ポール・マッカートニーが語る「アビイ・ロード」ラストを飾るメドレー : ~The End
今回の記事は以下マガジンに収録させて頂きました。
The End - McCartney: A Life in Lyrics | Podcast
下のpodcast「lyricsの人生」より 、1969年9月26日にリリースされたビートルズの11枚目のスタジオ・アルバム『アビー・ロード』のB面8曲目「Golden Slumbers」9曲目「Carry That Weight」10曲目「The End」を分解・分析させて頂きます。
創造性に溢れた期間の末に登場したビートルズの「アビー・ロード」は、彼らの作品の中でも特に冒険的な構成を持つ曲がいくつか収録されています。そのため、このアルバムが記録に残る最も独創的で有名なメドレーで締めくくられるのは適切です。「A Life in Lyrics」のシーズン2の終わりに、マッカートニーはビートルズがレコーディングに別れを告げる曲「ゴールデン・スランバーズ」、「キャリー・ザット・ウェイト」、そして「ジ・エンド」について語ります。
【はじめに】
1969年にリリースされたビートルズの最後のアルバム「アビイ・ロード」。その終盤を飾るメドレー曲は、バンドの歴史を象徴する重要な作品であり、メンバーたちの心境を見事に表現しています。ポール・マッカートニーのインタビューを通して、この曲に込められた思い出や葛藤、そして愛の物語を紐解いていきます。
家族との絆が生んだ「ゴールデン・スランバーズ」
ポールの音楽的ルーツは、彼の子供時代に遡ります。当時、家族や親戚が集まるとよくピアノを囲んで歌を歌ったそうです。誰もが知っている曲を、お酒を片手に大合唱する。そんな温かい経験が、後にビートルズの楽曲制作に大きな影響を与えることになるのです。
リヴァプールの実家を訪れた際、ポールは偶然「ゴールデン・スランバーズ」の楽譜を見つけました。それは、17世紀の詩にヴィクトリア朝時代のピアノ・メロディーを乗せた曲でした。ポールは楽譜が読めなかったものの、その歌詞の美しさに魅了され、自身のメロディーを付けることにしたのです。
こうして誕生した「ゴールデン・スランバーズ」は、なじみのある歌詞と優しい旋律が織りなす、心温まる子守歌となりました。ポールにとって、この曲は家族との絆や故郷への愛着を表現する大切な作品であり、メドレーの冒頭を飾るにふさわしい、穏やかで安らぎに満ちた音楽なのです。
解散の重圧に耐えながら生まれた「キャリー・ザット・ウェイト」
1960年代末、ビートルズは世界で最も成功した音楽グループとなっていました。しかし、そんな彼らの内部では徐々に亀裂が生じ始めていたのです。ビジネス上の対立や意見の相違が、メンバー間の関係を悪化させていきました。
特にポールは、バンドの将来についてジョン、ジョージ、リンゴと意見が合わず、孤立感を深めていったそうです。彼は、グループが契約しようとしていたアラン・クレインというビジネスマンを信用しておらず、その決定を強く反対していました。しかし、他のメンバーは彼の意見を受け入れようとしなかったのです。
かつての成功の楽園が崩れ去り、まるで原罪に苦しめられるような重圧に耐えながら、ポールは音楽に打ち込んでいました。「キャリー・ザット・ウェイト」は、そんな彼の心境を表現した曲なのかもしれません。"重荷"を背負いながらも前に進まなければならない、というメッセージが込められているのです。
「ジ・エンド」が示す"愛"への回帰
メドレーの最後を飾るのは、ジョン、ジョージ、ポールの息の合ったギターソロから始まる「ジ・エンド」です。レコーディングセッションでは、まるで子供の頃に戻ったかのようなメンバーの姿が見られたそうです。ビートルズ解散の重圧から解き放たれ、純粋に音楽を楽しむ4人の姿は、長年連れ添ってきた仲間だからこそ生まれた奇跡のようなひと時だったのでしょう。
そして、曲の最後には「結局、受け取った愛は与えた愛に等しい」という意味深長な一節が登場します。ビートルズの解散という"終焉"を迎える中で、彼らが辿り着いた答えは"愛"だったのです。メンバー間の対立を乗り越え、音楽に対する情熱を取り戻した彼らは、最後にこのシンプルな真理にたどり着いたのかもしれません???
