浮田慈音

20代 書いたり描いたりしてます。他の作品やご連絡はX @ukitajiyong まで…

浮田慈音

20代 書いたり描いたりしてます。他の作品やご連絡はX @ukitajiyong までお願いします。

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僕の見ている世界 序

自閉症の作家、東田直樹の『自閉症の僕が跳びはねる理由』という著書が原作のドキュメンタリー映画『僕が跳びはねる理由』は僕のバイブルです。 僕は、ADHDと自閉症(昔で言うアスペルガーだと思います)を持つ、トランス男性です。 人と違うと言われ続け、人をたくさん傷つけ、傷つけられてきました。でも、何が違うのか自分ではわかりませんでした。確かに僕は、できることよりできないことのほうがたくさん思いつきます。何でも思ったことを口に出してしまいます。集団行動はできません。 でも僕の見ている

    • お笑いを批評すること

      芸人のネタが炎上するたびに僕は辟易としてしまう。 勿論、その芸人の人権意識というか、よくわからないものに対しての認識が低いままやっちゃってんだな、みたいながっかり感もある。 それと同時に、ネタの倫理観への批判もどこか的外れなものが多いように感じることも多いのだ。 僕は二十年近くお笑いが好きではあるが、批評家として『お笑いの見方』マニュアルを提出したいなどと思っているわけではない。 ただの批評好きであることをご了承されたし。 常々疑問に思っていることがある。 文学、美術、音

      • 人間とねずみの怠惰な一日の過ごし方

        僕と一匹のねずみの一日は昼過ぎに始まる。 僕は、両親とデグーという種類のねずみと田舎の一軒家で暮らしている。 SNSで散見するデグーとはまったく違う生き物なのではないかと思うほど、うちのねずみはひとりを好む。だから僕はそのねずみをペットではなく、同居している動物だと思っている。 昼過ぎに目を覚ました僕は、顔を洗い、パリパリに乾燥した肌を潤わせた後、ねずみの部屋を掃除する。その間、ねずみは僕の横で飯を食う。誰もお前の硬い食べ物には興味がないのに、俺のだ!と言わんばかりにピーピ

        • 愚かになることなかれ

          近頃のインターネットを見ていると、うれしい情報1割、かなしい情報9割といった感じである。 そんな世の中を憂うほど僕はうぬぼれていないのでなんとなくうれしくなったりかなしくなったりしながら日々を何とか生き延びているだけだ。 僕は、人は怠惰であっても良くて、人は好きなように生きても良くて、迷惑をかけても良くて、怒っても悲しくなっても喜んでも嬉しくなっても良いと思っている。好きなように、好きなだけ生きよう。人間たるもの。これが僕の人間観である。与えられた環境で生きるもよし、嘆くも

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        僕の見ている世界 序

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          笑いと悪意

          脳が文字も音も受け付けない時、僕は決まってお笑いを見る。 ラランドのラジオ、ラーメンズのコント、男性ブランコ、ヨネダ2000…… 笑いは良い。セロトニンとアドレナリンがあふれ出るのを感じる。 笑いが好きすぎるがあまり、幼稚園の卒園アルバムに担任から「いつもお笑いの話をしている愉快な子だった」と書かれる僕だ。 笑いのメカニズムが知りたく、文献を探していると「笑い学会」という実に愉快そうな名前の学会を発見した。そこに在籍している先生方の本や論文を集め、読んでみた。 人を傷つける

          笑いと悪意

          ごめんなさいと思いながら

          今日も今日とて怠惰な一日を過ごしている。人間は怠惰であるべきで、もっと逃げて甘えるのが良いのであると思いつつも、自分にはそれができない。悲しいかな、それが人間である。 僕は一日に一度は「ごめんなさい」と思う。呟くのは雰囲気に酔いすぎている気がするのでやらない。 何に「ごめんなさい」と思うのだろうか。両親に?世間に?友人に?恋人に?どれでもない気がする。こういう気持ちを原罪と言ったりするのだろうか。そういう難しいことはよくわからない。 悠々自適とまでは言わないが、ある程度のん

          ごめんなさいと思いながら

          そんなこんなで24歳

          先日24歳になったが、相も変わらず引きこもり続けている。どうしようもなく怠惰な人間であるが、そんなことは今に始まったことではなく、加えて言えば人間には怠ける権利があるのでとやかく言われる筋合いなどない。皆、怠惰に生きよ。 さておき、このたび引きこもりの僕は友人と二人展をすることに相成りまして。 そこで私的芸術論を傲慢にもおぞましくもぶん投げるためには私的芸術論を人様にお見せできるくらいにはまとめなければならないと、いそいそ勉強している毎日である。 僕は常々、お偉い芸術様に辟

          そんなこんなで24歳

          同性愛的描写を普遍的ということについて

          先日、カンヌ映画祭記者会見において映画『怪物』の監督是枝博一監督の発言が話題になった。 この発言に対し、トランス男性でゲイの僕個人の思うことを書こうと思う。僕は専門家ではなく、活動家でもない。あくまで僕や僕の周りで起こったことや考えたことだと思って読んでいただきたい。 僕は以前、トランスジェンダーであることが起因する悩みについて友人に話したことがある。その際、友人は「それって突き詰めると皆が持つ悩みなのではないか」と言った。僕はその発言にひどく憤慨した。僕の悩みを奪うなと

