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ナマケモノとマグロ【サウナ&カプセルミナミ 下北沢店】(1/2)

 僕の得意科目は「生物」だった。その実力は、学校の定期テストでは学年でトップを争うほどで、模試では当時の偏差値で70程度(全国で上位2%以内)はあったと思う。その代わりに数学や社会などの成績は致命的だったのだけれど、とにかく生物だけは勉強が楽しかった。
 ただ、なぜ僕が生物に夢中になることができたのか、その理由は大人になってから徐々にわかってくることになる。

 僕は社会に出て会社で働くようになると、さまざまな悩みにぶつかるようになった。特に僕を悩ませたのが「どうして自分の思い通りにならないのだろう」ということだ。自分が正しいと思ったことが相手にとっては正しくなかったり、自分なりの努力が会社での評価に反映されなかったり、そのような経験を通して「なぜこれほどストレスをかかえてまで生きなければならないのだろう」と考えるようになった。

 読書が習慣になったのはその頃からである。自分が抱えている悩みを解消するためのヒントを求めて書店に行き、そこで偶然出会った本の中から直感的に選んで読むようになった。その結果、本棚にはその当時の自分を写し出すような本が何冊も並ぶようになった。

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 運がいいことに、少しずつ仕事でも成果を出せるようになり、自分の考えがいかに浅はかだったのかを後から知ることができたのだけれど、今考えると、この自分の性格は高校生の頃にある程度は出来上がっていたのかもしれない。おそらく、僕は自分が生きる意味を知りたかったのだ。そのために、当時は自覚していなかったものの、まずは自分自身の身体について知るきっかけが得られるであろう生物学や心理学に興味を持つようになっていたのかもしれない。
 遺伝子やホルモン、進化や生殖について知れば知るほど、僕は自分自身のことが理解できるようになった気がした。「なんで人間はこんな行動をするのだろう」「なんで人間の体にはこんな特徴があるのだろう」、そういった「人間の不思議」をひとつひとつ紐解く作業によって、僕は自分の存在価値を見出そうとしていたのかもしれない。

 その影響か、僕は人間と他の生物との違いにも興味を持つようになった。他の生物について知ることで、「ヒト」の理解をより深めることができると思ったからだろう。
 すると、生物は環境に応じて独自の進化を遂げてきたことがわかってきた。その中で特に僕の印象に残ったのが「ナマケモノ」と「マグロ」の生態である。

 ナマケモノの動きがなぜゆっくりなのかというと、それ以上に速く動くと温度調節ができなくなり、命の危険があるためだ。決して怠けているわけではなく、生き残るために進化を遂げた結果なのだ。

新陳代謝が非常に遅いので、「計画的に動かなくてはなりません」。 彼らは体温を調節することさえできず、それが消化にも影響する。 食べたものを消化するのに平均で16日間かかるのだ。 気温が高くなると消化のスピードはやや上がるので、その間は普段よりも多くの食物を摂取できる。

ーー引用:ナマケモノやカメはなぜのんびり生きられる?(ナショナルジオグラフィック) https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/a/102000043/

 一方でマグロはというと、ナマケモノとは逆に常に泳ぎ続けている生き物なのだけれど、これにも理由がある。マグロは泳ぎ続けることによって生命を維持しているのだ。

マグロは口を開けて泳ぎ、エラを通過する海水に溶けた酸素を常に取り入れながら呼吸しています。 この呼吸はラムジュート換水法と呼ばれ、泳ぎを止めると酸欠状態で窒息死してしまいます。

ーー引用:なぜ、マグロは疲れないのか?(アリナミン) https://alinamin.jp/tired/topics/04.html 

 動くことによって命を失うリスクが高まる生物もいれば、動き続けなければ生きることができない生物もいる。もちろん多少の個体差はあるにせよ、このように生物というのは自分に適したペースで生きる必要があるのだ。

 そう考えると、人間にも人間に合ったペースは存在するはずで、今思い返せば僕には生活の時間が管理される「会社員」という働き方は合っていなかった可能性が高い。仕事自体は嫌いではないのだけれど、働き方が合わなかったのである。
 だからこそ独立を決意して、自分が働きたい時に働くようにしているのだが、その生活スタイルは結果的に僕のストレスを大幅に減らすこととなり、逆説的に仕事のパフォーマンスも上がるようになった。

 そんな今日、7月21日(水)も、一般的に平日ではあるけれど、仕事の気分にならなかった僕は、渋谷区にある行きつけの美容室でサウナ仲間でもあるスタイリストさんに髪をカットしてもらうことにした。日差しは眩しく、外を少し歩いただけで汗をかいてしまうほど、季節は紛れもなく夏だ。
 美容室にいる間、いつものように担当のスタイリストさんとサウナ談義に花が咲いたのだけれど、このあとに特に予定を入れていなかった僕は「今日もサウナに行かれるんですか?」と聞かれて、自然と「そうですね」と答えてしまっていた。

 美容室を出たのは13時ごろ。そこからアクセスが良く、せっかくなのであれば今までに伺ったことがないサウナを利用しようと考えて検索をすると、以前から気になっていた店舗の名前が目に留まった。

「ここしかないな」

 僕は電車に乗り込み、下北沢駅に向かった。

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ーー後編に続く

(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます