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【どうする家康】下ネタで門徒の心をつかむ空誓上人。松平家康は信長色で心を染められた?第7回「わしの家」もっと深掘り

NHK大河ドラマ『どうする家康』第7回のもっと深掘り感想です。
前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)

信長はなぜイライラしていたのか。妻との約束を果たすためだった?

今週も『どうする家康』レビュー3本目、もっと深掘り感想です。実は先日、ようやく木村拓哉さん&綾瀬はるかさんW主演の『THE LEGEND & BUTTERFLY』を見てきまして。織田信長とその正室・濃姫(帰蝶)の物語を描いているんですが、脚本がこれまた古沢良太さんということで、いやぁ面白かったっすわ。

ちょうど『どう康』と重なる部分、対になるような部分もあり、これはこれで後日ちゃんとレビューを書かねばなと思うのですけど。映画を見た後で『どう康』を見直すと、また新たな発見もありました。

例えば第7回の永禄6年(1563年)、序盤シーンでは、岡田信長「俺はこれから美濃(※現在の岐阜県南部)の平定にとりかかる」なんて言ってましたね。

映画『レジェバタ』では天文18年(1549年)、木村信長が、美濃国との同盟のために濃姫を妻として迎え入れていましたけれど。その後の弘治2年(1556年)、美濃国では義理の父である斎藤道三と、その息子・義龍による親子の争いが勃発。木村信長は義父を助けるために兵を率いて美濃へと向かおうとしていましたが、間に合わず、道三は義龍に討ち取られてしまいます。

そして「私が兄を殺す!」と怒りに燃える正室・濃姫を諫めながら、「今は様子を見る。美濃は、いずれ必ず取り戻す」と木村信長は誓いを立てていましたけど。

ドラマ『どう康』の第7回では、義龍が急死(永禄4年(1561年))して2年、まさに岡田信長が、その妻との約束を果たすためにいよいよ美濃へ戦を仕掛けようとしているところだったんですね。(……って、木村になったり岡田になったりややこしいな!どちらも信長は信長ですけどw)

だからこそ、せっかく同盟を結んだ三河国が、国内の謀反によって家康が失脚してしまうようなことはあってはならない。美濃を攻めている最中に、背後の三河からも攻め込まれるわけにはいきませんからね……。

それでドラマ第7回の序盤シーンでは、三河の謀反人どもをひっ捕えた岡田信長も、あんなにイライラしてたのか。そうと思うと、またドラマも一層深く楽しめる気がします。「家康よ、白兎てめぇ本当、頼むぞ!」とマジでキレそうな5秒前だったわけです。「保護者かよw」なんて萌えてる場合じゃなかったな……。

そう言えばあの西尾(鷹狩の狩場)での家康と信長の対面シーン。よくよく見るとバックで兎?みたいな獣を焼いている映像が映っていましたね。あれはひょっとしたら、「ウカウカしてるとお前もこうなるぞ」ということを暗示していたのでしょうか。

ちなみにSNSでは「信長、本当は家康と一緒に食べたかったんじゃないの?」なんて意見も。それはそれで面白いですけどw

「一向宗」とは何か?空誓上人のカリスマ性とは?

さて、映画の話はここまでにして……(また長い前フリっぽくなっちゃったなw)。今回は「一向宗」の門徒を数多く従えるカリスマ、本證寺住持の空誓上人について深掘りしていきます。

空誓上人、ドラマ内では「蓮如の曾孫」と言われていましたけど、この「蓮如」というのが「浄土真宗」の起こりとされる「親鸞」の嫡流だそうで。滅茶苦茶サラブレッドだったんですね。

ドラマでは「最近、民の間で一向宗が流行っている」と、「新手のカルト教団?」みたいな描かれ方もしていましたけど、別にそんなことはない。鎌倉時代から続く仏教の宗派のひとつですね。

古くは「一向宗(いっこうしゅう)」「門徒宗」などと俗称され[3]、宗名問題を経たのち戦後は真宗10派のうち本願寺派が「浄土真宗」、他9派が「真宗」を公称とする

浄土真宗|ウィキペディア フリー百科事典

ちなみに紛らわしいのが、鎌倉時代の浄土宗の僧・一向俊聖が創めた仏教宗派も「一向宗」と呼ぶそうですが、どうもこれとは無関係とのこと……。

一向宗(いっこうしゅう)とは、

1.鎌倉時代の浄土宗の僧・一向俊聖が創めた仏教宗派。
2.江戸幕府によって時宗に強制的に統合され、「時宗一向派」と改称させられた。
3.さらに江戸幕府によって強制的に浄土真宗の公式名称とさせられた。以来、他者が浄土真宗、ことに本願寺教団を指す呼称。

仏教史的な観念からすれば、本来は1.のみが「一向宗」の正しい定義であるとも考えられるが、戦国時代の一向一揆の印象や、江戸幕府によって行われた強制統合(「一向宗」の使用禁止)や強制改名(「一向宗」の使用強要)に伴い、今日では3.のみを指すのが一般的である。

一向宗|ウィキペディア フリー百科事典

いずれにしても、現代では「一向宗」という宗旨・宗派の団体は登録がなく、「浄土真宗もしくは真宗各派が流れを汲んで」いるとのことでした。

一方、家康の信仰は浄土宗だそうで。今でこそ「どっちがどっちだっけ?」となりがちですが、浄土宗は平安時代に法然が開いた宗派、浄土真宗はその法然の教えに影響を受けた弟子・親鸞が鎌倉時代に開いた宗派ということなので……。

なんとなく松潤家康が「浄土宗の方が師匠なんだから、浄土宗の方が偉いに決まってるだろ!浄土真宗なんて不浄だ!」みたいな感覚を持つこと自体は、「正しいかどうか」はともかく、「理解はできる」気がします。

ちなみに僕の実家は「浄土真宗」の方でした。むしろ現在の日本人の割合的には、「浄土真宗」の方が多いみたいですね?

だからドラマ的にも、一揆を起こした「一向宗(=浄土真宗)」を「悪」として描くと、日本人の大半を敵に回すことになるので、脚本もかなり悩まれたのではと思いますけど……。

ドラマでは、「空誓上人の正しさと怪しさ」「家康の正しさと怪しさ」がそれぞれ描かれており、そこを評価する声もSNSでは多数見られました。

いやね、僕自身も、最初の雑感では「空誓上人、こいつ怪しいところもあるぞ」みたいな書き方はしていたんですけど……。

彼はあくまで、民の目線で世界を見ている。そうすると、「戦ばっかりやっておる阿呆どものせいじゃ!」と武士たちを敵視して、「不入の権」を笠に着て寺内町で富を蓄えていれば、門徒たちの支持は得られるわけです。

なんら間違ったことは言っていないし、認められた権利を行使しているだけなので責められるところも無いはず。特に、その話術も巧みでしたね……「法事の帰りに小便がしとうなって藪の中に入ってやっとった」って、いきなり下ネタから入るとか。学のない人にだってわかりやすいじゃないですか。

例えばいきなり「我が曾祖父、蓮如上人はこうおっしゃった」なんて話から始められても、「誰もテメーのヒィジジイの話なんぞに興味ないわ、あほたわけ!」ってジャイアン渡辺守綱がぶん殴りにきそう……いや、いくら守綱でもそんなことしないか。たぶんグウグウいびきかいて寝始めるでしょうね。

でも、ただの下ネタの面白話かと思ったら、「子が捨てられているのを見つけて連れ帰った」という感動話に持ち込む。しかもそれだけじゃない、捨てた親が憎いとは言わず、「この社会そのものが間違っているんだ、武士が悪いのだ」という教えにつなげていきました。単なるサラブレッドじゃない、とても頭のきれる僧侶だということがわかります。

ちなみに永禄6年(1563年)当時の空誓上人、なんと19歳らしいです。家康よりも3歳年下とのこと……。

とてもそうは見えなかったよwwwwwww

ディベートで空誓上人を打ち負かした松潤家康。米の取り立ても独断だった

一方で、空誓上人の話を聞きながらひとりだけずーーーーっと険しい顔をしていた松潤家康。彼にはきっと、上人が下ネタトークを始めたあたりから「この若造(※3歳下だから)、汚い話をしおってからに。上人として大丈夫か?」みたいな思いで見ていたような気がします。