「ジ・エンド」は、ビートルズにとっての子守歌であり、壮大なフィナーレを飾るにふさわしい作品となりました。メドレー全体を通して、彼らは自身の歩みを振り返り、新たな一歩を踏み出す決意を示したのです。
時代を超えて響き続けるビートルズの音楽
ビートルズの音楽は、単なる音の振動と言葉の組み合わせ以上の意味を持っています。それは、人々の心の琴線に触れ、喜びや悲しみ、共感を呼び起こす不思議な力を秘めているのです。ポールは、自分たちの音楽がそのような影響力を持つことを誇りに思う一方で、その秘密は謎に包まれていると語ります。
ビートルズが解散から半世紀以上経った今なお、世界中の人々を魅了し続けているのは、彼らが音楽に込めた普遍的な愛とメッセージがあるからではないでしょうか。「アビイ・ロード」のメドレーは、そんなビートルズの集大成であり、未来へと受け継がれるべき貴重な遺産なのです。
彼らの音楽は、時代や世代を超えて私たちの心に響き続けます。子供時代の思い出、人生の試練、そして愛の大切さ。これらすべてが、4人の天才音楽家たちの魂と情熱によって見事に表現されているのです。
まとめ
ポール・マッカートニーの証言から、「アビイ・ロード」のメドレーに込められたビートルズの物語が明らかになりました。子供時代の温かい記憶、バンド解散の重圧、そして愛の結末。これらすべてが、彼らの音楽に深く刻み込まれています。
ビートルズが残したメッセージを胸に、これからも多くの人々が人生の節目で「アビイ・ロード」のメドレーに耳を傾けるでしょう。彼らの音楽は、私たちに勇気と希望を与え、人生の意味を問いかけ続けるのです。
「ゴールデン・スランバーズ」の優しさ、「キャリー・ザット・ウェイト」の重み、そして「ジ・エンド」の愛。この3つの要素が見事に調和し、聴く者の心に深く染み渡ります。ビートルズの遺した音楽の力を、私たちは決して忘れることはないでしょう。彼らの歌声は、これからも世界中の人々と共にきっと歩み続けるコトでしょう。
更に「Golden Slumbers」「Carry That Weight」「The End」を分析させて頂きます。
ゴールデン・スランバーズ:アビー・ロードの隠れた名曲
眠りに誘うようなメロディーと力強いボーカルが印象的な楽曲
ザ・ビートルズの1969年発表のアルバム「アビー・ロード」に収録されている「ゴールデン・スランバーズ」は、ポール・マッカートニーによって書かれた、アルバムのクライマックスであるB面メドレーの6曲目です。この曲は、次の「キャリー・ザット・ウェイト」へと続き、アルバムの終わりへと導く流れを作り出しています。
ポール・マッカートニーの父の家で発見された詩から生まれた楽曲
「ゴールデン・スランバーズ」の歌詞は、劇作家トーマス・デッカーの戯曲「 Patient Grissel 」の中の詩「子守唄」を基にしています。マッカートニーは、リバプールの父の家で、義理の姉であるルースがピアノの上に置いていった「子守唄」の楽譜を見つけました。彼は楽譜を読むことができなかったため、自分独自のメロディーを作り出しました。マッカートニーは、元の詩の最初の節をわずかに変更して使用し、それに少し変化を加えた歌詞を繰り返しています。
穏やかな始まりから力強いボーカルへと変化するメロディー
マッカートニーは、子守唄にふさわしい柔らかなトーンで歌い始めます。ピアノ、ベースギター、ストリングスの伴奏が、彼の歌声を包み込みます。そして、「ゴールデン・スランバーズがあなたの目を満たす」という歌詞とともにドラムが入り、マッカートニーの歌声は力強さを増していきます。この変化は、サビへの移行を強調しています。マッカートニーは、「私はこの曲で非常に力強いボーカルを表現しようとしました。なぜなら、とても穏やかなテーマだったので、ボーカルの強さを追求したのです。そして、最終的にはその結果に満足しました」と語っています。
ジョン・レノン不在の中、制作された楽曲
「ゴールデン・スランバーズ」と「キャリー・ザット・ウェイト」のメインレコーディングセッションは、1969年7月2日に行われました。ジョン・レノンは、7月1日にスコットランドで自動車事故に遭い、7月6日まで入院していたため、このセッションには参加していません。
ドラム、ティンパニ、追加ボーカルは7月31日にオーバーダブされ、同日にはB面メドレーの最初の試作編集も行われました。このセッションにはレノンも参加しています。8月15日には、「ゴールデン・スランバーズ」を含むアビー・ロードの5曲に、合計30人のミュージシャンによるオーケストラのオーバーダブが追加されました。
「ゴールデン・スランバーズ」は、穏やかな始まりから力強いボーカルへと変化するメロディーが印象的な楽曲です。ポール・マッカートニーの父の家で発見された詩から生まれたこの曲は、アビー・ロードの隠れた名曲として知られています。
参加musician BEATLES 担当楽器
ポール・マッカートニー– リードボーカル、ピアノ
ジョージ・ハリスン– 6弦ベースギター
リンゴ・スター– ドラムス、ティンパニ
参加ミュージシャン
無名のセッションミュージシャン –ヴァイオリン12 台、ヴィオラ4 台、チェロ4 台、コントラバス、ホーン4 台、トランペット3 台、トロンボーン、バストロンボーン
ジョージ・マーティン-オーケストラ編曲
The Beatles の「Carry That Weight」:意味、レコーディング、そしてその重み
楽曲概要
「Carry That Weight」は、The Beatles のアルバム「Abbey Road」に収録されている楽曲です。アルバムのクライマックスとなるメドレーの一部であり、4 人全員がボーカルを担当している珍しい曲です。「Golden Slumbers」の後に続き、「The End」へと移行します。
