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【どうする家康】金ヶ崎を「何やかんや」で端折る潔さ。合戦より葛藤を細やかに描く理由。チャンバラより死体をまざまざと見せつける狙いは?第15回「姉川でどうする!」雑感

NHK大河ドラマ『どうする家康』(以下、『どう康』)第15回の雑感です。
(※本記事は一部有料です。ドラマレビュー箇所はすべて無料でご覧いただけます)
前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)
(※本記事のセリフの引用箇所は一部ノベライズに準拠しており、ドラマのセリフとは異なる場合がございます)

●金ヶ崎を「何やかんや」で端折る⁉『麒麟がくる』比較勢対策としてはむしろ英断か

「何やかんや」で端折りやがったーーーーーーwwww

はい、今週も『どう康』レビューやっていきますけれども。僕、前回のレビューでも書いてたじゃないですか……。

「いかにピンチを切り抜けたかというのが面白い。それが冒頭から楽しめるのがまさに今夜の第15回「姉川でどうする!」」

と。またもやゴメンナサイでした。まさか「何やかんや」で端折るとは思わんやん。読みが外れたと言うか……完全にアレです。ドリフや吉本新喜劇ばりのコッテコテのズッコケポイントよ!本当、第13回アバンの「信玄に詫びといてくれ」といい、視聴者を裏切るのが大好きですよね、古沢良太さん……。

しかも滅茶苦茶個人的な話で恐縮ですけど、その前日、元ニンドリ編集長・りふぁさんが1日店長されてたバーに行って、僕、周りのお客さんに「明日の『どう康』面白いから!まだ見てない方でも絶対楽しめるから!見て!」とかめっちゃ売り込んできちゃいましたからね……。

てか「二次元キャラ」でもないしwまぁ、戦国時代を元にしたゲームも多いし……大河ドラマの話にも、意外にも食いついてきてくださる方が何名かいらっしゃって助かりましたが……。

でも初めて見た人、「えーっ⁉」って思わなかった?「大河ドラマって、こんな軽いの?『バカ殿』みたいなコント番組じゃない、コレ⁉」って。僕がチャンネル登録している「戦国BANASHI」さんもやっぱりツッコまれていましたけど。

しかしこちらの動画ではそれだけじゃなく、「金ヶ崎の戦い」のについては最新の研究によると実態が見えてこないことの方が多く、それによって「新しい歴史研究」を取り入れて描こうとしている『どう康』としては描きにくかったのでは?という考察もされていました。

あとは僕の個人的な想像……というか「邪推」になるんですけれども、金ヶ崎は2020年の『麒麟がくる』でもやったじゃないですか。しかも「金ヶ崎」「姉川」と2話に分けて描いてます。どう描いても過去作と比較されてしまいます。

今回は1話にまとめなきゃいけないから、片方は「何やかんや」でスパッと終わらせたのは、ある意味、英断だったとも言えるかもしれません。45分の中にあんまり激しい合戦シーンばっかり詰め込んでも、どれがどの戦いだったかなんて、大河初心者の方にはかえって印象に残らなくなっちゃいます。「なんか今回ずっとワチャワチャしてて、取っ散らかってたな」って印象すら持たれてしまう。

それに、制作側から見ても、なかなかこんなスパッと切れる勇気は持てないですよ。凡人だったら「ほんの十数秒のシーンでも何かチャンバラ入れなきゃ」なんて考えそうじゃないですか。それだけで、物凄い人件費も時間もかかるんでしょうけど。そこを「何やかんや」で済ませ、別にところにリソースを割けるというのは、コスパ的にもすげぇこと考えるもんだなと……。

まぁイチ視聴者としてゼイタクを言えば、第14回の冒頭で出てきた渡辺守綱が金ヶ崎で槍を振るう様子もやっぱり見たかったですけど。だってあいつ、13回では大久保忠世と一緒に岡崎でお留守番してたハズじゃないですか。それが14回にはなぜかいて、「これは金ヶ崎の退き口で槍を振るうための布石だな」と思ったのに、ですよ。

これじゃ守綱、なんか「岡崎から直通で敦賀に呼ばれて、カニだけ食って帰ってきただけ」って感じしません?w史実じゃなくて後世の創作だとしても、ちゃんと彼が活躍していたという伝承はあるのに……。

徳川には弓や鉄砲の名手がおり、槍の半蔵(渡辺守綱)が槍をふるって数十人の敵を倒した、といった話も、番組で伝えられた。馬術も皆、達者である。これは家康自身にもいえることだった。
(中略)
番組内では、家康が「自ら鉄砲を放って秀吉を助けた」という史料が紹介されていた。

「英雄たちの選択」 金ヶ崎の退き口──カット部分&言い残し|多田容子(note)

でも、家康まで鉄砲を放つのか。少なくとも『どう康』の松本家康には絶対そんな芸当できないな。さすがにここまでは、キャラブレを考えても描きにくいシーンだった、とも考えられる気がします。

