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漢詩がつまらないのは、日本語で読んでいたから?【唐诗三百首:青溪 王维】を解説します!*第二集*


漢詩は国語の授業のなかでも、
とくにつまらなかった分野ではないでしょうか。
おそらくそれは当たり前の感情です。

漢詩は外国語なので、まず「読めるように」
にする必要があります。
これまでの国語の教材で、
文字が読めなかったことはなかったはずです。

そのストレスが「つまらない」「難しい」
につながっているのだと思います。


おもに唐代の中国では、漢詩の美しさに魅了され
たくさんの詩人が作品を残しました。
漢詩が中国では「唐诗」と呼ばれている話は
こちらの冒頭でまとめているので、
よければご覧ください。


文章の中では、日本で浸透している
「漢詩」という言葉で統一します。

私が考える漢詩の魅力は「音」です。
「読む」よりも「歌う」という
表現のほうが適していると思っています。

国語の授業で、漢詩を「歌って」いましたか?
ただ「読んで」いたのではないですか?
もしかしたら漢詩の一番の魅力に気づかずに
「つまらない」感情を抱いたかもしれません。

そんな方に少しでも
漢詩の魅力が伝われば幸いです。



王维【青溪Qīng xī


読み上げ音声はこちらです。


【白文】

言入黄花川,每逐青溪水。
随山将万转,趣途无百里。
声喧乱石中,色静深松里。
漾漾泛菱荇,澄澄映葭苇。
我心素已闲,清川澹如此!
请留盘石上,垂钓将已矣!


【書き下し文】

ここ黄花川こうかせんるに
つね青谿せいけいの水を
山にしたがいてまさ万転ばんてんせむとし
趣途すうと百里無し
声はかまびす乱石らんせきうち
色は静かなり深松しんしょううち
漾漾ようようとして菱荇りょうこううか
澄澄ちょうちょうとして葭葦かいを映ず
我が心もとよりすでかんなり
清川せいせんたんたることかくの如し
請う盤石の上に留まり
釣を垂れてまさまむとす


【日本語訳】

黄花川にはいってゆくときは
いつも青谿に沿ってゆくが
途は百里もないのに
山に随って万転する
乱石に当たる水声はやかましいが
あたりは静かな松林の中
水草が流れにただよい
澄み切ってあしの葉が映る
私の心はいつものんびりしているし
川の水もこんなにしずかだ
この大石の上に座って
釣でも垂れて一生を終わりたい


【解説】

青谿の水に沿い、
深い松林の中の道を屈曲しながら行く。
この流れの清く澄んで、
ゆったりと流れているさまと、
俗世間を忘れて、身を自然にゆだねた
自分の心とが、全く一つになって、
この幽寂な境地をうたいだしている。




ここからは、ぜひ音声を聴いた後で
読んでいただけると嬉しいです。

私が「青溪」のなかで、
とくに発音が美しいと思った言葉を紹介します。

言入黄花川,每逐青溪水。Yán rù huáng huā chuān, měi zhú qīng xī shuǐ
…川が流れる水の優しい音、
そんな風景が目に浮かびます。
色静深松里Sè jìng shēn sōng lǐ
…松林の中へ入っていく、静かな風景を感じます。

また、以下のように同じ音を重ねる表現も
リズムがあり美しく、作者の工夫を感じます。

漾漾Yàng yàng
…水が揺れ動くようす

澄澄 Chéng chéng
…水が澄み切っているようす


この詩は、
・川の水がゆったり流れていること
・自身の心がさっぱりして綺麗であること

を表現しています。

文字だけでなく「音」からも、
作者である王維の気持ちが伝わったでしょうか?


また、漢詩の読み上げは
ほぼ毎日こちらで更新しています。
この記事をご覧になって漢詩に興味を持った方は
のぞいてみてください。

参考書籍…
唐诗三百首诵读本(插图版) (Chinese Edition)
中华书局经典教育研究中心

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