卍丸の本棚

L'homme est une passion inutile. J.P.S…

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L'homme est une passion inutile. J.P.Sartre Catholic 小説『Book Cover』出版致しました。 https://amzn.to/418tQoQ

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人間存在の複雑性──バタイユの視点から

0.要旨 『人間存在の複雑性』をテーマに、本エッセイは人間の存在の意味、対立と調和、内面的葛藤、ジェンダーのアイデンティティ、芸術を通じた感情表現の探求を展開する。サルトルやバタイユの哲学を踏まえ、人間実存の曖昧さと矛盾を統合へと導く道を探り、自己と他者、個人と社会の関係性を深掘りし、新たな自己を生み出す可能性を示唆する。文学作品を引用しながら、ジェンダーの多様性と芸術の力を探究し、人間の精神の頂点への道を照らす。 1.序論1.1.執筆動機  昨今の時事問題、戦争や紛争、

    • ふたつの世界

      はじめにこの投稿へのスキなどはしなくても構いませんので、どうか、「おわりに」だけでも読んでください。 本文今日は一日積算の日、外は雨が降ったり止んだりしている。 今朝、ちいさな友人に防災頭巾の作り方を説明していた。友人の名は、Sarah──14歳でガザ地区にいる。いつも家族と生き延びるために、必死だ。6月下旬から昼夜問わずの空爆と砲撃による猛攻撃のなかで、「じぶんがどう死ぬのかわからない、撃たれてなのか、飢えでなのか」とすら言いながらも、気丈にガザからの脱出を願い、生きて

      • これ以上子どもたちを絶望させないでください

        僕はこのアカウントを読書記録としてはじめ、読書好きな方々と繋がりました。 本を読めること、それは、安心できる環境がないと難しいです。 創作などさらに難しいでしょう。 日本はかつて他国を侵略しイスラエルと同じことをしてます。 歴史をどうか家族で話し合い、いまおきてることから目をそらさないでください。 大人は、自分たちの選択に責任だけでなく、義務を背負ってます。 グローバルサウスの方々に僕たちはたくさん借りがあります。 自分のこととして、いま、話し合うべきことは、そうしたこ

        • とりとめのないこと2024/06/28

          僕たちの生活は、水道をひねれば水が出るし、食べるものにも困らず、寝るところもある。それなのに、心の渇きについて悩むことがある。この心の渇きの本質は、多くの場合、孤独と向き合うことだ。そして、この孤独は他者との本質的なつながりの欠如から生まれるときもある。 小さな選択肢を追い求めても幸せを感じることができないという悩みも理解できる。確かに、社会的な成功や物質的な豊かさが心の渇きを満たすことは難しい。しかし、世界に目を向けると、生存そのものが脅かされている人々の存在に気づかされ

        • 固定された記事

        人間存在の複雑性──バタイユの視点から

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        記事

          『関心領域』:無関心の淵に咲く、禁忌の花

          『関心領域』 原作マーティン・エイミス 監督・脚本ジョナサン・グレイザー 死の匂いが漂う静寂の中で、生が息づく──ジョナサン・グレイザーの『関心領域』は、アウシュヴィッツという地獄の縁に咲く、禁断の日常を映し出す。 スクリーンは、聖なるものと穢れたものの境界線。ナチス将校ルドルフ・ヘスの家族の生活が、氷のように透明な画面に浮かび上がる。しかし、その氷の下には、人間性の腐敗した肉体が横たわっている。 自分たちのすぐ近くで起きている事をまるで何事も起きてないかのようにする普

          『関心領域』:無関心の淵に咲く、禁忌の花

          ガザのこと

           本書の著者である藤原亮司さんは、パレスチナの状況を長年にわたり取材されてこられた日本人ジャーナリストの方です。 著者の命がけの多数の取材中のお写真や動画が僕の胸を打ちました。 彼のご友人サミールさんのご家族の支援を呼びかけてらっしゃいます。 このようなジャーナリストの方の行動の発露としての言説に無関心ではいられませんでした。 現地での藤原さんの取材協力をされてこられたサミールさんのご子息、ハムザさんご一家がいまだにガザ北部から出れておりません。 ガザの国境を越える

          ページと瓦礫のあいだで

          ポール・オースターが死んだ。 そのようなニュースを見たとき、僕は偶然にも『ムーン・パレス』を再読しようと仕事場に携えてきていた。ひとがいつか死ぬのはわかっているけれど、思い入れのある作家の訃報は淋しいものだ。 『ムーンパレス』で、主人公マーコが叔父さんからもらった本を売るのは、彼の個人的な経済的必要と、物質的なものへの感情的な結びつきの間の葛藤を表している。 2024年に起きた能登半島地震の被災者も、愛着のある家や思い出の品々を手放さざるを得ない状況に直面し、マーコと同様

          ページと瓦礫のあいだで

          パレスチナと日本の災害対応:連携する不平等

          国内外での平和への訴え先週、金沢市内の交差点で信号待ちをしていた。車窓の外にガザ侵攻反対のプラカードと旗を掲げて静かに意志表示するスタンディングデモの方々が見えた。この平和的なデモは、パレスチナ人が日々直面するイスラエルの抑圧と剥奪の現実を訴えていた。 ガザの封鎖政策2007年以降、イスラエルはガザ地区に対して厳しい封鎖政策を実施してきた。この封鎖は、ハマスがガザで実権を握った後、イスラエルとエジプトによって始められた。具体的な封鎖政策には食料、水、エネルギーなどの生活必需

