見出し画像

【本とわたし】 暮らしと台所と、人生と。

 深夜0時をまわった。本を閉じ、そろそろ寝ようとベッドに入る。冷房の効いた涼しい寝室。子どもの小さないびきが聞こえる。さっきまで読んだ本の影響なのか、なかなか眠れない。天井の常夜灯を見つめる。今こうして生きていること呼吸していること自体、奇跡なんだよなぁとぼんやりと思う。    

「それでも食べて生きてゆく」(著者:大平一枝)

を読んで泣きそうになった。胸が苦しくなった。自分は今恵まれていることに感謝した。みんな、みんな、色んなこと抱えて生きているんだよ、と当たり前をことを深夜ベッドのなかで思う。SNSで切り取られた日常の一枚を見ても、それはその人のほんの一部であって。ほんとうは、ものすごく苦しくて辛いのかもしれない。どれくらい、今しんどいんだろうかと時々思ったりする。そうこうしているうち、やっと眠くなってきて電気を消した。


 結局浅い眠りだった。もっと寝たいはずなのに、朝5時半に目が覚める。カーテンの隙間から光が差し込んでる。身体はわりと元気だったので、ランニング行くことにした。家族を起こさないように静かに外にでた。肌に当たる風が心地よい。今日は涼しい。空を見上げる。小さなかたまり状の雲が、同じぐらいの高さに並んで見えた。夏の朝、太陽の光を浴びる。生きていることの喜びを全身で感じた。

 帰宅してから、洗濯と掃除と、鏡や窓ふき、雑巾かけをした。ふだんから些細な汚れや埃をちょこちょこ掃除している。でも、頑張りすぎない。私にとっての暮らしの心地よさはどこにあるのか、30代前半に身体を壊し仕事をやめたときの2年間、時間をかけて自分らしい暮らし方に向き合っていた。それは「断捨離」「収納」「台所」「食」「生きる」・・・暮らしの根っこからの見直しだった。今のマンションに内覧に伺ったときも、私が毎日掃除しても負担にならない広さだったことも、わたしにとって一つの決め手になった。

 家も呼吸しているし、よい空間は日々手入れすることで保たれ、愛着が生まれていくと私は思っている。それは、間違いなくそこに住まう人の人生にも影響を与えていく。夫にも息子にも、家が快適で心地よいものであればいいなと、ひそかに思っている。

 どんなに忙しくとも、鏡は気づいた時に拭いている。玄関に砂が少しでもたまると掃き掃除と雑巾かけをしている。私は、窓と網戸、ベランダ掃除が好きで、気になったとき進んでやっている。それは家族のためでもあるけど、自分のためでもある。鏡や窓が汚れていると、心も荒んでいく気がして。洗面台や玄関の鏡はちょっと屈んで、子どもの目線でも確認している。私から見たらきれいでも、子どもの目線から見たら水垢や曇っているってことって結構あるから。



 台所はたしかにその人(人生)を映し出すのだろうと思う。じつは昔から人の台所を覗くのは、本棚を見るのと同じくらい好きで。でも、いきなりずけずけと台所見せて〜とはなかなか言いにくいもの。だから、本やSNSで、日常の暮らしの一部のそっと覗かせてもらっている。ミニマリストさんのシンプルな台所も好きだけど、モノに溢れているのに使い勝手が良さそうな台所はより目を引く。使い手にしか分からない、台所道具や器たちがきちんと並んでいる姿がなんともが美しい。昔は、誰かの暮らしにいちいち憧れていたけれど、今はほとんど憧れなくなった。自分の暮らしと台所に、十分満足している。だからこそ、人の台所を純粋に眺めて楽しめるようになった。自分にとっての心地よさを分かっていることは最高。あとは、淡々と暮らしていくだけだなと最近思っている。

 

約8年前、築20年以上になるマンションを購入した。
前に住われていたご夫婦の台所をそのまま引き継いだ。
仕事が終わったらここで毎日の食事を作り、
食べ終えたら洗い物をして、ついでにシンク・コンロ掃除もやってしまう。

 
 この半年、いろんな人が亡くなった。昔の職場の同僚、親友の友達、数回しかお会いしなかったけどいつもある会で一緒だった人。生きている限り「死」に向かっていることを、本当の意味で理解できるようになったのはここ2,3年のこと。誰かの死と対峙するとき、突きつけられるのは「今、ここに生きている、わたし」さて、私は、今日何を作って食べるの? 誰と食べるの?、と問いかける。生きることと食べることは、深いところで繋がっている。調味料や摂る油も選んでいるため、外食の機会も少なくなった。和食中心の食生活が一番長続きする。日常のささやかな食卓が私にとって一番の幸せ。ご飯と味噌汁、お漬物と卵焼き。それさえあれば十分と思えるようになった。

 「一汁一菜でよいという提案」(著者:土井善晴)

この本に救われた。平日は仕事をしているため、おかずの品数増やしたり、凝った料理は作れない。いえ、作らないと決めている。素材を生かしたシンプルな味付けか、手間のかからないおかずをくるくる回す。冷蔵庫にはつねに、数日分の鰹節でとった出汁があるので、何も作る気がないとき、時間ないときは、ご飯と具沢山のお味噌汁をつくって食卓に並べる。家族は満足してくれている。

前に夫から「君が(妻が)機嫌よくいること、負担のないようご飯作ってくれることが一番嬉しい(一番おいしい)しんどい日は外食でも買った惣菜でもぼくはいい。妻が笑顔でいることが、もっともこの家のなかで大事なことだから。それがどういうことか、ちゃんとわかってる?」と言われた。

あぁ、そうだったと、ハッとさせられた瞬間だった。夫の愛に深く感謝した。それ以来、今の自分がどれを選択したら機嫌よくいられるのか意識して選んでいる。「しんどい」「今日は疲れている」「作りたくない」「イライラする」なら、さっさと作るのをやめて、買って食べたほうが家庭の食卓は明るいのだ。これからも、頑張りすぎない。


今日も食べて生きてゆく。
寝不足&早起きで、もう眠たい。
明日また、元気で笑顔でいるために。
おやすみなさい。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!


https://twitter.com/bookdam


この記事が参加している募集

#家事の工夫

3,882件

#わたしの本棚

18,332件