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行きつけのパン屋【調布弁天湯@御嶽山駅】(1/2)

 僕には3年以上通い続けているパン屋がある。少なくとも週に1回、多い時は週に4〜5回の頻度で利用することもあり、現在では顔見知りのスタッフができ、軽く雑談を交わす仲になった。もともとそのパン屋を利用したきっかけは自宅から徒歩30秒という距離にあるためだったのだけれど、スタッフとの関係性が構築された今となってはコミュニケーションを楽しむこともお店に足を運ぶ理由の一つになっている。なお、そのパン屋はパン自体の品質も高く、クチコミサイトでは全国ランキングの上位に入っていて、週末には行列が絶えない人気店だ。
 一方で、同じようにクチコミサイトの点数が高く、何度も雑誌に取り上げられるほど美味しいラーメン屋さんも近所にあるのだけれど、こちらには3回ほど通って以来めっきり行かなくなってしまった。そのきっかけは、店長と思われる男性のアルバイトスタッフへの威圧的な態度だった。食事中、カウンター越しに大きな怒鳴り声が聞こえたので見上げると、どうやら店長がアルバイトスタッフへの指導に手こずり、苛立っているようだったのだ。僕はその様子を見て気分が悪くなってしまい、ラーメンは完食したものの味や香り、食感などの記憶はほとんど残らなかった。美味しかったはずなのに、である。

 言わずもがな、この2つの店舗の決定的な違いはスタッフの印象だ。僕はこの経験から、飲食店が提供しているのは料理ではなく、料理を介した「体験」なのだと実感したのだった。

 ただ、この考え方は飲食店だけではなく、世の中のあらゆるサービス業に当てはまるのではないかとも思う。もちろん温浴施設も例外ではない。
 温浴施設が提供している価値は、表面上はお風呂やサウナといった設備であると思われるかもしれないけれど、実際にはそれらを介した体験こそが満足度を左右している。設備や機能に力を入れている温浴施設はたくさんあるものの、個人的にはそれらの充実度と心の満足度に相関関係は見られないのだ。だからこそ、僕は「あの施設のサウナはとても良いよ」と紹介されたとしても、それだけではなかなか興味をそそられないのである。

 温浴施設が提供している価値を細分化していくと、その要素には「浴場の設備」「清潔度」「接客力」「客層」「混雑度」「飲食やリラクゼーションなど付随サービスの充実度」などが挙げられ、そこに「自宅からのアクセス」「金額」「体調」「気分」などの個人的要素が複雑に掛け合わさることで決まるものが満足度なのではないだろうか。加算ではなく乗算ということだ。

 実際、設備やセッティング、そしてサービス内容に定評があり全国的に有名な温浴施設を利用した際に、あまりの治安の悪さに全く満足することができず、早々に切り上げたことがあった。逆に、全体的に年季が入っていて手入れが行き届いていないような温浴施設であっても、スタッフの印象次第ではそれらが ”いい味” に感じられ、結果的に高い満足度を得られる場合もあった。ただ設備投資にお金をかければ顧客満足度を高められるのかというと、必ずしもそうではないのが温浴施設の興味深いところであり、醍醐味の一つであるように思う。

 僕は品川区内の銭湯の待合所で、風呂上がりにソファに座ってテレビを眺めながら、そんなことを考えていた。

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ーー後編に続く

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます