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  • 彼氏との話

    彼氏とのやりとりやエピソードについて触れている記事をまとめました。

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なんでもない日にホールケーキを食べて孤独に打ち勝つ話

万有引力とはひき合う孤独の力である ―———————————谷川俊太郎『二十億光年の孤独』より 谷川俊太郎氏の有名な詩の一節である。 研究室あるいはバイト先と家との往復、さらに言えば時勢的なもので飲み会に行かず、人との交流が必要最低限になった6月某日、わたしは、夜の静けさの中で「孤独だ…」と思った。 孤独である。それはもう宇宙規模レベルの孤独だ。 ひとり暮らしの家は、静まり返り、ときおり冷蔵庫が唸り声をあげる。 せめて人の声を…と思ってテレビをつける。観ているわけでもない

    • しゃべりましょう

      四月から先生になった。 「先生」と言っても去年の採用試験には落ちてしまったので、今年は常勤講師という形での雇用だけれども、とにかく先生になった。 先生の一日は目まぐるしい。 まず朝が早い。 部活動の朝練やあいさつ運動があればなおさら早い。 日中は授業があり、またその準備などで忙しい。 放課後は各行事や集会の打ち合わせとか、部活動指導、教材研究で忙しい。 忙しいのだけれども、ゆったりと忙しい。 急いでやらなきゃいけない、切羽詰まっているというよりは休む暇がないほど、常に

      • 贅沢は良き事哉

        贅沢は敵だ!という標語がでかでかと掲げられていた時代から、ゆうに70年は過ぎた。 バブルが来て、それから弾けて_____、「戦後最大の不況」と言われた年に、わたしは生まれた。 といっても、右も左もママもパパも分からない愛らしき赤子だったので、戦後最大の不況のことなど一切覚えてないのだけれど、とにかくわたしはそういった時代に生まれた。 生まれてもうすぐ25年になる。 早めに寝た方が健康に良いとか、働くのは大変だとか、なんでも正直に言うのはやめた方がいいとか、そういったことが

        • 逆チョコをもらおうの巻

          思いめぐらすバレンタインデー2月頭、世の中の女子は好きな人にどういったチョコレートを贈るか迷う時期である。 わたしも例に漏れず、「世の中の女子」よろしく彼氏に渡すプレゼントについて考えていた。 しかし、貰っても嬉しくないものをサプライズであげるくらいなら、貰って嬉しいものをあらかじめ聞いたうえで渡そうと思い、ソファーに横たわる彼氏に尋ねた。 「もうすぐバレンタインだけどお菓子は何がいい?」 彼氏はあっけらかんとこう答えた。 「甘いものはそこまで好んでいないから何も要ら

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          自分的グッとくる歌詞

          歌を聴くときに、メロディーを重視するひともいれば、歌詞を重視するひともいるだろうし、あるいは両方重視するひともいると思う。 わたしは、たぶん両方だ。 というわけで、自分が今年聴いた曲で好きな歌詞を紹介していこうと思う。 年の瀬に書くnoteがこれでいいのかという気がするが、良いのだ! ①【Droshky!/[Alexandros]】 1曲目は2014年にリリースされた[Alexandros]の楽曲『Droshky!』だ。 好きな歌詞はこちら。 この歌の歌詞はすべて

          自分的グッとくる歌詞

          スマホを捨てよ、旅に出よ【24歳のポケットモンスターSV】

          ポケットモンスターシリーズの最新作『ポケットモンスターバイオレット』を買った。 決して、ポケモンのガチ勢ではないけれど、オープンワールドのポケモンがどんなものか気になって、サンムーン以来のポケモンシリーズの購入だ。 年齢から察してもらえると思うけれど、ポケモンシリーズは第三世代の『ルビー』『サファイア』『エメラルド』を熱狂的にプレイしていた。 ジムリーダーやマグマ団を撃破したり、アブソルにマスターボールを使ってしまったり、そのせいでレックウザを殺害してしまったり、グラー

          スマホを捨てよ、旅に出よ【24歳のポケットモンスターSV】

          というわけで、才能と夢

          シュート!ゴール! スタジアムが歓声に包まれた。 13年後_____、25歳の僕はサッカー選手となり、サッカーのイングランドリーグ、チェルシーというチームでサッカーをしている。 この一節を、わたしは日々培っている音読力で恭しく読みあげた。 隣で高校の頃のアルバムをめくっていた彼氏は、物悲しい微笑をその顔にたたえながら、「25歳の俺は𝑭𝒖𝒌𝒖𝒐𝒌𝒂で会社員をしています〜」と、12歳の頃の自分に告げていた。 夢だとか、才能だとかを信じなくなったのはいつからなんだろう。 なり

          というわけで、才能と夢

          福山雅治を見たというだけの報告

          少し前になるが、ソファーの上で横になり、Twitterを見ていると、『本日17:30、博多駅に柴咲コウと福山雅治が登場!』というなんとも衝撃的な一文を見つけた。 数多くの情報を縦スクロールで流し見していたわたしの目に、突如として飛び込んできたその一文は、怠惰の擬人化としてソファーに寝そべっていたわたしの上体を起こすにあまりある衝撃だった。 『本日17:30、博多駅に柴咲コウと福山雅治が登場!』 マジか。 ちょうどその頃は、映画『ガリレオ』が上映を開始する少し前という時

