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イチ書店員が「2024年に読みたい&聞きたいこと」

老舗の街の本屋さんがまたひとつ。

東京・中目黒の「新高堂書店」が、先月30日に閉店したそうです。「日本統治時代の台北で1898年に創業し、台湾の出版業界の礎を築いた」という一文に見入ってしまいました。

真っ先に連想したのは、新栄堂書店の公式サイトに記された「新榮堂今昔物語」です。

終戦間もない頃の出版及び書店事情が興味深いです。なお1946年創業の同書店は、現在西新宿のパークタワービルと南池袋のあずま通りに店舗を構えています。

「希に、お金のない学生さんに『汚さずに返してくれればよい』と貸して上げたこともありました」という一文から受けた衝撃が忘れられません。誰もが活字に飢えていた時代ゆえ、本屋の人気は高かったはず。しかし売り上げが順調だったとしても、連日リヤカーを引っ張って神田まで行き、どうにか買い付けた貴重な本を無料で貸していたとは。。。

新栄堂の創業者が優れた人格の持ち主だったのか、あるいは同種のメンタリティを備えた人がいまよりもずっと多かったのか。おそらく両方でしょう。

このテーマで「新高堂書店」の店主さんと話してみたい。私を含むいまの書店員の大多数は、こういうエピソードに触れることがほとんどありません。大型書店の正社員なら、研修のなかで会社の歴史を学んだり社長から話を聞いたりする機会を得られるのかもしれない。しかし何度も書いている通り、書店員の大半は非正規なのです。

正直に言うと、以前の私は「本屋の歴史」に興味がありませんでした。「書店員は作家になるまでの繋ぎ」というスタンスだったから。でもいまは「本屋とは何か」「世の中にとってどういう存在であるべきか」を考えるうえで、業界の積み上げてきたものを知る姿勢は不可欠だと感じています。

2024年は日本の書店史を読みたいし、聞きたいです。

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