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BOX SPACE:夢現 夢の枯渇

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かつて世界を守っていた「8人の王」の墓守をするDomino(ドミノ)。 王達が目覚めぬ様、夢の欠片を与え、子守唄を歌い続けていた。 しかし、ある疑問が彼の中にあった。  王達…
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#連載

42話 向こう側

42話 向こう側

墓守の兄弟・ドミノとドムは、かつて誰かの夢の中にあった品が並ぶ露店(ストア)での買い物を終え、家路につこうと運び屋・アネモネと落ち合った。
しかし、守護柱のリスのラルーがドミノに話があると別行動をする事になった。

8の巣の中にある長い廊下をドミノは歩いていた。
肩にはラルーが座っている。
前方を歩く第4の王のカル・去人・ミナコは無言だった。

2人の足音だけが廊下に響く。

ドミノは

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41話 去人(さりびと)

41話 去人(さりびと)

無事買い物も終わり墓守のドミノとドムは、小屋へ戻るため待ち合わせの場所で運び屋・アネモネと落ち合った。

「あれ? 何か可愛い子連れちゃって」

アネモネは、ドムの手のひらで踏ん反り返っている星の子・不機嫌顔のミィをつついて笑った。

「ミィって言うんだ」
「この子、怒ってんの?」
「いえ、生まれた時からこの様な顔らしくて」
「そっちの子も連れてくの?」

アネモネがドミノのカバン

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40話 不機嫌なミィク

40話 不機嫌なミィク

カンター上に置かれた夕日色のペンは、ドムが墓守として初めて手にするペンである。

「インク屋」の主人、緑の子・ジジアからドムはペンを受け取った。

「ありがとうございます」

ドミノは料金を支払おうと金貨を3枚カウンターに並べた。
すると、ジジアは鋭い歯を見せるほど口角を上げてそのお金を押し戻した。

「今回はペンもインクも紙もサービスだ」
「それじゃ、このお店潰れちゃうよ?」

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39話 初めての喧嘩

39話 初めての喧嘩

墓守の兄弟・ドミノとドムは「インク屋」で墓守のペンを買いに来た。

ドムのペンは夕日色に染まったオレンジ色の柄のペンだった。

緑の子・ジジアが最終段階の調整に入っている間、ドミノとドムは店内を探索した。

「ドム、これを」

ドミノはそう言うと笑顔でドムにインク瓶を渡してきた。
深紅のインクは、窓から差し込む光に包まれ、地面にはまるで夕刻の様な色を落としていた。

「夕日を閉じ込めた

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38話 墓守のペン

38話 墓守のペン

夢の解体時生まれた「星の子」ミィクと、インク屋の店主・ワニの姿をした「緑の子」のジジアは客として訪れた墓守の兄弟、ドミノとドムの注文を聞く前に欲しいものを言い当てた。

「欲しいのは、新しい日記と……そっちの子のペンかい?」

ドムはジジアの鼻先がスンスンと動いているのをじっと見ていた。

「はい。よろしくお願い致します」

ドミノは自分のカバンから長年愛用したペンと手帳を取り出し

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37話 インク屋とミィク

37話 インク屋とミィク

墓守りの兄弟は、露店(ストア)の外れにある『インク屋』に買物に来ていた。

店内に迎え入れられたドミノは、ドムの顔が真っ青な事に気がつき優しい声で近づいた。

「大丈夫ですよ」

しかし、ドムの体からは緊張が取れなかった。
何故なら、ここの店主は「ワニ」の姿をしていたのだ。

「初めて見る顔だね」

ワニの「ジジア」はドムの顔を覗き込み、目元にかけてあるメガネを少しずらし上目遣いで

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36話 緑の子

36話 緑の子

夢を解体するのは骨が折れる。
そう言ったのは、第2の王レイのカル(後継者)「夢の壊人」の火影だった。
夢の壊人は、ファミリー一族でその役目を務めていた。

夢を解体する時、夢内に溜まっていた風が外へと吹き出す。
そして、火花を散らしながらバラバラになって消えてしまうのだ。

それは、まるで夜空に花火を打ち上げた様な派手さと、その後に残る儚さとがあった。

その解体の時に飛び散る火花を「

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35話 星の子

35話 星の子

夢の壊し屋・ファミリーの火影は、墓守の兄弟・ドミノとドムに夢の壊し方について簡単に説明した。

「壊し屋は、位があってな、1番のトップが『リザード』って呼ばれる火炎滅(かえんめつ)だ」
「リザード?」
「こいつだよ」

火影は背中にくっついている第2の守護柱の「リズ」を指差した。

リズはトカゲの姿をしているが、その大きさは猫ほどあった。
爬虫類特有の固い鱗顔のリズは、長い尻尾を振って火影

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34話 夢の解体

34話 夢の解体

8の巣のブース内で閉じ込められた宇宙を目の前に、墓守の兄弟・ドミノとドムは大声で笑う夢の壊し屋・火影を見つめていた。

火影は、ようやく呼吸を整えると1つ息を吐いた。

「いやいや、墓守は勘がいいな。その通りだ。花火か……。俺らの仕事をそう例えたのはお前さんが初めてだ」

どうやら、火影はドムが「花火」と言った事がいたく気に入ったようだった。

「俺達は夢の解体って言ってもやってる事は乱暴

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33話 花火と上機嫌

33話 花火と上機嫌

墓守の兄弟、ドミノとドムは第2の王のカル(後継者)壊し屋・ファミリーの火影に案内されて露店(ストア)の間を縫うように移動した。

火影は、夢を解体するファミリーのトップで、このストア全体的の責任者と教えてくれた。

売買されるのは、空箱となった夢から引っ張って来た物ばかりで、時代や国など統一感はなかった。

「おい、これ期限切れてるぞ。食品は小まめにチェックしろっていってんだろ?」

火影

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32話 ファミリーの火影

32話 ファミリーの火影

世界は夢でできている。
その夢には「悪夢」となる「歪んだ風」が吹いており、それを除去するために王達は分身となる「面」(つら)と一緒に夢へと入っていた。

しかし、裏切りによって面達は夢を傷つける存在となってしまった。

王達は皆んなの夢を守るため、自分たちの子孫にそれぞれの役目をたくし眠りについた。

その王達の墓を守る第72代目の墓守ドムは今、元墓守である兄・ドミノと共に賑やかな露店(ストア

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31話 露店(ストア)と8の巣

31話 露店(ストア)と8の巣

墓守の役目を弟のドムに継承後、意識を失ったドミノはようやく動ける様になった。
肺いっぱいに吸い込んだ空気がいつもより薄い……ドミノはそう感じた。

アネモネの空飛ぶ絨毯の上で、ドムがこれまでの事を教えてくれた。

神の部屋で意識を失ったドミノを外まで移動してくれたのは壊人の火影だと言う。
皆心配する中、サソリの姿をした守護柱のスーだけは反応が違った。

「墓守は弱いなぁ」

そう言って

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30話 ドミノの夢

30話 ドミノの夢

当たり前だった日常がすんなり自分の側から離れていく事に、胸の穴が広がっていくのをドミノは感じた。
ドミノは、役目を引き渡し……ただの人へとなってしまったのだ。
意識の隅で、皆に笑顔で迎え入れられるドムの居場所はかつてドミノの居場所だった。

ただ、自分の居場所が欲しかったのかもしれない。
大人になりきれていない感情が、胸の空白を埋めようとしていた。

ドミノは茜色の霧がかかる道を歩いていた

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29話 墓守の交代

29話 墓守の交代

「では、ここでまた無事に出会えた事、そして世界が続く事を願って、乾杯」

美味しそうな料理が並ぶ円卓を囲んで乾杯の音頭を取ったのは、赤の王「ラヴィ」だった。
この乾杯は、赤の王と黒の王が交代で務める事になっている。
乾杯、と皆グラスを掲げる。

ドミノは手前にあったカップにスープをついでドムに手渡した。

「唇が真っ青です。体が冷えてしまったんですね」

かつての自分の経験を生かし

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