          福山雅治を見たというだけの報告

          運動を以て運動を制す

          部活をばりばりしていた頃、長距離を走ることはなによりも得意だった。 持久力の全盛期にはシャトルランを119回という大記録を樹立したことがあり、スタミナはあるという自負だけはあった。それしか無かった。 しかし、高校を卒業してから大学1年生の頃に運動を少ししたくらいで、それ以降はまったく運動をしていなかった。 筋トレすらしていなかった。 電車に乗り遅れそうだから走る。その程度だった。 この状態が何年も続いていることに危機感を覚えた我々(わたしと彼氏)は、近所にあるスポーツ用品

          運動を以て運動を制す

          贈りたいものがあります

          ネット社会に身を置いて、もうだいぶ経つ。 まだ、さほどSNSが普及していない小学生の頃は「ネットの人は怖いよ」と両親に言われたような気もするし、授業でインターネットを扱う際は「ネットの情報は嘘なので本を読みましょう」とか「インターネットを通じて人と知り合うのは危険です」など散々に言われていたような気がする。 今や、母親は趣味であるフィルム写真をInstagramにアップし、いいねをたくさん貰うようになったし、そこで知り合った趣味仲間の話をすることもある。 小学校や中学校の

          贈りたいものがあります

          わたしだけの

          いま半分学生、半分先生として社会生活を送っている。日々学びや教養に触れながら思ったことを今日は書き連ねたい。 教育の在り方を示す『学習指導要領』というものがある。学習指導要領は社会の変化に対応するため10年に1度改訂される。 今年の2022年には高校の学習指導要領が改訂され、わたしが高校に通っていたころと教科書が大きく変わった。 どの出版社の教科書を採用しているかによって、扱う論説文や小説・詩には多少の差異があるだろうが、少なくともわたしが触れてきた題材でいうと、山崎正和

          わたしだけの

          老犬あるいは飼い主

          わたしは歩くのが遅い。 急に何を言い出すんだと、困惑している読者の顔が目に浮かんでくる。 しかし、わたしは歩くのが遅い。 と言っても、ただテレテレと歩いているのではなく、景色や街の様子や、店の看板を見ながら歩くのが好きでキョロキョロとしながら歩くから、必然的に歩くのが遅くなる。ただそれだけの事である。 もちろん、わたしだって遅刻気味だの数量限定のランチを食べに行くなどの有事の際は荷物を抱えながらダッシュをすることだってある。 しかし、そうでない場合はたいてい亀の歩みよ

          老犬あるいは飼い主

          どうにかこうにかして彼氏にジブリ作品を観てもらった話

          みなさん、こんばんは。和三盆と申します。 普段はネット上で短歌を投稿したり、公募に応募したりしています。 また更新頻度はかなり低いのですが、このようにエッセイをnoteに投稿することもあります。 さて、わたしが約2年前に投稿したこの記事を覚えていらっしゃるかたはいるでしょうか? 『どうにかこうにか彼氏にジブリ作品を観て欲しいという話』という記事です。内容はタイトルのとおりです。 この記事は岸田奈美さんが主催していらっしゃった「キナリ杯」という催しに向け投稿したもので、運良

          どうにかこうにかして彼氏にジブリ作品を観てもらった話

          架空でも母

          わたしの母は内科に勤めている。 場所柄、お年寄りの人の来院が多い内科である。 従業員の家族はそこでワクチンを打つことができたり、健康診断を受けたりできるため何度か行ったことがあるが、待合室の80%ほどは腰の曲がったお爺お婆であった。 待合室で待っていると、耳の遠いお年寄りのためにゆっくりと分かりやすいスピードで、大きなはっきりとした声で案内をする母の姿を見ることができる。 母があれほどゆっくりと、しかもはっきりと話すことなんて家族間ではありえない。家では「あれ取って」な

          架空でも母

          おけちゃんのチョコ

          小学、中学、高校にアライ君という同級生がいた。 アライ君は小学5年生のころに転校してきて、同じ時期に転校してきた他2人と同じく、サッカーをしていたから、なんとなくクラスでは『ちびまる子ちゃん』の同級生である大野くんと杉山くんみたいな立ち位置にいた(ような気がする)。 アライ君は京都から引っ越して来たらしく、授業で先生に指名されたら、「は↓い↑」と言い、発表をすれば「〜で↓す↑」という、こちらでは聞き馴染みのないアクセントで返事をしていた。 彼のお母さんは気さくな人で、何か

          おけちゃんのチョコ

          俺とお前とときどきR-指定と

          彼氏が好きだ。 昨日も好きだったし、今日も好きだし、明日も好きだ(多分)。 つまり、「彼氏が好き」というのは不変の真理なので、時制の一致を受けず、現在形で表す。 彼氏が好きだ。 とはいえ、なにがあるか分からない男女の仲だ。 鼻をほじりながら、「あア、この人たちは結婚するんだろうな〜。御祝儀用意しておかなきゃ」と思っていた人たちが喧嘩の末別れたり、一方が浮気して別れたりする。 (浮気された側の知り合いしかいないので、わたしの友人に「する側」の人間がいないことに、まず安堵しつつ

          俺とお前とときどきR-指定と