呪術廻戦 11巻【ネタバレあり読書感想文】魂の場所 異なる世界 歪む死
★★★★☆
Amazonでレビューしたものです
一か八かの0.2秒の領域展開で、一般人を救い改造人間を潰し呪霊を圧倒した五条。しかしそれすらも彼を消耗させるための策だった。そこへ自らの手で殺した親友が現れて声をかける。戸惑う一瞬、蘇る青春の記憶に最強は絡め取られてしまいました。
”夏油傑”に「誰だよオマエ」と問いかける五条悟。
夏油傑だよとサラリと答える彼に、なおも問いかけます。
普段飄々とした五条の、怒りをあらわにした問いかけに、せせら笑うように脳を見せ術式を開示する、偽夏油。
彼は、自分の脳だけを移行させ、その肉体と肉体に刻まれた術式を乗っとる術式の持ち主でした。
また、並行して、帳の外では、禪院甚爾が復活します。
後の巻で、甚爾の骨の一部をオガミ婆が手に入れ、それを孫が飲みこみ、降霊術により下されたということが、作者によって明らかにされています。
ここでは肉体の情報のみおろされ、魂の情報は下されなかったはずが、肉体が特別だったため、甚爾の魂まで戻り、暴走を始めることになりました。
正気を戻した真人に偽夏油が語ります。
真人は、人が人を恐れる気持ちから生まれた呪霊で、魂に触れることによって人の形を変える術式を持っています。
彼は肉体は魂の器と認識しているようです。
上記の偽夏油の言葉に真人が返します。
確かに興味深い返しです。
この物語では、魂が存在するものとして描かれていますが、その定義は一定しているとは言い難いです。
我々現実の世界でも、魂や霊は、共通概念として共有されており、その存在を信じるものも多くいます。
霊魂という概念がなぜ生まれたのか。
考えられるものとしては、人の生死の説明でしょうか。現代のように科学技術が発達しなかった昔において人の死の定義は困難だったと推測します。
肉体の見た目はほぼ変わらないのに死んでいる状態となった場合、曰く、脈が止まった呼吸が止まったと話すよりは、魂が抜けたと説明したほうが、受け入れやすかったのでしょう。また、魂が他の世界へ向かったからいつかまた会える、魂が上からあるいはその辺で自分を見守っていてくれると思ったほうが、残された人々の生きる支えになります。
とはいえ放っておけば死体は九相をへて腐ります。
魂は肉体とイコールという夏油。
それに対して色々なパターンがあるという真人。
彼のいうことを信じるなら、魂のあり方も、世界も、そして魂が抜けることによって起こるはずの死も、色々なパターンがあるのかもしれません。
実際、偽夏油は死を超えて存在し続け、甚爾は死から蘇りました。
虎杖の求める正しい死はどこにあるのか。
とりあえず彼は、五条先生を助ける戦いに身を投じます。
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