●チャンバラよりも「織田を裏切るか、どうする⁉」にリソースを割かれた「姉川の戦い」

じゃあ金ヶ崎を端折った分、今回メインの姉川は派手に描かれたかと思うと、合戦シーンよりも「信長を裏切る?どうする⁉」の部分に物凄く時間を割かれていたのが衝撃でした。

そもそも、浅井が徳川を調略しようとしていた、なんてことは伝承にすらない小沢良太さんのオリジナル。まぁ、左衛門尉も言ってましたけど、「そんなもんを受け取ったと知られただけでも大事じゃ」ですよ。証拠が残っていないものを、逆に「そんな事実は無かった」と証明するのも難しい話です。

ただ「朝倉勢から途中まで圧されていた」という話はYoutuberの「戦国BANASHI」さんも語られており、他の歴史系Webサイトにだって載っています。その理由を「朝倉から調略を受けて迷っていたから」と描くのは、単なる「創作」ではなく「新解釈」として受け取ってもいいような気がします。

1570年(永禄13年/元亀元年)6月28日未明からはじまった姉川の戦いは、当初浅井・朝倉軍が優勢。
しかし、徳川軍が姉川を西側から回り込んで渡り、朝倉軍に攻め入ったことで大きく形勢が逆転し、朝倉軍の不利な状況で攻め込まれました。

姉川の戦い/古戦場 - 刀剣ワールド 滋賀県長浜市:姉川古戦場

ただ、この迷っていて圧された状況を打破するために「榊原小平太が横から突っ込んで逆転した」みたいなドラマ的に盛り上がりそうなシーンも描かれませんでした。朝倉と戦うと決めたからにはもう突っ込むのみ、そして勝利!みたいな。「今まで迷ってたのは何だったの」みたいにポカーンとされちゃった方もいらっしゃるやもしれません。

僕も正直、「あれ、今回はチャンバラ無かった?」とすら感じました。2周目したら一応、ちゃんと合戦シーンも描かれてましたけど、わずか十数秒程度。あとは、川に敷き詰められたように倒れるおびただしい数の死体の映像でその激しさを物語るという。本当、戦いの描き方があっけないです。

ただ思い返せば、ひたすら織田に挑んでは破れていた第3回でも、合戦で兵と兵が激しくつばぜり合いするようなシーンより、兵たちがバタバタと倒れていくシーンの方が印象に残ってるんですよ。どうもこのドラマ、当初から「華やかな合戦シーン」というものはなるべく描きたくないような印象を持ちます。

それよりも死体を映す。過去の大河では逆に、そんなに死体は重要視していなかったようにも思えてきます。もちろん『鎌倉殿の13人』で何度も出てきた「首桶」は確かに「死体」の描き方の一つなんですけど。それよりも『どう康』の場合は、実際にそこで血を流し、命を奪われていく人間の姿をありありと描く。

NHKドラマとしては攻めていると思うんですよね。死体なんて、なるべく見たくないじゃないですか。でもあえて見せていく。それによって、「戦なんて華やかなものじゃないんだ。後に残るのはこうした死体のみ。ただ虚しいだけだ。だからこそ、そんな戦の世を終わらせなきゃいけない。それを徳川家康が成し遂げていかねばならないんだ」と訴えかけているようにさえ感じます。

●「三方ヶ原」から本気出す⁉さらに後半は『シン・ゴジラ』樋口真嗣監督合流で、今後の合戦シーンに期待

もちろん「だけど、派手で見ごたえのある合戦シーンも見たいよ」という視聴者の欲求もあるでしょう。やっぱり見たいですよね、本多平八郎や榊原小平太、そして渡辺守綱や服部半蔵が活躍するようなシーンだって。

それこそが、これから描かれることになる武田信玄と徳川家康の大戦、「三方ヶ原の戦い」になるような気がしています。

そして先日、ドラマの後半からは特報監督として、実写版『進撃の巨人』や『シン・ゴジラ』の監督を務められた樋口真嗣監督が加わることも発表されています。

言ってしまえば今回の「姉川の戦い」は、中盤の信玄との決着、そして後半にいよいよ徳川家康が天下取りを目指していくことになる合戦シーンを壮大に見せるための「溜め」の演出だったようにも思えます。

なにせまだ、松本家康が戦国大名として本気出せてないんだよ。「どうする?どうする?」の連続なの。けれど4月12日に公開されていた予告の映像では、「弱さは害悪じゃ」と言って家康が瀬名の元を去っていくシーンも描かれました。この先の展開で家康が、今後も成長曲線をえげつないほど右肩上がりに上っていくことは保証されています。

ただその頃になると、『鎌倉殿』の主人公・小四郎(北条義時)がそうだったように、「もうあの若かった頃のナヨナヨとした姿は見れないのか……」と切なくなることも増えるでしょうね。だから今はまだ、存分に描かれる「弱さで揺れる家康の姿」も愛しく思える部分があるのです。

「弱い家康は見たくない。早く強い家康が見たい」って方は、夏ごろかなぁ……もう少々、お待ちいただく必要があるような気もしています。もちろん、「最初はツマランと思ってたけど、ちょっとずつ面白くなってきているぞ!」なんて掌返しは、いつやってくれてもOKですよ。

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