いすず

物書きです。本の感想を置いたりします。Radiotalkというアプリで音声配信していま…

いすず

物書きです。本の感想を置いたりします。Radiotalkというアプリで音声配信しています(「本棚の散歩道」https://radiotalk.jp/program/57202)。個人サイト(https://windbell.sakura.ne.jp/)で創作もしてます。

記事一覧

【読書感想文】『ノートルダム・ド・パリ』ユゴー

『ノートルダム・ド・パリ』を読了しました。 立ち上がりの遅さを乗り越えさえすれば、あとはノンストップの一大スペクタクルロマン小説でした。 舞台は折々に鐘の鳴り響…

いすず
7か月前
17

【読書感想文】『ドゥームズデイ・ブック』コニー・ウィリス

先日読んだ、『ドゥームズデイ・ブック』(コニー・ウィリス/早川書房)がものすごく良かったので感想を書きます。 今のところ、今年度の上半期ベスト。 下半期もこれを超…

いすず
1年前
6

【読書感想文】『続あしながおじさん』ジーン・ウェブスター

『続あしながおじさん』を読みました。 幼いころは無印の『あしながおじさん』が愛読書だったのに、続編の存在自体を長じて初めて知ったのです。一生の不覚! 読んだのは…

いすず
1年前
6

【読書感想文】『あしながおじさん』ジーン・ウェブスター(角川つばさ文庫版)

角川つばさ文庫版の『あしながおじさん』を読みました。原書既読済。 子ども向けの抄訳って、今までそんなに前向きなイメージを持っていなかったんですが、これが、とって…

いすず
1年前
18

【読書感想文】『島暮らしの記録』トーベ・ヤンソン

トーベ・ヤンソンの大人向けエッセイ『島暮らしの記録』を読みました。 ムーミンシリーズの作者さんですね。 好きな海外文学感想ブログさんで紹介されていたので気になり…

いすず
1年前
16

【読書感想文】『はだしのダリエ』ザハリア・スタンク

胃がなんだかぐるぐるときもちわるいです。 やだ…繊細だからストレスで…っ?!(昨晩夜更かしして本を読んでいたせいですよね?)(はい…) というわけで、古本市的な…

いすず
1年前
3

【読書感想文】『居酒屋』ゾラ

『居酒屋』(ゾラ)を読みました。 古い海外文学全集の、 古賀 照一 訳です。 前半までの感想 しんどい。 非常に有名なフランス古典文学であり、ゆえに結末が悲劇になる…

いすず
1年前
13

【読書感想文】『ロリータ』ウラジミール・ナボコフ

『ロリータ』(ナボコフ/新潮文庫刊)を読みました。 今やすっかりお馴染みの「ロリコン(ロリータ・コンプレックス)」なる単語を生み出した伝説の古典です。 なんかも…

いすず
1年前
6
【読書感想文】『ノートルダム・ド・パリ』ユゴー

【読書感想文】『ノートルダム・ド・パリ』ユゴー

『ノートルダム・ド・パリ』を読了しました。
立ち上がりの遅さを乗り越えさえすれば、あとはノンストップの一大スペクタクルロマン小説でした。

舞台は折々に鐘の鳴り響く、中世魔女狩り時代のパリ。
美しく無垢なジプシーの踊り子、
邪恋に狂う聖職者、
醜い躰に愛情を隠して涙する鐘番、
婚約者がいるのに浮気三昧のイケメン騎兵、
娘をジプシーに奪われた老女。
ノートルダム大聖堂を中心として描かれる、思いのすれ

もっとみる
【読書感想文】『ドゥームズデイ・ブック』コニー・ウィリス

【読書感想文】『ドゥームズデイ・ブック』コニー・ウィリス

先日読んだ、『ドゥームズデイ・ブック』(コニー・ウィリス/早川書房)がものすごく良かったので感想を書きます。
今のところ、今年度の上半期ベスト。
下半期もこれを超える読書体験をできそうか?と考えると怪しいです。
そのくらい良かったです!

ネタバレにならない程度にご紹介しますね。 

物語は、キヴリンの訪れた中世パートと、予期せぬパンデミックに巻き込まれながらも生徒を連れ戻すため奔走するダンワージ

もっとみる
【読書感想文】『続あしながおじさん』ジーン・ウェブスター

【読書感想文】『続あしながおじさん』ジーン・ウェブスター

『続あしながおじさん』を読みました。
幼いころは無印の『あしながおじさん』が愛読書だったのに、続編の存在自体を長じて初めて知ったのです。一生の不覚!

読んだのはこの版。曽祖父の本棚で見つけました。

現在入手可能なのは、下の新訳です。

図書館の骨とう品みたいな翻訳(Daddy-Long-Legsに「あしながおじさん」という訳語を初めて充てた訳者による翻訳本…)で今回初めて読んだんですが、いやあ

もっとみる
【読書感想文】『あしながおじさん』ジーン・ウェブスター(角川つばさ文庫版)

【読書感想文】『あしながおじさん』ジーン・ウェブスター(角川つばさ文庫版)

角川つばさ文庫版の『あしながおじさん』を読みました。原書既読済。

子ども向けの抄訳って、今までそんなに前向きなイメージを持っていなかったんですが、これが、とってもよかったんですよ!!
表紙/挿絵のイラストもかわいいですし、かといって原作者の直筆挿絵もおろそかにせず、ちゃんと収録してあるのも好感度高いです。

子どものころに初めて読んだ『あしながおじさん』の表紙がこちらです。

秋田県に法事で行っ

もっとみる

【読書感想文】『島暮らしの記録』トーベ・ヤンソン

トーベ・ヤンソンの大人向けエッセイ『島暮らしの記録』を読みました。

ムーミンシリーズの作者さんですね。
好きな海外文学感想ブログさんで紹介されていたので気になりまして…。
内容は、フィンランドのある小さな孤島に小屋を建て、二十年以上暮らした彼女が、小屋を建てる時のエピソードや、暮らしていく中であった出来事などを諸々つづったエッセイです。

ですが読んでいて、ちょっと引っかかったことがありまして。

もっとみる
【読書感想文】『はだしのダリエ』ザハリア・スタンク

【読書感想文】『はだしのダリエ』ザハリア・スタンク

胃がなんだかぐるぐるときもちわるいです。
やだ…繊細だからストレスで…っ?!(昨晩夜更かしして本を読んでいたせいですよね?)(はい…)

というわけで、古本市的なところでもらってきた気がするけれど詳細な記憶もなく出自も不明な「現代東欧文学全集」<9>より、ルーマニアの国民的小説 『はだしのダリエ』 を読み終わりました。
すごく良かったです。
次々と馴染みない言語の名前が乱舞し、話はややとっちらかり

もっとみる
【読書感想文】『居酒屋』ゾラ

【読書感想文】『居酒屋』ゾラ

『居酒屋』(ゾラ)を読みました。
古い海外文学全集の、 古賀 照一 訳です。

前半までの感想
しんどい。

非常に有名なフランス古典文学であり、ゆえに結末が悲劇になることは残念ながらわかってしまっています。
精緻で手の尽くされた描写を積み重ねながら、貧しくとも平凡で善良な庶民の女性がじわじわ、じわじわと泥にのまれていくように沈んでいくさまが丹念に丹念に描かれていくの、かなりつらい。
ちょっと浮上

もっとみる
【読書感想文】『ロリータ』ウラジミール・ナボコフ

【読書感想文】『ロリータ』ウラジミール・ナボコフ

『ロリータ』(ナボコフ/新潮文庫刊)を読みました。

今やすっかりお馴染みの「ロリコン(ロリータ・コンプレックス)」なる単語を生み出した伝説の古典です。
なんかもう、とにかくすごかったです。

狂人の独白体を巧みに使い、見事に読者を煙に巻く手腕。
物語そのものが、ジャンルごと繋ぎ目もなく二転三転していくドラマチックさ。
間違ってもストレスなく読めるような小説ではありませんが、その「ストレス」こそが

もっとみる