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ビートルズの名曲「Here, There and Everywhere」に秘められた作曲の裏話

今回の記事は以下マガジンに収録させて頂きました。


Here, There and Everywhere - McCartney: A Life in Lyrics | Podcast

以下のpodcast「lyricsの人生」より The Beatlesの名盤"Revolver" の名曲「Here, There and Everywhere 」を分解・分析させて頂きます。
BEATLESのファンの皆様におかれましては、翻訳だけを掲載する記事をお望みの方が多かろうとは思いますが、著作権上の問題につき どうぞご理解の程お願い申し上げます。

ビートルズの代表曲の一つで、ポール・マッカートニーがよく"自分の書いた中で最高の曲"と評価している「Here, There and Everywhere」。この名曲には、作曲者自身の想いが隅々までこめられています。今回は、マッカートニー本人の解説を基に、曲の背景やこだわりのポイントを記事とさせて頂きます。

歌詞の円環構造が生む"不思議な魅力"

「Here, There and Everywhere」で最も特徴的なのが、歌詞の構造です。最後の部分が冒頭に繋がり、円を描くように循環する形になっているのです。マッカートニーは「歌詞がまるで自らの始まりに戻ってくるような面白さ」を高く評価していました。この手法は、 Irving Berlin : アーヴィング・バーリンの名曲「Cheek to Cheek」からヒントを得たそう。

一方で、2行目までは本編の歌詞とは切り離されており、当時の習慣に倣った「前置き」になっていると説明しています。

プールサイドでひらめいた"のんびりメロディー"の秘密

「Here, There and Everywhere」は、マッカートニーがジョン・レノンの家を訪れ、レノンが起きるのを待っている間の空き時間を利用して作曲したそうです。そのため、ゆったりとしたテンポと歌い方になり、まさにその待ち時間の余裕を反映したメロディーになったのだとか。

曲の中で「"Changing my life with a wave of her hand"」と歌われている部分については、「些細なことでも人生を大きく変えうるという意味が込められている」とマッカートニー自身は解説しています。

予想外の展開が生み出す"パズルのような歌詞の愉しみ"

マッカートニーは、歌詞を書く過程を「パズルを解くような楽しみ」があると語っています。リヴァプールという出身地の影響もあり、歌詞を自在に操り、予想外の展開を生み出すのが魅力だといいます。

作曲の際は、「次にどのような言葉が来るのか」を意識しながら、まるで「パンくずの跡を追うように」歌詞を紡いでいったそうです。

フレッド・アステアが影響を与えた"颯爽とした歌唱スタイル"

この「Here, There and Everywhere」の歌唱スタイルには、フレッド・アステアの影響が色濃く出ていました。マッカートニーは、アステアの"颯爽とした歌い方"を高く評価しており、自身の歌唱にも意識して取り入れていたのだとか。

このようにマッカートニー自身の想いがたっぷりと込められた名曲であり、当時のジョン・レノンからも「ビートルズ全曲の中でも最も気に入っている1曲」と絶賛されていました。

終わりに:

ビートルズの代表曲「Here, There and Everywhere」に隠された、作曲の背景やこだわりのポイントをお伝えしました。第一線で活躍したアーティストならではの深い想いや、緻密な作曲プロセスを知ることで、この名曲に対する新たな視点が生まれるはずです。耳馴染みのよいメロディーの裏側に秘められたストーリーを知れば、改めて聴く楽しみが増すことでしょう。

ビートルズ最高傑作の一つ "Here, There and Everywhere"

「Here, There and Everywhere」の更に裏側を詳しく分析し 掘り下げさせて頂きます。

1966年に発表されたビートルズのアルバム「Revolver」に収録された"Here, There and Everywhere"は、同バンドの代表曲の一つとして長年高く評価されてきました。作曲者であるポール・マッカートニーが自身の代表作の一つと位置づけるこの曲は、叙情的な恋愛バラードながら、音楽的な深みと洗練された作品性を併せ持つ至高の名曲です。

作曲の由来とインスピレーション

この曲のルーツは、マッカートニーがバンドメイトのジョン・レノンの自宅を訪れた1966年6月初旬にさかのぼります。レノンが寝込んでいた際、マッカートニーは庭のプールサイドに座ってギターを弾きながら作曲を始めました。レノンが起きた頃には曲のほとんどが出来上がっていたそうです。

