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「偉くならずに世界を変えたい」と思わせてくれた一冊

「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えている」

1997年のアップルCM「Think Different.」の一節です。興味のある方は↓をどうぞ。

一方、元テニス選手がテレビで「軽々しく世界という言葉を口にするな!」と叫ぶのを何度か目にしました。

たぶんどちらも正解です。

高い志を抱き、世界を変えるまで続けるほどの覚悟を持って挑まないと何も変えられない。しかし大きな目標ばかりを見上げ、目の前の地味で小さな課題を見下す人が何かを成し遂げるとも思えない。

斬新なフェアを開催し、積極的にメディアに露出し、自分でも本を書く。華やかな活躍をしている書店員がいます。素晴らしい。しかしもし彼ら彼女らがそういった仕事だけに意識を傾け、いまお店に来てくれているお客さんへの対応を軽く考えていたらどうでしょう?

様々な書店で15年近く働いてきました。いまだに非正規雇用です。この立場を変える気はない。末端でお客さんと接する仕事をしながら店全体に目を向け、昼は汗をかいて夜は本を読み、関係者から話を聞き、業界の改革案を練る。それができるのはキレイごとの実現可能性を諦めず、なおかつキレイとは程遠い実態を嘗め尽くしている現場の人間だけと考えているから。

「正しいことをしたければ偉くなれ」

「踊る大捜査線」でいかりや長介さんが演じた和久刑事のセリフです。しかし彼はこうも言っています。

「疲れるほど働くな。次がある」

結局はバランスです。業界のトップを奪うぐらいの野心を滾らせて働く。でも心身を壊したら元も子もないから、しっかりと手綱を握ってペース配分する。誰かになろうとするのではなく己の道を突き進む。

偉くならずに正しいことをする生き方を、自分のリズムをキープしつつ「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」を実現する術をこれからも模索していきたい。

そんな決意を抱かせてくれた一冊を紹介させてください。

村上春樹訳の絵本です。出版は1939年11月。

人は同じ過ちを繰り返す。悲惨なループを素朴な絵で淡々と描いています。

この本を買い、読了したところで戦争はなくなりません。そんな簡単に世界を変えられるはずもない。

しかし「なぜ第二次大戦は始まった?」「どうして止められなかったのだろう?」と過去の歴史を学んだらどうか。薬害エイズに関する本を読めば、某感染症におけるアレの効果を無条件に信じていいのかと疑問を抱きます。この国の難民に対する政策の実態を綴ったノンフィクションに触れれば「こんなことをやってきたのか」と言葉を失う。

目覚めただけでは変わらない。けど目覚めなきゃ始まらない。

書店員が仕事を通じてダイレクトに世界を変えるのは難しい。でも目覚めるきっかけになる一冊を提供することはできる。自分で購入し、読み、紹介することも。

本を読み、売り、文章を書くのは己のため。と同時にそれだけでもない。

急がず焦らず。いつか必ずと信じて今日も青臭いnoteをアップし、混雑が予想される職場へ向かいます。

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