#砂漠
月の砂漠のかぐや姫 第32話
そして、羽が選択した言葉は、正確に竹姫の心の中心を貫き通したのでした。
「竹姫」。この言葉を羽が口にしたことが、これまでにあったでしょうか。いいえ、羽はこれまでにこの言葉を口にしたことは、一度もありませんでした。
それは竹姫を人々の中から排除する言葉、彼女を追い詰める言葉であることを、羽は幼少の頃から認識していたのですから。
そのため、二人がどんなに喧嘩をした時でも、羽が竹姫を呼ぶ言葉は、
月の砂漠のかぐや姫 第31話
二人だけの秘密。羽はそう言いました。二人だけの秘密。何かが、頭の奥の方、意識の底の方で、明滅しています。
でも、それが何なのか、今の竹姫には判りませんでした。その明滅しているものが何かを確かめるため、どうやってその場所まで辿り着けば良いのかが思いつかないのでした。
実は、竹姫は覚えていなかったのです。
逃げた駱駝を探しに、羽と共にバダインジャラン砂漠に行ったそうなのですが、その出来事は自分
月の砂漠のかぐや姫 第30話
「むう、おおげさだなぁ。二人で夜に駱駝を探しに行ったときに夜風に当たったせいで、風邪を引いただけじゃない。高熱で気分が悪くなって動けなくなっていたところを、大伴殿に助けられたんでしょ。それは・・・・・・、わたしだって、寝込んじゃった羽のことが、すごく心配だったけどさ」
少し恥ずかしそうに下を向きながら、羽の身体を心配していたことを告げる竹姫でした。
でも、その言葉の後ろ半分は、羽の耳には届い
月の砂漠のかぐや姫 第29話
「あ、ああ」
予想もしなかったほどの羽の勢いに少し気圧されながら、有隣は答えました。
「竹姫は、次の日にはもう目を覚まされていたよ。どこにも怪我はされていないし、羽が心配することはないよ」
そうです、大伴が羽と共にバダインジャラン砂漠から連れ帰ってきた際には、竹姫はぐったりとして意識がない状態だったのですが、その次の朝には、無事に目を覚ましていたのでした。
そのため、最初は羽のことを酷