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すべて愛するものたち

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#詩

ことば

ことば

人の言葉はときどき、たやすく残酷で、ことばの行き先を決めてしまいます。

人はときどき簡単に、自分が見ているドラマの意味を決めてしまいます。

いつだって青いまるの中に、人がひしめいているだけなのに。

ほんとうのこと

ほんとうのこと

私はときどき夫に短い手紙を書いて、それはきっと奪われた時間を取り戻そうとしているのだと感じる。

夫はときどき私を傷つけて、ほんとうは ほんとうのことなんて知りたくない。

風景だけが真実だ。

いつか、寝ている夫の絵を描こう。

そう思ったら生き続けられる気がする。

キュート! キュート! キュート

キュート! キュート! キュート

たんすの下着の段を見たら、はいていないパンツがたくさんあるので捨てることにしました。

愛されようとがんばっていた頃の小さなパンツ。

あれもこれも、もうはかない。

この薄いのは、かわいいから取っておこうかな。あの頃のわたし、かわいいじゃない。

いきていて することがない

いきていて することがない

『新潮』9月号に掲載されていた、谷川俊太郎の詩「いきていて」の一部を引用します。

「いきていて」

くさが
かぜになびいている
あおぞらは
うちゅうにつづいている
ぼくはいきていて
することがない

たまたま手に取った文芸誌『新潮』の中の一節です。少し前まで、私はこの詩に書かれた風景とまったく同じところにいました。

いきていて
することがない

この詩を読んだとき、ああ私は生きていて、すること

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真風景

真風景

風の

あかるくないカラスウリはがらんどうで

私もまたがらんどうで
しかしなぜ重くつまっているのかわからないのです。

私は老いていつか忘れ去られるのに
朽ちゆくさまを誰も見ないでしょう。

それで私はずっと空の下 世界を見ているのです。

ときどき世界を見た気になっては

またカラスウリの世界に戻るのです。

あなたの睫毛は深い青

あなたは魔法使い

あなたが何かはじめた時から