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ハードボイルド書店員が選ぶ「2022年の1冊」

1年の世相を漢字ひと文字で表す。

一見簡単そうで、だからこそ難しい試みです。ちなみに2022年は「戦」とのこと。世界情勢を考えたらたしかにそうでしょう。でももし国内に絞るなら、↑の記事でも触れられていますが「高」こそ適切かもしれません。

私は書店員です。なので、1年の世相を今年発売された1冊の本で表してみます。

最初に頭に浮かんだのは逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」でした。独ソ戦に材を取った生々しい戦争小説。読書メーターのレビューに「これまでに読んだ全小説の中で最高傑作のひとつ」と書きました。間違いなく2022年を象徴する名作です。

ただこれだと選考基準が「戦」と同じになってしまう。しかもアガサ・クリスティー賞や本屋大賞、沖縄書店大賞などを獲得したベストセラーです。書店員じゃなくても、多くの人が「今年を表す本」として容易に連想し得るはず。さらに出版が昨年11月という事情もあります。

だったら、愛書家の書店員じゃなければなかなか存在に気がつかない新刊の中から選ぼう。そう決めた瞬間に答えが出ました。↓です。

篠崎にある「読書のすすめ」のオンラインショップで購入したので、そちらのリンクを貼らせていただきました。ありがとうございます。

読書メーターにおけるレビュー投稿数は、私のものも含めてわずか5件。一方「同志少女~」は3000件を超えています。ジャンルが違うので一概に比べられませんがさすがに寂しい。自信を持ってオススメできる名著です。

いま我々に必要な革命とは何か? それは国や社会の前に、まず己自身の「まなざし」を変えること。メディアの報道及び権威や多数派の声を鵜呑みにせず、自分で調べて考えることです。

国民が政府の決定に従うだけの「羊」になってくれたら、権力側にとってこんなに楽なことはありません。ちょっと恐怖を煽り、安全の幻想で囲い込めばすべて思い通り。連中のプロパガンダは強烈なうえにどこか蠱惑的です。アニメや特撮の悪役とは異なり、正義や優しさ、思いやりの仮面を被っています。ゆえに退けるには相応の準備と覚悟が求められる。

だからこそ読書が必要なのです。

「まなざしの革命」を読んだら、いままで正しいと信じていたことの正体に気づいて愕然とするかもしれません。ずっと黙って耐えてきたのは何だったのかと。しかし「戸惑い」と「揺らぎ」こそが凝り固まった価値観を動かす第一歩であり、人として成長する大チャンスなのです。

「興味はあるけど難しそう」と感じた方は、ぜひお近くの本屋で第九章「解放」を立ち読みしてみてください。多くの大型書店は年末年始も営業しています。この本を置いているかどうかはわかりませんが、もし見掛けたらぜひ。

私も年が明けたら再読を始めます。とにかく未熟な己をどうにかしたい。誰もがそう考えて生き方をアップデートしていけば、結果的に社会全体がいまよりも良くなる。そう信じています。

共に2023年を明るい1年にしていきましょう。よいお年を。

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