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とりとめのないこと2022/09/04

日曜はシロティがピアノ用に編曲したBach BWV1068の楽譜を探した。

バッハの対位法が美しいのは差異と反復みたいに無秩序ではなく、秩序のあるシミュラークルに思えてくるからかもしれない。あるいは、時々秩序も乱れるけれど永劫回帰的な人生の螺旋階段みたいな。
専門家ではないから適当である。

先日からポール・オースターの『幻影の書』を読んでいる。
オースターは、ニューヨーク三部作、ムーン・パレス、サンセット・パーク、闇の中の男、などを読んだ。
だからこれで7作品目になる。

ニューヨーク三部作の幽霊たちとムーン・パレスが今のところ好きだけれど、本作品も、まだ序盤だが、中々いい。

ガラスの街を読み始めたとき、村上春樹臭が最初した。でも読んでいくうちに村上春樹じゃなくて、タブッキアメリカ版と言った方が僕的にぴったりくることに気づいた。

アメリカ文学者だけれど、どことなくヨーロッパ的でもある。

虚構や影を追いかけながら、古傷を抱えながら生きている。

そこが僕にとって、ポール・オースターの魅力だ。

僕はサリンジャーも好きなのだけれど、オースターは、サリンジャーとはまたかなり違うのに、癒えない傷を抱えて何かに取り憑かれたかのように書いている、どことなくサリンジャーと似ている気もする。

数字に意味を持たせるところも似ていなくもない。

幻影の書も序盤で、数字のシーケンスがあった。
意図的なものだろう。

数字好きと言えば、ミシェル・ウエルベックもだ。

僕が勝手に思っているだけかも知れない。

僕も数字、数そのものが好きだ。
論理的だからだとかそういうのではない。
明らかに神秘的な美が秘められていて好きだ。
特に対称性のあるもの。

$$
x^n + y^n = y^n + x^n
$$

その中でも特に僕は行列や関数論、解析学がなぜか見た目的に好きなのだけれど、どうしてなのか説明し難い。調和的な色々な物語が見えてくる気がする。

去年、僕は実験的に素数とインフィニティをテーマにした散文を書いた。

第二話以降の作中作話の章立てが素数。
誰も読まないからネタ明かしをすれば、作中作話のヒロインが残したメッセージは素数と文字数に対応しており、文章を繋げると解読できる。それは僕からのメッセージでもある。

スペイン人作家、イバン・レピラの手法を真似た。

誰にも気が付かれなかった。読まれないから、というのが99%の理由なのは充分理解している。
別にそれはそれで良い。

次に数にまつわる散文を書いたのは、対称性の破れ、という散文だ。

ドゥルーズの馬鹿げた差異と反復を茶化すつもりだった。

そのあとも、ぽつぽつと幼稚な散文を書いている。
線形代数と関数論が好きなだけかもしれない。

それからしばらくして、この前、また書いた。

テーマは反戦。
スペイン内戦とフランコ独裁政権に対して、カザルスがどれほどに反対していたか、日本人でクラシック好き以外、もうあまり思い出されることもないかも知れない、スペイン人チェロの神様。

序盤で単純なシーケンシャルとなる数字を列挙している。

2000字にまとめなくて良いなら、話の中の小道具、神の証であるノートに列挙する様子を書き殴っていた。
5000字弱になったので削った。そのうちまた、書くだろう。誰かに読まれたいどころか書くことが慰めになっているに近い。

ありきたりの言葉だが、誰かにとっての現実を書いたところで他の誰かにとってはフィクションでしかない。

この物語の結末はノートに書いて現実になったとしてもフィクションでしかないかもしれない、すぐに忘れ去られること、ということだ。

だから延々とひとはいつも弱いものや自分とは異なるものを排除するか支配して反抗するものたちと争いになる。

マロニエ、ネバネバ、[で「ある」ものと、で「ない」もの]、同じ場所に立ち止まる瞬間──意識の裂け目の深淵は、理想的でありたいことを時々忘れてウエルベックの登場人物たちみたいにシュールでシニシズムに飲み込まれる。
意識の裂け目とはパラドックス的だが予定調和を欲することは以外と馬鹿にできない。
和音そのものとして不協和音が非常に苦手でもある。ただし、ひとつの不協和音が全体において意味づけられている場合は除く。

かなり飛躍するが気候変動の要因は産業革命以降の人間の活動が拍車をかけたかも知れない。それだけではなく、地軸がコマの軸みたいにユラユラして今は温暖傾向の角度へと向かっているのかも知れない。どちらが先なのかどうなのかはわからない。

いずれにせよそうした変動が動植物の発するエネルギーのエントロピーを増大させ混沌とした状況を生み出して、人の精神もノイズに対して敏感になり、調和から不調和に、争いやいがみ合いの不協和音の連続になっているのかも知れない。

いつか書こう。

幻影の書の感想はまたそのうち書こうと思う。

こんなとりとめもないことを書いていたらあっという間に30分が経つ。ボノボになりたい月曜の昼。9月なのに暑い。

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