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「読書家レスラー」と「7年前の確信」

「みんなが本を読めば争いごともなくなると思います」

↑は新日本プロレスの社長・棚橋弘至選手のコメント。書店で働く本好きににとって励みになる一言です。ありがとうございます。

彼はかなりの読書家です。確信したエピソードをひとつ紹介させてください。

2017年の夏に開催されたG1クライマックス。棚橋選手はバッドラック・ファレ選手にリングアウトで勝ち「枯れた技術の水平思考」というコメントを出しました。

この言葉は、かつて任天堂で「ゲーム&ウオッチ」や「ゲームボーイ」などを開発した横井軍平さんの哲学です。2009年に出版された↓で知りました。

棚橋選手がこちらの本を読んだかどうかはわかりません。あるいはネット記事やビジネス誌でフレーズに触れたのかもしれない。でも私の知る読書家の多くがアンテナをあちこちへ伸ばし、目にする活字情報からヒントを得ようとしているのも事実です。そして自家薬籠中のものとするまで考え、咀嚼する。

自戒を込めて書かせていただきますが、たくさん読んでいる人が必ずしも読書家とは限らない。読了した量は少なくても学んだ何かを血肉へ落とし込み、己の武器に換えて活用しているのなら、その人は間違いなく読書家です。

ただ情報の雨に濡れて終わりでは、ショーペンハウエルも言っていたように読書は他人の頭で考えてもらう手段でしかない。本を読んで誰かの到達した「答え」を知って満足するのではなく、ならば自分はどうするかという「問い」を立て、人生のなかで答えを生み出していく。

棚橋選手は、半ば時代遅れと化したプロレスの古い技術に着目し、それらを現代プロレスへ落とし込むことで難敵から勝利を挙げました。読書家のメンタリティを持っていなければできないことです。

いま新日本のカード編成に関して思うことが色々あります。棚橋社長が本をしっかり読み、考える時間を取れますように。

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