          パレスチナと日本の災害対応:連携する不平等

          とりとめのないこと2024/04/20 追憶

          俯く寒芍薬──尊厘と儚さを纏う控えめなその姿に見惚れていた。 花言葉は〈追憶〉だそうだ。 追憶と言えば、美しいひと、ロバート・レッドフォード主演で古い映画があったのを想い出す。 第二次世界大戦、反戦運動、青春の一時の恋から結婚し、離婚、それぞれ別々の人生を歩み、二十年という歳月の果てに再会するのだが──そのとき、そのときで精一杯だったことも、やがて記憶のひとつになり、その記憶には、塵となった時代の最後の名残りが含まれて……ここまで書いていて、筆を止め、往年の名俳優であり名監

          とりとめのないこと2024/04/20 追憶

          閑話休題:アベノミクスの功罪 ── 一時的効果とその後の構造課題

          アベノミクスの概要と一時的な効果X(旧Twitter)を見ると、トレンドに「アベノミクス」があった。 消費税に物価高、震災や戦争……。経済格差、教育格差、被災地再建問題から国防論まで、それらなくして経済動向や政治についても語れない。一方で、憲法第九条の改憲は反対である。 現代の資本主義経済の限界を日常生活を送る中で感じざる得ない。 そのような中で、経済学者らの書籍を読み返しており、タイムリーな話題だった──アベノミクスは結局何をもたらしたのか。 「アベノミクス」は201

          閑話休題:アベノミクスの功罪 ── 一時的効果とその後の構造課題

          ガザ・マリーンなどエネルギー資源についていくつか追記しました。 https://note.com/books_note2021/n/nf6bc914ca1b6

          ガザ・マリーンなどエネルギー資源についていくつか追記しました。 https://note.com/books_note2021/n/nf6bc914ca1b6

          『非-知』と現代社会の危機

          はじめにジョルジョ・バタイユが提唱する「非-知」の概念は、合理性や理性主義に対するラディカルな批判を通じて、現代社会の根本的問題を浮き彫りにする。バタイユは、知の限界を認識し、それを超える試みとしての「非-知」を探求しようとした。現代に生きる我々にとって、その試みは人間と社会の深層を解明しようとしているようにも映る。 このエッセイでは、バタイユの「非-知」概念を中心に置きながら、実存主義哲学者サルトル、マルクーゼらの思想、さらには憲法の理念や格差是正策なども交えて検討する

          『非-知』と現代社会の危機

          エッセイ『春、水底と音の光』

          我妻さん主催「(誌)的ライナー・ノーツ」に久しぶりに掲載していただきました。 静寂と情熱、内面と外界、虚構と現実が交錯し調和──和歌への敬愛と様々な芸術分野、時事との交差。夢幻の言語世界に浸りつつ、人間存在への新たな気づきも。 春、街の喧騒を少し離れたときに読んで頂けたら幸いです。 ご感想などございましたらぜひ。

          エッセイ『春、水底と音の光』

          Harmony in Alexander’s Words: A Triad of Philosophy, Enlightenment, and Science

          I strongly believe in the importance of objective reality and clear language. While I enjoy reading philosophical books and other humanities texts, I often feel a sense of ambiguity. The idea of romanticizing vagueness due to its lack of me

          Harmony in Alexander’s Words: A Triad of Philosophy, Enlightenment, and Science

          対立と調和─思考実験:真空状態と運命の関係性について

          要旨本エッセイは、偶発性と不確定性に着目した数理モデルと文学的思索を織り交ぜながら、人間存在の根源的な問いに挑んだ筆者の思考過程の一部である。 厳密にするならば前提条件の実在性の担保および、定量データとの比較検討が必須である。本エッセイでは、それらがなされていない為、学術的ではないことをあらかじめ断っておく。 筆者は「運命」と「真空状態」の関係性に焦点を当て、時間・意識変化・エネルギーの3次元座標系における数理モデルを構築する。エネルギー(生理学的基礎代謝)レベルが運命の

          対立と調和─思考実験:真空状態と運命の関係性について

          運命の彼方へ ──ミラン・クンデラとカール・ヤスパースに寄せて

          はじめに ヤスパース──懐かしくも親しみ深い名前が飛び込んできた。須藤輝彦さんの『たまたま、この世界に生まれて』というミラン・クンデラ論を読んでいたときだ。  僕が哲学書を読んだのは、ヤスパースの『哲学の小さな学校』がはじめてだった。十代、事情により色々とあったとき、祖父が心配し、僕にキルケゴール、ヤスパース、サルトルのいくつかの本を送ってよこした。すがる思いで僕は読んだ。だからとても思い入れが深く、また、今となっては、少しずつ当時を過去として受け入れはじめてもいることに

          運命の彼方へ ──ミラン・クンデラとカール・ヤスパースに寄せて