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「ありがとう」と言われて【カプセルインミナミ六本木@六本木駅】(1/2)

 僕は自分が納得できないことに対するモチベーションや興味関心が著しく低い。たとえば仕事で「これをやってください」とだけ言われても思考が停止してしまうのだ。なぜそれをやらなければならないのか、どうして僕がやる必要があるのか、そういった理由や背景までセットで理解できなければなかなか行動に移すことができないのである。
 もちろん、そこまで自分自身で想像できる場合は特に抵抗もなく指示通りに仕事をすることができるのだけれど、基本的には目的が理解できていない状態で動き出すことはできない。だから、たぶん上司からすると扱いにくい部下だと思われることも多かったはずだ。

 そういった経験があったからこそ、僕が指示を出す側の立場になった時にはなるべく相手のモチベーションを下げず、かつ認識の齟齬が発生しないコミュニケーションを取るように心がけることができているのだけれど、社会に出てすぐの頃は、本当にこの性格に何度も苦しめられた。
 営業部に配属された僕の最初の上司は「なにも考えずに、ただ俺の言ったようにやるだけで良いから」と僕に指示を出して、営業として結果を出してきた自分のコピーを作ろうとしてきたのだけれど、僕はその全てに納得感を持って取り組むことができなかったのである。
 もちろん、上司には「僕はAのほうが良いと思うのですが、どうしてBをやらなければならないのでしょうか」といったように説明を求めたことが何度もあったけれど、それでも僕が納得できるまで説明をしてくれることは無かった。

 次第に、仕事で成果を出すことができない自分にも、手段ばかりを提示してきて目的の共有までしようとしない上司にも、そして電話越しのお客さんにもストレスを抱えるようになっていった僕は「そもそもどうしてここまでメンタルに負担を与えてまで働かなければならないのか」と悩むようになっていったのだった。

 振り返れば、一般企業への就職は、他に特にやりたいことがなかったために消去法的に選んだだけであったように思う。周囲の流れに身を任せたに過ぎず、その会社で働きたかったわけでも、そもそも仕事をしたかったわけでもない。ましてや、ただでさえ人見知りの僕が営業部に配属なんてされたものだから、日々の生活に喜びなんて見出せるはずがなかったのだ。そのようなモチベーションで仕事をしていたので、当然のことながら悩みは膨らむばかりだった。
 その時に僕が助けを求めたのが読書だった。当時読んだ本の一部は過去に別のnoteでも取り上げたことがあるけれど、人生論や人生哲学に関する本をとにかく読み漁り、そこから多くのヒントを得ることができたのだった。
 その後は結果的に紆余曲折を経て仕事で成果を出せるようになり、周りから評価されて給料も上がることになった。しかし、心は満たされなかったのである。僕の仕事観においては、会社から評価されることや給料が上がることは重要ではなかったのだ。

ーー仕事をする意味ってなんなのだろうか……。

 それから数年が経ち、僕は一度だけ転職をしたのだけれど、次の会社ではさらに納得できない仕事を任されることが増えてしまった。そして、会社員として生きること自体に疲れてしまった僕は結局フリーランスになることを決めたのだった。仕事の量も内容も、付き合う相手も全て自分で決める生活に切り替えたわけである。
 するとどうなったのかというと、僕の心はみるみるうちに満たされていったのだった。それは収入が増えたからでも、自由な時間が増えたからでもない。仕事をする意味や、仕事から得られる喜びをようやく見つけることができたからだった。

 それこそが、好きな相手から感謝されることである。このように書くと綺麗事のように思われるかもしれないけれど、僕は自分が身近な人のために行動して「ありがとう」「助かった」などと言われることに自分の存在価値を見出せるようになり、そしてそれが欲求の充足へと繋がったのだった。
 仕事を通して得られるお金は、その感謝の気持ちが可視化されたものであり、信頼の証であり、ただの ”結果” に過ぎない。仕事で本当に得られるものは、もっと他のところにあったのだ。
 もちろん、現代社会においてはお金がなければ生活をすることはできないので、お金を稼ぐことは大切である。ただ、なんのためにお金が必要なのかというところまで考えている人は少ない。「車を買いたいからお金が欲しい」という人がいたとしたら、その人が本当に欲しいのはお金ではなく車なのだ。そして、車を手に入れるための手段の一つに「お金」があるだけであって、たとえば車を買い与えてくれる人が現れれば、その人にとってお金は必要ではなかったことになるのではないだろうか。もっとも、このようなことを経験すると、お金ではなく人脈に価値を感じるようになるのかもしれないけれど。
 そう考えると、お金に固執するのではなく、その前後にあるものに目を向けたほうが健全であるように思う。仕事はお金を稼ぐためにあると思い込んでいると、本来得たかったものに気づくことができないまま受動的に働き続ける可能性があるということだ。それでは人生を楽しむことが難しくなる。

 9月7日(火)に港区某所でクライアントとの打ち合わせを終えた僕は、そこでお客さんから「本当にありがとうございます」と言われたことで、あらためて仕事における自分の価値観と向き合えたのだった。そして気分が良くなった僕は、その足で近くにあるサウナに寄ることにした。

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ーー後編に続く

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます