『龍族Ⅲ 黒月の刻』中・第九章:神国絵巻
壁画や塑像というのは日本でも特段珍しいものでは無いが――ここまで壮大なものは他に例が無い。壁だけでも高さはおよそ4メートル、その上から建物の屋根まで直接繋がっており、金塗りの頂部まで合わせれば延べ10メートルを超えている。巨大な壁画には紅錆色と靛藍色の二色が大胆な作画で色彩され、半人半蛇の巨人たちが抱き合い、長い尾を絡み合わせている。男型の巨人は威風獰猛、女型の巨人は端庄慈柔。日本神話に現れる諸々の妖魔が巨人たちを囲み、無数の腕を背から生やした巨人たちは、それぞれに妖魔と戦