誰と一緒にいるか【ウェルビー名駅@愛知県】(3/3)
全身を脱力させ、天井を見上げる。呼吸は落ち着いてきたものの、まだ少しだけ心拍数は高い。
平日の昼間の時間帯だからか浴場には数人程度しか見当たらず、とても静かで、体内を血が巡っている感覚がわかる。そのままの体勢で大きく数回の深呼吸をすると、次第に僕は多幸感に包まれていったのだった。
その後、いったん浴場を出て館内着を身に纏い、雑誌や漫画が揃っているラウンジに移動してから、しばしの休憩を挟んで僕は再び浴場へと戻った。
浴場は先ほどと変わらず静かだった。僕は軽くシャワーを浴び、今度はミストサウナの中へと足を踏み入れた。
「貸切じゃないか」
明るく広々とした室内には複数の椅子が並んでいるだけでなく、壁際のベンチで寝転がることができるように枕まで用意されていた。塩も大量に盛られているので、塩サウナとして利用することも可能だ。
僕は躊躇なくベンチに横たわり、そっと目を閉じた。室内には蒸気が充満しているものの、温度はそこまで高くなく、サウナというよりもリラックススペースに近いかもしれない。とても落ち着く場所だった。
「では、行きますか」
ここからが本番である。僕はウェルビー名駅の最後の砦、「森のサウナ」と名付けられた部屋に移動をすることにした。ゆっくりと扉を開ける。
ーーこれは驚いた。ビルの中とは思えないな。
その名の通り、まるで森の中にひっそりと佇む小屋の中にいるような感覚に陥った。他の2つのサウナ室と比べると非常に狭い造りになっていたが、それだけ熱効率は良さそうである。さらによく見るとサウナストーブの手前にはラドルと水が入ったバケツが用意されており、セルフロウリュが可能となっていた。
先客は最上段の3段目に1名。僕は少し離れたベンチに腰をかけ、静かに蒸され始めた。すると、程なくしてそのお客さんはサウナ室を出ていき、幸いなことに貸し切り状態となってしまった。僕は反射的に最上段へと移動し、そしてストーブに水を回しかけた。
「ジャー……」
そう、この音だ。高温のストーンによって瞬時に蒸発する水の音。なぜ人はサウナ室の中で鳴り響くこの音に癒されるのだろう。とても不思議な気分だ。
だが、そんなことを考えられる余裕はすぐになくなった。たちまち室内を熱蒸気が包み込み、全身からは大量の汗が流れ出しただけでなく、僕の心拍数は急上昇し、地震でも発生したのかと錯覚してしまうほど体が揺れたのである。この揺れは心臓の鼓動によるものだった。
温度計を見ると70℃弱を指しているのだが、この時の体感温度は100℃を超えており、まともに息もできなくなっていた。
ーーこれ以上は無理だ。
僕はサウナ室を飛び出し、頭から掛け湯をかぶって水風呂に肩まで沈み込んだ。
ーーさっきの比じゃないな。とんでもない。
1分ほど冷水で身体を鎮めた僕は立ち上がり、棚から取ったガウンを羽織って再びインフィニティチェアに横たわった。浴場には騒がしいお客さんなどおらず、終始静寂な時間が流れていた。僕もそっと目を閉じ、静かに呼吸を続けた。
(written by ナオト:@bocci_naoto)
①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます