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雨の日の拾い者 (総集編1)

やっぱり、自分の登場人物の中で、早紀江はかなり好きです。

雨の日の拾い者 (総集編1)

「こんな夜遅く薄暗がりの公園にいる方も悪いよ。早く帰りなさい。怖かったら駅まで送ってあげるから」とぼくが言うと「あ!今何時ですか?」と言う。ベースを担いているからスマホとか腕時計が見えにくいのだろう。ぼくは腕時計を見て「11時55分だけど」と言った。

「アチャア、終電を逃した!どうしよう?」と泣きそうな顔で言う。ぼくにそれを言われてもなあ。「タクシーか徒歩で帰れないの?」と聞くと「アパートが大宮なんです。最終がJRの11時52分。お金も持ってません」と涙目でぼくを見上げて言う。北千住から大宮じゃあタクシー代は1万円以上するなあ。深夜割増だとそれ以上か。面倒な子に関わったものだ。

「キミは・・・ぼくは遠藤実。見ての通りの会社員だ」
「私は、早紀江、遠藤です。偶然です。名字同じですね」
「早紀江さんね。早紀江さんはなぜこんな遅くにこんなところに居たの?見たところ高校生みたいだけど?」
「ハイ、高校3年生です。私、この近所の居酒屋でバイトしていて店が立て込んでしまって出るのが遅くなりました。それで悩んでいることの考え事をしていたらフラフラとこの公園に入ってしまって・・・すみません、この通りの有様です」とペコンとお辞儀をする。

「じゃあ、その居酒屋さんでお金を借りるとかできないの?」
「前借りもしているんで・・・そもそももうみんな帰っちゃっています。大宮のアパートも一人暮らしです。家族は静岡にいます」とすがりつくような目でぼくを見る。でかい目だなあ。長い髪の毛からエルフのような耳が出ている。まいったな。

「早紀江さん、これはお互い困ったことだよ。キミは袋小路。ぼくは早紀江さんを知らない。おまけに高校生の未成年。ぼくのマンションはこの近所だけど、まさか早紀江さんを泊めるわけにもいかないじゃないか?犯罪になるよ」
「少なくとも、私、四月生まれなので18歳です!犯罪にはなりません!」

「いや、そういう問題じゃない。ぼくは一人暮らしなんだ。それでぼくがさっきの男みたいによこしまな考えを持って、早紀江さんを襲っちゃうかもしれないんだよ?ぼくはキミの見知らぬ男性なんだよ?」
「いえ、そういうことを言われているなら、私、実さんが信用できます」
「口ではなんとでも言えるよ。ぼくがいいチャンスだ、なんて考えていたらどうするんだ?」
「構いません。自分の部屋まで歩いてビショビショになって帰るよりもマシです!可哀想な子猫でも拾ったと思って、玄関先でいいので泊めていただけませんか?お願いします!実さんなら何をされても構いません!」

「まいったなあ。どうしようか?う~ん、ああ、早紀江さん、スマホあるよね?」
「ありますが?」
「アプリで音声レコーダーある?」
「ええ」
「それスタートさせてよ。ぼくも音声レコーダーをスタートさせる。それでぼくたちの会話をお互い録音すれば証拠になって誤解されないよね?」
「あ!それいい考え!」

「仕方がない。わかった。ぼくの部屋に泊まりなよ。始発で帰るのでいいなら」
「ありがとうございます!助かりました!早紀江、うれしいです」と泣き顔になって抱きついてきた。おいおい。ぼくは彼女の体を離した。
「誰か見たら誤解されるからヤメてくれ」
「だって、この会話、録音してますよぉ?」
「それでもヤメてくれ。これ以上話をややこしくしないように」

 ぼくと早紀江は公園から5分程のぼくのマンションの方角に歩いた。女子高生と何を話していいやら。途中でコンビニがあるので「何か飲むものを買っていこうか?」と聞いたら「ハイ、のどが渇いていました」と言う。「あのさ、パパ活とかと間違われないように、ぼくを『ミノル兄ちゃん』とか呼んでくれないか?」「それ、グッドです。ミノル兄さん!」「やれやれ」

 コンビニに入る。ピンポ~ンとドアチャイムが鳴った。女性店員がいらっしゃいませ、と言う。ぼくは早速店員に聞こえよがしに「早紀江、何を飲みたい?」と聞くと彼女が「ミノル兄さん、早紀江ねえ、ジンジャエールが飲みたいの」と調子を合わせた。

