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貴方が教えてくれた「強さ」

感情を言語化できません。

最も影響を受けた小説家のひとりです。そもそも私が「ハードボイルド書店員」なんて異名をおこがましくも掲げているのは、この方を目標と定めているから。

いちいちカッコ良かった。書いている作品や登場するキャラクターはもちろん、エッセイから窺い知れる著者の生き方も。

ジャズピアニストからの転身、40歳を過ぎての作家デビュー、2作目での直木賞受賞、にもかかわらず商業主義に抗うかのような寡作っぷり。群れない一匹狼の媚びない職人気質に痺れました。35年のキャリアで出したのは長編5冊、短編集1冊、そしてエッセイ1冊(文庫化に際して2分冊になった)だけですから。

アニメ「シティーハンター」の槇村のセリフで「魂は超薄切りにして売れ」というのがあります。私の座右の銘のひとつですが、まさにそれを体現する書き手だった気がします。

プロレスにおけるストロングスタイルや音楽におけるロックがそうであるように、ハードボイルドも小説のジャンル名に留まりません。常識に縛られず、信じた道を突き進む魂の強さを指すと考えています。原さんの生き様と小説が教えてくれました。だからこそ酒を飲まずタバコも吸わず、別段タフでもない私があえて「ハードボイルド」と名乗っているのです。

世間で紹介されることが多い彼の著作は、やはりデビュー作「そして夜は甦る」と直木賞受賞作である「私が殺した少女」でしょう。いずれも比類なき傑作です。特に前者はタイトルの意味を察したときの衝撃が忘れ難い。

しかし、もし私が1冊だけ選ばせていただけるのであれば↓を挙げます。

唯一の短編集です。私立探偵・沢崎の見せる回りくどい優しさと誠実さに惹かれました。彼は相手が子どもだろうと大人だろうと、政治家だろうと若い女性だろうと決して態度を変えません。時には辛辣な言葉を口にするけど、それらにもちゃんと筋が通っている。

こういう芯の強さをずっと持っていたい。世渡りの難しさと生活の厳しさを身を以て学んだうえで、それらを言い訳に使わぬ者でありたい。初読時に抱いた決意はいまも変わりません。

原さん、素晴らしい作品をありがとうございました。ずっとずっと読み続けます。貴方の本から教わったことは生涯忘れません。

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