          同性愛的描写を普遍的ということについて

          甘っちょろい僕から、世界へ

          尊敬している友人が以前こんなことを言っていた。 「嫌なことをされたとき、人に謝ってほしくない。許す/許されるという行為が発生した瞬間、その人間関係は対等ではなくなってしまう」 その時、僕はその意見に大いに賛同した。 ストリート育ちの友人は、自分の身は自分で守る、甘ったれたこと言ってんじゃねえと日ごろから口にしていた。仲間が傷つけられたときは徹底的に戦う人情深い奴。 僕はそうじゃない。生ぬるい守られた環境で生きてきた。だから僕は人を許す。正論は時に暴力になるということを知ら

          甘っちょろい僕から、世界へ

          悪意のない悪

          ここ最近調子が悪く、相変わらずうるさい思考を停止したい欲がある。 そんなメンタリティだから、人の言説を見て何とも言えないもやもやにぶち当たることが増えた。 人に優しく。その言葉の曖昧さが嫌いだ。優しいとはどんな行動や気持ちのことを指すのか、さっぱり分からない。そんな曖昧なものが共通認識として共有されているのかと思うと怖くなる。僕は考えた。僕の思う優しさを。人はどんな時に人に優しいと言うのかもよく観察した。 僕と恋人には共通の知人が何人かいる。その知人全員が恋人のことを「優

          悪意のない悪

          僕の見ている世界 遅刻、聴覚について

          こんにちは。ADHD・ASDの僕です。 ADHDは遅刻しがちというのはよく聞く話で、僕も例に漏れずそうです。 僕の場合、友人との約束、アルバイト、飛行機、すべてにおいて同じように遅刻します。重要度や優先順位は関係ないようです。 友人との約束にせよ、アルバイトにせよ、飛行機の搭乗にせよ、少しずつ対処法を自己流で探してなんとか大事に至ったことはないです。 しかし、遅刻しやすい人間だと自覚するまでは、なぜか時計を見て動いても遅刻する自分や叱られることが嫌で、特にアルバイトに関して

          僕の見ている世界 遅刻、聴覚について

          太宰治『待つ』論

          大学三年時のレポートより   『待つ』は昭和十七年六月博文館刊の『女性』に発表された。それ以前に京都帝大新聞の依頼により書かれたが、結局掲載はされなかった。二十歳の女性が小さな駅で何かを待っている様子が女性の告白体で描かれた小説である。  初期の研究では女性が何を待っているかに論点が置かれていた。佐古純一郎は「キリストとの人格的な出会い、邂逅」別所直樹は「戦争の終結、平和」を待っているとした。だが、これらの先行研究とは違い、柴口順一は「何故待つのか、あるいはどのようにして待

          太宰治『待つ』論

          田山花袋『蒲団』について

          大学三年の時のレポートより 明治四十年に発表された田山花袋の『蒲団』は、妻子持ちの小説家竹中時雄が若い女弟子の芳子への恋情を持ちながらも、彼女と彼女の恋人田中との関係を監督し、嫉妬を隠しながらも二人の仲を引き裂く様子が描かれた小説である。  『蒲団』は『破壊』と並んで日本における自然主義文学の先駆けとされた。田山花袋は『「生」に於ける試み』で「平面描写」論を唱えており、安藤宏(2015)は「『蒲団』においても視点は決して時雄だけに密着しているわけではなく、芳子や、時雄の細

          田山花袋『蒲団』について

          なんとか

          僕のnoteを読んだことがある方は何度目の自己紹介だよと言う感じかもしれませんが、僕は二十代のトランス男性です。 セクシャリティはまだ曖昧ですが、ゲイに近いと思います。現在お付き合いをしている方はシス男性の方です。 彼は僕のことを男性と認識し、そのうえでお付き合いをしてくれています。プライベートなことを書く気はありませんが、彼と出会ってから僕の状況も相まって僕のなかでいろいろなことが大きく変化しました。 最も変化したことは婚姻に関する考えです。 僕はトランス男性であり、今の

          なんとか

          身辺整理 自分のこと

          自分の人生がこういう23年であったことを僕は誰のせいにもしたくないし、誰かのせいにするつもりもない。 10年前から患っているうつ病がやや悪化し、ずっとそばにあった芸術を享受できなくなって、自己の内的な価値が下がると同時に、生きていく意味を失った。 なんとなく今日を生きていくみたいな生き方、自分にはできないしそんな生き方に価値を感じない。そうやって生きる80年より死ぬ気で生きた28年のほうが僕にとっては価値がある。大往生だと思う。 僕は何にも本気で向き合ってこなかった。すべて

          身辺整理 自分のこと

          猫とのにらみ合いに勝った

          散歩をした。体を動かすことがとても苦手なので散歩はめったにしないのだが、散歩をした。 僕の住む田舎町は、車通りの多い道に囲まれてはいるが、人に会うことはめったにない。人に会わないというのはこのご時世でなくとも僕にはうれしい事である。 いつも行くコンビニを通り、今日はもう一軒コンビニを通ろうと思い、森を切り分けてできたような道を進む。するとそこにコンビニはもうなく、白い布のようなものに覆われたコンビニの死骸があった。つぶれていたことをすっかり忘れていた。たいしてそのコンビニ

          猫とのにらみ合いに勝った