 ぼくらは適当に飲み物をカゴに放り込む。「早紀江、シュークリーム食べるか?」と聞くと「ハイ、兄さん」と言って店員から見えないように舌を出した。ぼくはシュークリームとエクレアもカゴに放り込んだ。傘を2つ買った。

 レジを済ませて外へ出る。傘を渡したが早紀江は腕を広げてエレキベースを見て「兄さん、傘させません」と言う。たしかに学生カバンとベースを肩にかけていたら傘はさしにくい。「相合い傘じゃダメ?」とまた舌を出した。

 女子高生と相合い傘なんて高校時代以来7年ぶりだよ。左手に通勤カバンと買い物袋を持った。右手で傘をさすと早紀江がぼくの腕に腕を絡ませてきた。「兄と妹なんだから自然でしょ?」とぼくを見上げて舌を出す。ティーンの頃の水川あさみに似ている。

「パパ活で引っ掛けた高校生と歩いているみたいだよ」
「じゃあ、そういうことで」
「何がそういうことでなんだ?」
「だから、パパ活で引っ掛けた高校生を連れて自宅に帰る会社員」
「やれやれ」

雨の日の拾い者 (総集編1) に続く。


奴隷商人 Ⅰ

奴隷商人 Ⅱ

奴隷商人 Ⅲ

奴隷商人 Ⅳ

奴隷商人 Ⅴ

奴隷商人 Ⅵ

奴隷商人 Ⅶ

奴隷商人 Ⅷ

A piece of rum raisin - 単品集


ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編1

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編2

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編3

挿入話第7話 絵美と洋子、1983年1月15日/1983年2月12日


登場人物

宮部明彦 :理系大学物理学科の2年生、美術部
小森雅子 :理系大学化学科の3年生、美術部。京都出身、実家は和紙問屋
田中美佐子:外資系サラリーマンの妻。哲学科出身

加藤恵美 :明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、心理学科専攻
杉田真理子:明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、哲学専攻

森絵美  :文系大学心理学科の2年生
島津洋子 :新潟出身の弁護士


シリーズ「A piece of rum raisin - 第1ユニバース」

第1話 メグミの覚醒1、1978年5月4日(火)、飯田橋
第2話 メグミの覚醒2、1978年5月5日(水)
第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日
第4話 洋子の不覚醒1、1978年12月24日、25日
第5話 絵美の覚醒1、1979年2月17日(土)
第6話 洋子の覚醒2、1979年6月13日(水)
第7話 スーパー・スターフィッシュ・プライム計画
第8話 第二ユニバース
第9話 絵美の殺害1、第2ユニバース
第10話 絵美の殺害2、第2ユニバース
第11話 絵美の殺害3、第2ユニバース

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)-第4ユニバース

第一話 清美 Ⅰ、1978年2月24日(金)
第一話 清美 Ⅱ、"1978年2月24日(金)1978年2月27日(月)
第二話 メグミ Ⅰ、1978年5月4日(火)
第三話 メグミ Ⅱ、1978年10月25日(水)
第四話 メグミ Ⅲ、1978年10月27日(金)
第五話 真理子、1978年12月5日(火)
第六話 洋子 Ⅰ、1978年12月24日(土)

 ●クリスマスイブのホテル・バー
 ●女性弁護士
第七話 絵美 Ⅰ、1979年2月17日(土)
 ●森絵美の家
 ●御茶ノ水、明治大学
 ●明大の講堂
 ●山の上ホテル
第八話 絵美 Ⅱ、1979年2月21日(水)
第九話 絵美 Ⅲ、1979年2月22日(木)
第十話 絵美 Ⅳ、1979年3月19日(月)1979年3月25日(日)
第十一話 洋子 Ⅱ、1979年6月13日(水)

メグミちゃんの「ガンマ線バースト」の解説

マルチバース、記憶転移、陽電子、ガンマ線バースト


シリーズ「雨の日の美術館」


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シリーズ「アニータ少尉のオキナワ作戦」

シリーズ「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」

A piece of rum raisin - 第3ユニバース

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス-雅子編」

フランク・ロイドの随筆 Essay、バックデータ

弥呼と邪馬臺國、前史(BC19,000~BC.4C)


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