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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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2020年12月の記事一覧

月の砂漠のかぐや姫 第150話

月の砂漠のかぐや姫 第150話

 不意に苑の肩に手が置かれました。びくんっと苑の体が震えました。
 そして、それと同時に、冒頓の落ち着いた声が聞こえてきました。それは、苑が空風に指示を送りながらずっと、いつ来るかいつ来るかと、恐れ続けていたものでした。
「小苑、今はここまでだ。そろそろ行くぜ」
 その声は、苑に対して羽磋たちを探すのをやめるようにと告げるものでした。

 交易隊の男たちも羽磋たちがどうなったかが気にかかっていまし

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月の砂漠のかぐや姫 第149話

月の砂漠のかぐや姫 第149話

「明日の朝、明るくなったら空風を飛ばして、羽磋たちを見つけてくれや。頼むぜ。そうしたら、今度はあいつらを引き上げる手段を考えないといけねぇから、それはそれで大変だがな。ハハハ。まぁ、そいつは、明るくなってからの話だ。明日、お前が空風を上手く操れないと、それこそ羽磋たちが困っちまう。もう戻って、寝てしまえよ、小苑」
 背中を軽く叩きながら、冒頓は苑に戻って体を休めるように言いました。彼の言う通り、こ

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月の砂漠のかぐや姫 第148話

月の砂漠のかぐや姫 第148話

 その背中が他人から声をかけられるのを強く拒んでいるように思われたので、自分の足が赤土を踏みしめて生じるザクザクという音で彼を煩わせることがないようにと、苑はできるだけゆっくりとその男に近づいていきました。
 それでも、彼の横に並ぶはるか前であるにもかかわらず、その男は苑の気配に気づいたようで、下を向いたままで言葉をよこしました。それは、激しい怒りを含んだものでもなく、冷たい哀しみを含んだものでも

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月の砂漠のかぐや姫 第147話

月の砂漠のかぐや姫 第147話

 冒頓の指示を伝えに、小隊長たちはそれぞれの持ち場に帰っていきました。
 広場の各所では、野営の準備が始まりました。もちろん状況が状況ですから、交易路を進む時の簡素な野営よりもさらに簡単な最低限のものでしたが。
 男たちは自分の管理する駱駝や馬に餌と水をやりながら、自分たちは乳酒を飲み干し肉をかじって腹を満たしました。誰が夜番につくかの伝達が行きわたると、早番に当たらなかった者は、我先に自分の皮袋

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月の砂漠のかぐや姫 第146話

月の砂漠のかぐや姫 第146話

 冒頓はまず、交易隊とけが人をこの広場で待機させることに決めました。
 冒頓が率いるこの隊は、国から国へと長い旅をする交易隊と彼らを護るための戦いをすることが仕事の護衛隊から成っていました。根拠地を離れたところで長く活動する必要があることから、彼らの中にはけがの治療の心得がある者がいましたから、敵から襲われる恐れのない場所を確保できれば、けがをした者の手当をしっかりとすることはできそうでした。
 

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月の砂漠のかぐや姫 第145話

月の砂漠のかぐや姫 第145話

 冷たいようではありますが、今は母を待つ少女の奇岩とサバクオオカミの奇岩に襲われて、その被害の状況を確かめているところです。一刻も早く現状を把握し、必要な指示を出さなければ、万が一再び敵に襲われた時に対処のしようがありません。それに、羽磋たちのことを含めて今後どうするかの明確な方針を示すことは、敵の襲撃を受けて不安な気持ちを募らせている隊員を落ち着かせるためにも、最も大切なことなのでした。
 もち

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月の砂漠のかぐや姫 第144話

月の砂漠のかぐや姫 第144話

「兎歯、だと。おめぇは確か・・・・・・」
「は、はい。交易隊の兎歯です。隊の先頭の方で駱駝を引いております」
 王柔と似たような細身で、兎の歯のような出っ歯と切れ長な目が特徴的なこの男は、皆から兎歯(トシ)と呼ばれていました。兎歯の役割は、交易隊の前の方で駱駝を引くことでした。ただ、彼はこの場に集まって冒頓に報告をしている小隊長格の男ではありません。その部下に当たる男です。そのような男が、怪我をし

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月の砂漠のかぐや姫 第143話

月の砂漠のかぐや姫 第143話

 冒頓たちが集まっていたのは広場の真ん中に当たるところでした。ここであれば、落石にあった岩壁からは離れていますし、反対側の崖下に落ちる心配も要りません。また、踏独が立てた見張りのお陰で、岩陰からの不意打ちの警戒もできています。もう夜のとばりも落ちてきていることですし、冒頓はこの場所を野営の場所と決めて、その準備をするのと同時に、隊の被害の状況の確認や怪我をした者への治療などを行うつもりでした。
 

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