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「それでもやっぱりオススメ」な一冊

絵本が売れています。

ほとんどのお客様はラッピング希望。そうじゃない場合も、お子さんのために購入されているのが大半でしょう。

ありがたいことです。本を受け取る嬉しそうな顔を見たら、諸々の疲れや落胆を一瞬忘れます。

ただ、同時にこんなことも考えます。「大人の皆さま、ご自身が読まれるための絵本もご一緒にいかがですか?」

ふとした時にパラパラ捲ってひと休み。読書にはそんな活用法もあります。活字を追う気力が沸いてこない状況でも、絵本ならスーッと染み渡ってくる。まるでたまごスープかお粥のように。

ではどんな絵本がいいか?

何を選ぶかは自由です。「あまり説教臭いのはなあ」という心情も理解できます。大人は「何が正しいか、本当はどう生きるべきか」なんて頭では十分過ぎるほどわかっていますから。現実はそういうものじゃない、前向きに妥協していく歩み寄りが必要なんだとなるのは当然です。

しかしそれをわかったうえで、あえて「もう一度だけ、そういう絵本に触れてみませんか?」とオススメしたい。老若男女誰でも簡単に読める一冊。だからこそ、時には重厚な専門書や文学以上に響く。そうは思いませんか?

前置きが長くなりました。今回紹介するのは↓です。

刊行は2014年。主人公は当時ウルグアイの大統領だったムヒカさん。彼が2012年にリオデジャネイロでおこなわれた国際会議で話したスピーチです。

難しいことや新しいことは書かれていません。「まあそうだよね」という内容ばかり。しかし改めて読むとやっぱり刺さります。たとえば↓とか。

「わたしたちは、できるだけ安くつくって、できるだけ高く売るために、どの国のどこの人々を利用したらいいだろうかと、世界をながめるようになりました」
「目の前にある危機は地球環境の危機ではなく、わたしたちの生き方の危機です」

私はこのくだりから、真っ先に↓を連想しました。

誰でも安い値段で楽しめるコーヒー。しかしその裏で何が起きているか。生産者の生活と環境への配慮を考えた場合、私たち消費者はどういう行動を取るべきか? オーガニック及びフェアトレード認証の必要性と問題点、そしてすべてに優しい「トータル・クオリティ」について学べる一冊です。

もちろん「いますぐライフスタイルを変えなければ」という話ではありません。かくいう私も安価なコーヒーにお世話になっています。でもこういう本を読んでいれば、日常の行動が徐々に変わってきます。その積み重ねが、やがて世界そのものをいい方向へ導いていくかもしれない。

そして少なくとも私にとっては、これらすべての最初のきっかけが「世界でいちばん~」という、わずか30ページ足らずの子ども向けの絵本だったのです。

「忙しくてそれどころじゃない」「己のことだけで精一杯」とてもよくわかります。なので、いまはとりあえず隙間時間に絵本をゆるりと眺めませんか? そして落ち着いた時に「世界からコーヒーが~」みたいな本を読み、思考を巡らせ、自分なりの行動に移してみませんか?

慌ただしい現実。不条理な日々。心のゆとりと未来への希望をなくさぬためにも、大人もお子さんもぜひ絵本をどうぞ。

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