent」で目黒蓮演じる主人公が恋人を遠

もっとみる
映画感想「パラサイト 半地下の家族」

映画感想「パラサイト 半地下の家族」

韓国語を学習している会社の同僚から薦められた作品。

図書館のDVDコーナーで見つけたので借りてきた。
第92回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門で受賞しカンヌ国際映画祭でもパルムドールを受賞した話題作にも関わらず、世間で流行しているものには距離を置きたい天邪鬼な性格から今まで見てこなかった。

ドストエフスキー「地下室の手記」のような暗い物語かなと思っていたが、期待を裏

もっとみる