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「知識」を「知恵」に換えていこう

2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」の主役はあの蔦屋重三郎です。

書店員としては、どうしてもそちらに気を取られてしまいがち。でも実は来年の「光る君へ」も楽しみにしています。なぜなら学生時代に↓が愛読書だったから。

いわゆる注釈書です。このシリーズ、いまは新刊書店で売ってないのでしょうか? 試験勉強のために買ったのですが「枕草子」と「方丈記」はテストとは関係なく、文庫本感覚で持ち歩いていました。

「枕草子」で最も好きなエピソードは、やはり「香炉峰の雪」です。清少納言の当意即妙の反応に才智の冴えを感じました。

ただ改めて読み直すと、また違う感想も浮かんできます。

打てば響くリアクション。でもその価値を理解できる人が周りにいなければあっさりスルーされ、却ってばつの悪い思いをしてしまう。

元ネタである白居易の漢詩を知っていることは、当時の宮廷では当たり前だったそうです。しかし知っているだけの「知識」は冷凍庫に入れたおにぎりみたいに柔軟性と実用性を欠く。いつでも様々な用途へ応用できる「知恵」にするには、しっかり己の体温で時をかけて解きほぐす必要があります。

勝手な推測ですが、中宮定子のコミュニティには「知識」を「知恵」に換えることを推奨する空気があったのではないでしょうか? だからこそ女房たちは「知ってはいたけど思いつかなかった」と少納言を称えた。一方、少納言は向上心ゆえの競争心を抱く彼女たちを、そして素晴らしい知的空間を作り上げた定子を誇りに感じた。

よく「枕草子」は自慢話が多いといわれます。そうかもしれない。でも少なくとも「香炉峰の雪」で少納言が自慢したかったのは己の機知ではない。私はそう確信しています。

「知識」を「知恵」に。自分のnoteもそんな空間にしていきたいです。

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