楽曲構成
楽曲は、金管楽器、エレキギター、ボーカルをフィーチャーした中間ブリッジで構成されています。このブリッジは、「You Never Give Me Your Money」の冒頭を異なる歌詞で繰り返しています。また、エンディングでは、ジョージ・ハリスンの楽曲「Here Comes the Sun」や「Badge」のエンディングで用いられているアルペジオギターのモチーフが繰り返されています。
楽曲の意味
音楽評論家イアン・マクドナルドは、この曲の歌詞は、ソロアーティストとして活動しても、ビートルズとして一緒に成し遂げたことにはかなわないことを認めたものであり、彼らは常にビートルズの過去の重みを引き継いでいくことを意味していると述べています。ポール・マッカートニーは、この曲はビートルズのビジネス上の困難と当時のアップルの雰囲気について歌ったものだと語っています。ジョン・レノンは、映画「Imagine: John Lennon」の中で、マッカートニーは「僕ら全員について歌っている」と述べています。
レコーディング
「Carry That Weight」のレコーディングは、1969 年 7 月 2 日に開始されました。ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターは、ジョン・レノンがスコットランドでの交通事故から回復するために病院に入院している間に、2 つの曲を 15 テイク録音しました。
リズムトラックは、ポール・マッカートニーがピアノ、ジョージ・ハリスンがベースギター、リンゴ・スターがドラムを担当しました。7 月 3 日には、テイク 13 と 15 が編集され、その日にポール・マッカートニーがリードボーカルとリズムギター、ジョージ・ハリスンがリードギター、3 人全員がコーラスをオーバーダビングしました。
7 月 30 日には、7 月 9 日にセッションに復帰したジョン・レノンを含むボーカルが追加されました。7 月 31 日には、さらにボーカル、ティンパニ、ドラムがオーバーダビングされました。オーケストラは 8 月 15 日に録音されました。
「Carry That Weight」は、ビートルズの輝かしいキャリアと、その後のソロ活動における課題を表現した楽曲です。4 人のボーカルが重なり合い、メドレーのクライマックスを盛り上げる壮大な曲となっています。
参加musician BEATLES 担当楽器
ポール・マッカートニー・ボーカル、コーラスボーカル、ピアノ、リズムギター
ジョージ・ハリスン- コーラス・ボーカル、リード・ギター、6弦ベース
リンゴ・スター- コーラス・ボーカル、ドラム
ジョン・レノン– コーラス・ボーカル
ジョージ・マーティン–プロデューサー、アレンジャー
参加ミュージシャン
クレジットなし -ヴァイオリン12 台、ヴィオラ4 台、チェロ4 台、コントラバス1 台、ホルン4台、トランペット3 台、トロンボーン1 台、バストロンボーン1 台
ビートルズの伝説的曲「ジ・エンド」の深淵な魅力
ビートルズの1969年のアルバム「アビー・ロード」に収録された"The End"は、バンドの最後の曲録音となった伝説的な一曲です。ポール・マッカートニーが作曲していますが、レノン/マッカートニーの二人での名義となっております。二人名義のクレジットは最後まで続いたワケです。
4人全員が集まって録音した最後の曲
"The End"はビートルズ4人全員が一緒に録音した最後の楽曲です。アルバムの第2面のメドレーの最後を飾る重要な位置づけの曲となっています。
リンゴ・スター史上最高のドラムソロ
曲中には、リンゴ・スターがビートルズで録音した唯一のドラムソロが収められています。12本のマイクを使って録音されたこのソロは、アイアン・バタフライの曲を参考にしたとリンゴ自身が語っています。
3人のギターソロの競演
ポール、ジョージ、ジョンによるギターソロの競演も見どころです。録音エンジニアによれば、3人はまるで子供に返ったようなたくましい表情で、お互いを意識しながらも友好的に楽しんでソロを録音したそうです。
哲学的な歌詞
"And in the end, the love you take is equal to the love you make"という歌詞には、ジョン・レノンもポールの哲学的な深みを認めたとされています。愛の循環を歌った名セリフとなっています。
テクニカルな驚きと哲学的な深みが共存する"The End"は、ビートルズの最期にふさわしい傑作でした。楽曲の細部にまで意味が凝縮されているため、いくら聴いても新たな発見があります。バンドの集大成ともいえる名曲です。
参加musician BEATLES 担当楽器
ポール・マッカートニー– リードおよびバッキングボーカル、ベースギター、ピアノ、ギターソロ(エピフォンカジノ)
ジョン・レノン– ハーモニー・ボーカル、リズム・ギター、ギター・ソロ (エピフォン・カジノ)
ジョージ・ハリスン- ハーモニー・ボーカル、リズム&リード・ギター、ギター・ソロ(ギブソン・レス・ポール)
リンゴ・スター– バッキング・ボーカル、ドラム、タンバリン
ジョージ・マーティン–オーケストレーション
参加ミュージシャン
クレジットなし– ヴァイオリン12台、ヴィオラ4台、コントラバス1台、ホルン4台、トランペット3台、トロンボーン1台、バストロンボーン1台
感想 : ここまでで7202文字の記事となりました。ご覧頂きました皆様におかれましては、お疲れ様でした。
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