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「noteを続ける自分」を支えてくれている一冊

内容は忘れた。でも書かれていたある文章をハッキリ覚えている。

そんな本、ないですか?

私はあります。

というわけで、購入したシチュエーションと併せて記憶に焼き付いている名著を紹介させてください。

中村文則さんの「悪と仮面のルール」です。

あらすじを書こうとしても思い出せません。忌まわしい家系で育った少年が主人公の恋愛小説でした。

面白くなかったわけではありません。証拠は↓。2015年の「おすすめランキング」で2位に選んでいるのです。当時のレビューには「こういう小説に出逢いたかった」「リアルタイムで彼の進化を追えるのは本当に幸せ」とまで書いています。

そこまで感銘を受けた作品でも、9年間読まなければ忘れてしまう。でも記憶が薄れているからこそ、再読した時にまた楽しめる。一方でずっと頭に残っている箇所もある。

理由はわかっています。その文章に救われたから。368ページです。こんなことが書かれていました。

自分を変えることができるのなら、少しずつ変えていけばいい。変えたくないのなら、別に変えなくたっていい。社会の役に立つかどうかなんてどうでもいい。そういう自分の考えをどこかに発表しなくたっていい。

中村文則「悪と仮面のルール」講談社文庫 368P

公のために書店業界を変えたい。己を成長させたい。noteで考えや創作を発表したい。すべて本心です。1400日以上も毎日更新できているのは、読んでくれる皆さまのおかげでもありますが、いちばんは自分がやりたくてやっていることだから。

しかしその意欲を根底から支えてくれているのは、9年前に触れた「そんなことしなくたっていい」という文章なのです。

この本を買ったのは、ハローワークで存在を知った都内の小さな本屋。当時の私は8年間働いた某大型書店の閉店で職を失い、次の仕事を探していました。面接を受ける前にどんな店だろうと下見に行った際に購入したのです。

そこに就職できましたが、なんと1年半で閉店(のちに他の場所で営業再開)。でも短い期間に多くのことを学びました。猛暑日や雨の日に近隣の会社へ配達するのはきつかったけど、大型店ではできない経験をさせてもらったと考えています。

あの頃の私は職場がなかなか決まらず、焦っていました。そのせいで「自分を変えなければ」と前のめりになっていた。だからこそ、やがて働くことになる本屋で出会った一冊に「そんなことないんだよ」と諭され、肩の力が抜けた事実をずっと覚えているのでしょう。

変化が不可欠。やらなきゃいけない。わかっているがゆえに「ムリに変えなくていいんじゃね?」と言ってくれる存在に救われる。一見矛盾しているようですが、常に甘えるかどうかは別としてこういうセーフティネットを必要とするのも我々の赤裸々な本質ではないでしょうか? 

近々再読します。皆さまもぜひ。

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