(D88) 既存の商品を時代に沿った改善を行い、ユーザーを満足させるプロダクトを創造する「超越式」-2 (2019.11.6) by 黄未来 より抜粋加筆しました。
⑷ イノベーションのジレンマを超えた「WeChat」
QQが全土で使われるようになった後に、急激にスマホが普及します。
スマホ特化のメッセンジャーを開発することを迫られた際、ポニー・マーがライバルと見定めたのが、自社の「QQ」でした。
当時、すでにQQのモバイル版はあり、非常に多くのユーザーもついていました。
しかし、QQはあくまでもPC用に開発されたメッセンジャーであり、スマホに最適化されていません。
無理やりスマホ向けにアレンジをすると、従来のQQとは大きくコンセプトが変わってしまいます。
しかし、中国のスマホ普及率はどんどん伸びており、
いずれインターネットの主力市場はPCからスマホに移るに違いありません。
そう判断したテンセントは、
主力事業のQQを脇に置いて、スマホに最適化した新たなメッセンジャー「WeChat」の開発に重心を移したのです。
つまり、誕生して間もないWeChatにとっては、
中国1位のシェアを誇る自社商品が一番のライバルだったことになります。
こうした自社商品の“カニバリゼーション”を超えて新たなサービスを生み出すのは容易いことではありません。
しかし、テンセントのスマホ特化のメッセンジャー「WeChat」は、
QQを超えて10億人ものユーザーを獲得する、中国で最も広く使われるサービスにまで成長を遂げました。
この事例は、テンセントが得意とするイノベーションを見事に以下を象徴していると思います。
「ゼロからまったく新しいものを作るのではなく、
既存の商品に対して時代に沿った改善をおこない、ユーザーを満足させるプロダクトを創造すること」
⑸ テンセントには「メッセンジャー」と「ゲーム」に加え、もう1つの大きな軸がある
「ペイメント」。
元々ペイメント領域はAlipayを擁するアリババが先行しており、テンセントはかなり出遅れた後発組でした。
現在は、シェアをAlipayと分け合うほどに追いついています。
1つ、Alipayには無いテンセント独特の面白い機能を紹介します。
それが「红包:ラッキーマネー」です。
たとえば、わたしが友人に1元を送金したとします。
ただ、その友人は開封するまで、わたしが何元送金したのかわかりません。
袋に入ったお年玉に近いイメージでしょうか。
中国ではお年玉や、結婚式などおめでたい席で、
「红包」という赤い袋に入れたお金を渡す文化が根付いています。
こうした文化背景もあり、
「ラッキーマネー」は大ヒットしたのです。
これらの独自の機能開発によって、
WeChatPayはシェアを拡大していきました。
WeChatは、使いやすさや、分かりやすさにこだわりを持って、スーパーアプリになりました。
昨今、ITの最大の武器は「使いやすさ」です。
私は上海在住11年目。 2020年2月、在中国日系企業を対象とする、 「⺟国語で現場情報を引き出す、社内コミュニケーションツール」 を無料リリースしました。 コラボしたい方、ぜひお待ちしております。 bigluck777r7@yahoo.co.jp