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ペイフォワード【みどり湯@新潟駅】(2/2)

 予定より早く仕事を終えた僕は、腹ごしらえのために新潟駅周辺を散策することにした。

 もともと行こうと思っていた寿司屋があったのだけれど、その途中でたまたま定休日であることが発覚したため、急遽近くにあったおにぎり専門店に立ち寄って空腹を満たすことにしたのだが、これが正解だった。やはり新潟は米がうまい。時刻は16時をまわったところだ。

「そろそろ行こうか」

 帰りの新幹線まではまだ時間に余裕がある。このような時に僕が考えることはたった一つだ。

「なかなかいい味出してますね」

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 そう、今回訪れたのは「みどり湯」だ。こちらは新潟駅から徒歩圏内にある銭湯で、利便性が良かったのである。

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 さっそくドアを開けて中に入ると、ここから先は右側が男湯、左側が女湯に分かれていた。下駄箱に靴を預けて奥に進むと、もう一つのドアの先は脱衣所に直接繋がっていた。どうやら昔ながらの番台式のようで、そこで入浴料金の440円を支払い準備を済ませた僕は、さっそく浴場へと足を踏み入れた。

「この雰囲気、好きだな」

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(※転載:新潟市公衆浴場協同組合)

 浴場の中心には円形の浴槽があり、窓際にはジェットバスが確認できた。僕はさっそく身を清めてから、その特徴的な円形のお風呂に浸かってみた。

「あっつ!」

 温度を確認すると44℃だ。僕のあとに入ろうとした若いお客さんは、あまりの熱さに入浴を諦めて40℃に設定されているもう一つのお風呂に移動してしまった。そのお湯に1分ほど浸かると、僕の体はサウナが必要なくなるほど芯からぽかぽかに温まったのだった。

ーーでも、ここからが本番だ。

 僕は浴槽から立ち上がり、いよいよサウナ室へと向かって扉を開けた。

「おお! 強烈だな……!」

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※写真は女湯側
(※転載:新潟市公衆浴場協同組合)

 温度計は52℃を指しているが、体感では100℃を軽く超えている。その灼けるほどの熱さの秘密は大量の高温スチームだ。しきじの薬草サウナやプレジデントの薬草スチームサウナ、月光泉のスチームサウナを思い出すほどの力強い熱蒸気によって、まともに呼吸すらできない。「湿度100%以上」という注意書きの説明にも納得である。
 室内は5人前後が座れるほどの広さで、壁に沿うようにL字のベンチが1段のみ設けられている。そこでは常連のお客さん同士の日常会話が繰り広げられ、みどり湯がコミュニティとしての機能を果たしていることが伝わってくる。
 その会話に耳を傾けながらじっと蒸されていると、僕の身体はあっという間に限界を迎えてしまった。

ーーそろそろ出るか……。

 僕は立ち上がり、サウナ室を出てシャワーで冷水を浴びてから、浴場の隅に置いた椅子に座って壁にもたれかかった。そして目を瞑り、大きく深呼吸をする。

「気持ちよすぎる……」

 みどり湯には水風呂が無い。だが、サウナでとことん追い込み、そして冷水シャワーを頭から被れば十分に快感を得られるのである。僕の心はこの1セットで満たされてしまい、いつもより長めに休憩をしてから、みどり湯を後にした。

ーー満足度の高い銭湯だったな。

 もう新潟に思い残すことはない。そう思いながら歩を進めて新潟駅に到着したのだが、ここで時間を確認しようとした僕はあることに気付いた。

「時計がない!」

 いつもつけている腕時計を失くしてしまったのである。先ほどまでは付けていたはずだった。可能性として考えられるのは、みどり湯の脱衣所だ。
 みどり湯を出てから15分ほどが経っていたが、僕は急いで戻り、番台の女性に声をかけて脱衣所を探させてもらうことにした。心当たりがあるのは先ほど僕が使ったロッカーの周辺である。その腕時計はプレゼントでいただいたもので、とても大切にしていたからこそ僕は不安と焦りを感じていた。

「あった!!」

 僕の腕時計は、誰にも盗られることなくロッカーの下で他の荷物に紛れていた。

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ーーこれも日頃の行いが良かったからなのだろうか。いや、そう思うことにしよう。この幸運に感謝だ。

 僕は東京に向かう新幹線の中で、またどこかで誰かに恩を施そうと誓った。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます