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33話 花火と上機嫌
墓守の兄弟、ドミノとドムは第2の王のカル(後継者)壊し屋・ファミリーの火影に案内されて露店(ストア)の間を縫うように移動した。
火影は、夢を解体するファミリーのトップで、このストア全体的の責任者と教えてくれた。
売買されるのは、空箱となった夢から引っ張って来た物ばかりで、時代や国など統一感はなかった。
「おい、これ期限切れてるぞ。食品は小まめにチェックしろっていってんだろ?」
火影は抜き打ちで露店に並ぶ食品を手にしてチェックする。
「ここ全部、火影さん1人で?」
ドムは、テキパキと露店を覗き込んでいく火影に声をかけた。
「んなわけねぇよ。だいたい違反繰り返す奴は同じ奴が多いんだ。あと、目を反らす。分かりやすいったりゃありゃしない」
豪快に笑う火影の声は注目を集めた。
そこへ、スス汚れたローブを着たファミリーの一団がかけて来た。
「どうした」
火影の顔が真顔に変わる。
ファミリーは火影に何かを耳打ちすると、一歩側から離れ指示を待った。
「分かった。すぐ行く」
火影は、ドミノとドムの間に入り肩を組むと、
「墓守の兄弟。今時間あるか?」
「少しでしたら」
「よし、じゃぁいいもの見してやる。着いてこい」
半ば強引にドミノ達は、大きなビルである8の巣へと向った。
ビル内部は八角形のフロアーが広がり、その面に対して8つのブースに分かれていた。
フロアーは慌ただしい人でごった返していた。
「報告しろ!」
火影はドミノ達から離れると、フロアーの中心へと歩いて行った。
火影の周りに人がワラワラと集まってくる。
ドミノとドムは集まって来た人達に押しやられ、フロアーの隅へと追われてしまった。
ファミリーは一族みんな身体が大きい。
それは、かつての王達の中で1番体の大きな第2の王の血を引いているからだと火影はいつも自慢そうに円卓会議で話していた。
火影は集まってきた一団から報告書を受け取ると、隅で小さくなっているドミノ達に気がついた。
「こっちだ」
ドミノとドムは、初めて立ち入ったビルの中で目が回っていた。
人の多さ、そして、天までそびえるガラス張りのブース窓。
ブースの天井は空へと続くはずなのに、そこに広がるのは宇宙だった。
「夜空が……閉じ込められてる」
そう言ったのはドムだった。
夜空に流れる銀河は、生活にランプの灯りを使う墓守達にとって身近な存在だった。
ドミノとドムは広がる宇宙天井を見上げ、輝く星たちを観察した。
「あ、星が……消えていきますね」
ドミノは遠くで光っていた星が消えて無くなった瞬間を目の当たりにした。
それは、一瞬強い光を放つと周りに火の粉を撒き散らしながら闇に吸い込まれる様にして消えていった。
「花火みたいで綺麗!」
ドムの言葉に火影が目を丸くし、そして大声で笑った。
フロアー中に響き渡るほどの火影の豪快な笑い声は、他のブースにいた者達までも顔を出す事態となった。
「あの火影様が、笑ってる」
ドミノ達の側にいたファミリー達が口々にそう呟く。
それは、火影の機嫌がとてもいい、という皆んなにとって嬉しい事だった。
つづく
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