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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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2020年8月の記事一覧

月の砂漠のかぐや姫 第120話

月の砂漠のかぐや姫 第120話

 まるで生きたサバクオオカミそのもののように躍動している奇岩たちですが、それらには感情というものはないのでしょうか。自分たちに向って放たれた矢に対して、わずかに顔を向けたものの、全く慌てた様子は見せません。それどころか、それを避けようという素振りさえも、見せないのです。
 バシィッ!
 ある矢は、奇岩の前足を弾き飛ばしました。恐ろしい勢いで突進していたそのサバクオオカミは体勢を崩すと、ドゥッっと大

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月の砂漠のかぐや姫 第119話

月の砂漠のかぐや姫 第119話

 ドドッドドドッ! ドドドッドドドッ!!

「うわ、なんだ。あれは・・・・・・」
「信じられん。こんなことがあるのか・・・・・・」
 もう護衛隊の面々にも、自分たちに向ってきているソレが何かが、見て取れるようになっていました。
 出発の前にあらかじめ、ヤルダンに何か不思議なことが起きているとは聞かされていたものの、実際に目に飛び込んできた異形のソレは、彼らの健康な心を激しく動揺させました。
 砂煙

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月の砂漠のかぐや姫 第118話

月の砂漠のかぐや姫 第118話

 苑のこの報告に動揺したのは、王柔でした。彼は大変気の弱い性格をしていて、自分自身が見て判断したことよりも、他人が見て判断したことの方が、正しいものに思えてしまうのでした。
「あ、あれ? 確かに奇岩が転がっているのが、見えたはずなんだけどな。ここはまだヤルダンの手前で、奇岩なんかがあるはずがないし、きっと何かおかしなことになっていると思ったんだけどな・・・・・・」
 実際のところ、苑が報告したのは

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月の砂漠のかぐや姫 第117話

月の砂漠のかぐや姫 第117話

「ヤルダンが、ヤルダンが見えるのです、この先にっ。まだ、あるはずがないのに、です。何かがおかしいのです。気を付けてくださいっ。おかしいのです」
「ヤルダンが、か。よし、聞いたか、小苑。王柔が指す方だ、頼むぜっ」
 冒頓は、興奮して混乱気味の王柔の言葉を、疑いもせずに受け入れました。そして、自分の傍らにいる苑に対して、飲み物を取ってくれとでもいうような軽い物言いで指示を送ると、一転して、大声を張り上

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月の砂漠のかぐや姫 第116話

月の砂漠のかぐや姫 第116話

「まだ半日かかるんですか。遠いですね・・・・・・」
 羽磋は片手を筒のように握ると、それを目の前にくっつけました。これは遊牧隊の先輩から教わった方法で、このようにすると視界こそ狭くなりますが、遠くにいるものをはっきりと見て取ることができるのです。
 羽磋は、手で作った筒を顔にくっつけたまま身体全体を動かして、自分たちが進んでいく方向をぐるりと見回しました。これは、少しでも早く進みたいという、羽磋の

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月の砂漠のかぐや姫 第115話

月の砂漠のかぐや姫 第115話

「ありがとうございます、お気を使っていただいて。でも、大丈夫です。もともと、僕は遊牧隊の一員として季節に合わせてゴビを走り回っていましたから、夜番の経験もあるんです。それに、土光村に来るまでの間、小野殿の交易隊に入れていただき、そこでも夜番を経験していますから、交易隊の夜番も初めてではないんです」
「ああ、そうなんですか。遊牧隊の方だったんですね、羽磋殿は」
「ええ、そうなんです。とは言っても、た

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月の砂漠のかぐや姫 第114話

月の砂漠のかぐや姫 第114話

「おう、だいぶん陽が傾いてきたな。どこかいい場所をみつけて野営しないとな。夜番は二交代制にして、交易隊と護衛隊から一人ずつ出すことにするか。小苑、お前、夜番の前半、いけるか?」
「もちろんっす。で、交易隊からは誰が出るんすか」
「そりゃ、おめぇ、羽磋に決まってんだろうが」
「羽磋殿? あっ、ありがとうございますっ、冒頓殿!」
 本来であれば護衛隊と行動を共にしている羽磋は、交易隊員として計算すべき

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月の砂漠のかぐや姫 第113話

月の砂漠のかぐや姫 第113話

「羽磋殿のような方にそんな風に言われると、なんだか恥ずかしくなってしまいますね。僕はもう、本当に駄目駄目で・・・・・・」
「なにをおっしゃっているんですか、王柔殿はそのように案内人の赤い布を巻いて、立派にヤルダンの案内人を務めていらっしゃますし、それに」
 羽磋は、のんびりと鞍の上で揺られている理亜の方を見やって、続けました。
「理亜を保護されたことだって、とても立派だったと思います。僕にも守りた

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月の砂漠のかぐや姫 第112話

月の砂漠のかぐや姫 第112話

 その日、土光村から吐露村へ向けて、小規模な交易隊が出発しました。
 交易隊の先頭には、ナツメヤシのように細く背の高い男が、白い頭布の上に赤い布を巻き付けて歩いていました。その男は、右手で駱駝を引きながら歩いており、駱駝の背には、旅装束に身を包んだ小柄な人物が乗っていました。直射日光から身を護るためか、その人物は目深に頭巾を被っておりました。
 赤い布を頭に巻き付けた男の傍らには、小柄でいかにも身

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