見出し画像

(I62) IT革命が実現したアイルランドの驚異的発展-1 (2020.2.26) by 野口悠紀雄 より抜粋加筆しました。

⑴ 「病人」が「虎」に変身した

アイルランドは、
1980年代の半ばから、それまで誰もが予想しなかった急激な経済成長を始めました。

アイルランドは、
ヨーロッパで最も豊かな国の一つになったのです。


この驚嘆すべき変化を形容するのに、以下の表現が使われます。
「アイルランドがCeltic Tiger(ケルトの虎)に変身した」

「病人」が「虎」に変身したわけです。


アイルランドが急成長した要因としてよく指摘されるのは以下です。
「法人税率の引き下げ」

これによって海外から外国企業を呼び寄せ、成長を実現したというのです。


⑵ 法人税率を下げたからといって、必ずしも外国企業が集まるわけではない

アイルランドで効率的な事業活動ができなければ、
意味がないからです。


事実、アイルランド政府は第2次大戦以降継続して工業振興策をとっていたのですが、成功しませんでした。


⑶ ネットの普及で、アイルランドがヨーロッパのITの中心に

外国企業がアイルランドに来るようになったのは、
アイルランドに欧州本部を置き、そこからヨーロッパ大陸の顧客サービスを行なうようになったからです。

こうなったのは、
90年代になってネットの利用が進展し、通信コストが大幅に低下したからです。


最初の形態は、コールセンターです。
米国のIT関連企業は、コールセンターをアイルランドに置き、ここから欧州大陸への顧客のサービス(技術サポートや営業)を行ないました。

これが、アイルランドの成長の始まりでした。

アイルランドの経済発展に伴って賃金が上昇するにつれて、コールセンター業務は、より安い労働力を求めてインドに移動していきました。


アイルランドでの活動は
より付加価値の高いものに移行しました。

具体的には、データ処理、データ入力等のバックオフィス的作業です。
欧米の多くの企業が、バックアップ業務をアイルランドに移しました。

さらに、会計処理や法律実務などの高度な業務が行なわれるようになりました。


そして、
「e-HUB」と呼ばれる高度な業務も始まりました。

これは、
世界中に広がる工場や支店の注文・在庫確認・発送指示などの対顧客業務のセンターを、アイルランドに集中しようというものです。

こうして、アイルランドは、
地球規模でITビジネスのハブ(中枢)になったのです。


この結果、海外からの直接投資が大量に流入しました。

アイルランドは、
あらゆる業種や事業活動において、多くの企業の欧州事業中核地となりました。


OECD(経済協力開発機構)が2019年11月に公表したデータによると、
就業者1人当たりで見た2018年の労働生産性は以下です。

アイルランド:17万8879ドル(日本の約2.2倍)
米国:13万2127ドル(日本の約1.6倍)
日本:8万1258ドル

私は上海在住11年目。 2020年2月、在中国日系企業を対象とする、 「⺟国語で現場情報を引き出す、社内コミュニケーションツール」 を無料リリースしました。 コラボしたい方、ぜひお待ちしております。 bigluck777r7@yahoo.co.jp