曲へのインスピレーションについて、マッカートニーは度々ビーチ・ボーイズの代表曲"God Only Knows"を挙げています。特に冒頭の数小節のハーモニーについては、ビーチ・ボーイズの影響を公言しています。当時ビーチ・ボーイズの創作活動に刺激を受けていたマッカートニーが、あのグループの珠玉の名曲から着想を得たことは至極自然なことでしょう。

極めて緻密な作曲、編曲

"Here, There and Everywhere"は、マッカートニーの優れた作曲・編曲センスが余すところなく発揮された曲と言えます。たとえば華麗な前奏の和声進行は「より良い人生を送るため」という哲学的な願いを込めた歌詞を導いています。

さらにverses部分では、主キーであるGメジャーを基調としつつ、たびたび近接する調へと転調するなど、和声の動きに豊かな変化があります。中でも歌詞の「彼女の手の動作一つで」というフレーズに合わせた斬新な転調は、聴く者の心を強くとらえます。

そしてブリッジでは、G・Bフラット・G マイナーなど複数の調号の中を自在に移動するなど、調性が「あちらこちら」と移り変わる緻密な構造となっています。これらの緻密な作曲・編曲の数々が、恋する人々の気持ちの行きつ戻りつを見事に表現しているのです。

ビーチ・ボーイズサウンドを目指した革新的レコーディング

この名曲のレコーディングに際し、ビートルズは前代未聞の革新的な試みに挑戦しました。それは、ビーチ・ボーイズの代名詞でもあったマルチトラックによる重層的なバッキングボーカルの録音でした。3日間に及んだ作業の末、ビーチ・ボーイズの陽気な合唱サウンドを再現することに成功しました。一方でマッカートニーのリードボーカルはマルチトラックで録音されています。

さらにギターにはレスリー・スピーカー効果が施され、独特の波打つような音色が出されています。当時としては画期的な手法が、ビーチ・ボーイズのようなサウンドにマッチした音作りへと繋がったのです。

絶賛と酷評が交錯した批評の行方

発表当初、この曲はさまざまな評価に晒されました。批評家の一部からは「おせっかいでくどい」「甘っちょろい」といった酷評がありました。しかし時を経るにつれ、この曲の秀逸さが広く認識されるようになります。

2000年にはモジョ誌で「史上最高の曲」ランキングの4位に選出されました。またビートルズ自身も、レノンやジョージ・マーティンを含めて、この曲を高く評価していたことが度々語られています。

今日では"Here, There and Everywhere"は、ポップス史に残る最高の恋愛ソングの極みの一つとして名を馳せる不朽の作品となりました。1966年という黄金期の最高峰を飾った、ビートルズ屈指の名曲なのです。

日本語翻訳

[Intro]
より良い人生を送るには、
僕は愛する人がここにいてほしい

[Verse 1]
ここで、一年中の毎日を彩り
彼女の手の振る動き一つで 僕の人生を変えてくれる
そこに何かがあることを否定できる人はいない

[Verse 2]
そこで、彼女の髪を撫でながら
二人ともどれほど良いことかと思っている
誰かが話しているけれど、
彼女は彼がそこにいることに気づいていない

[Bridge]
彼女がどこにでもいてほしい
そして、彼女が僕のそばにいれば、他に何も要らないと知っている
でも、彼女を愛することは彼女が必要だということ—

[Verse 3]
どこにでもいて、愛は分かち合うものだと知っている
誰もが「愛は永遠に続く」と信じている
彼女の目を見て、僕がいつもそこにいることを願っている

[Bridge]
彼女がどこにでもいてくれたら
そして、彼女が僕のそばにいれば、
他に何も要らないと知っている
でも、彼女を愛することは彼女が必要だということ—

[Verse 4]
どこにでもいて、愛は分かち合うものだと知っている
誰もが愛は永遠に続く と信じている
彼女の目を見て、僕がいつもそこにいることを願っている

[Outro]
僕はそこにも、どこにでもいる ここに、そこに、そしてどこにでも

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