その上、武士である自分を悪者扱いし始めるわけですからね。これは気持ちのよいものではない。さらに、千代に取り次いでもらって1対1での会話をしたとき……あれはもう、会話と言うより「ディベート」だったと思うのですが。「戦をしてはならぬのなら、一体どうすればよいのですか?」に対して上人が「知らん」と回答したので、「あーもう、こいつはダメだ」みたいな気持ちになったのではと思うのですよ。

だけど、だからって問答無用で年貢を取り立てていいことにはならなかったハズ。最終的に取り立てるにしても、手順を踏む必要がありました。……まぁ、それができなかったからムリヤリってことになったんでしょうけど。ちなみにノベライズ版では、またこんなことが書いてありましたよ。

「私はただ筋が通らぬことをおやりになるべきではないのではと……。左衛門尉殿や数正殿は何と?」
「あいつらに言えば異を唱えるに決まっておる」
「殿おひとりでお決めに?」
「わしはこの国の主じゃ、何が悪い」

第七章『わしの家』|小説『どうする家康一』

SNSでドラマの感想を見ていると、「どうして一向宗から米を取り立てる決定をするのに会議シーンが無いんだよ」みたいな意見もありましたが、そもそも会議してなかったんですね……自分ひとりで決めたと。

ちなみに実際はどうだったのかを調べてみると、「上宮寺に押し入って無理やり年貢を取り立てたから起きた」説と、「本證寺に押し入って犯罪者を捕らえたから起きた」説の2つがあるようでした。どちらも「不入の権」を侵害したことに違いはなく、年貢とは関係なさそうな後者についてもやはり家康自身がわざと一揆を起こさせ、教団が握る水運や商業などを取り上げようとする思惑があったのではと言われているようです。

松潤家康、百姓を下に見ていた?「王道と覇道」はどうしてしまったのか

たまたま起こしてしまったにしろ、意図的に起こしてしまったにしろ……当時の家康はきっと、一向宗を甘く見ていたのには違いないでしょう。そもそも彼は、駿府で今川義元に育てられたシティボーイ。教養もたっぷり身につけ、ドラマの松潤家康も三河の町や民達のことなんて下に見ていたようですし。

今回、本證寺の寺内町に侵入する際も、百姓の恰好をするのに顔をススで汚し過ぎて、土屋長吉重治に「ちょっとやりすぎでは」なんて突っ込まれていました。逆に言えばそれだけ、百姓を「汚いもの」と見なしていたのか。これもノベライズでは「わしは育ちがいいゆえ、これくらいやらぬと、品の良さが消えぬと思う」なんてセリフが載ってたんですよ。やっぱりノベライズの家康の方が、より性格の悪いキャラになってる?のかもしれませんが……。

そもそも、そもそもだよ。第1回で今川義元(演:野村萬斎)から「王道と覇道は存じておるな」と言われたときの松潤家康(※当時は元康)君よ。「武をもって治めるは覇道!徳をもって治めるのが王道なり!」と言っていた彼は、もうどこに行ってしまったんだ。今はその覇道を突き進む信長こそが彼のお友達ですからね。

僕自身も、37年も生きてると心当たりあるなー……職場でも誰が上司になるかで、言ってることが毎回変わる、みたいな。松潤家康君だって、この回ではまだ20代設定ですからね。「付き合う人によって意見がコロコロ変わってしまう」のも、すごい共感できます。いや、違うな。BL的に言えば、「信長に心を染められちゃった」って感じですかい?(キャーッ!)

いよいよ26日、第8回が放送されるわけですが。むしろ松潤家康くん、ここは痛い目に遭うのが当然な気がしてきた。ここが本当、試練の時ですよ……まぁ、史実として「乗り切れる」ことはわかっているんですが、果たして「無事に」なんて言える状況かどうか。誰が裏切り、誰が死に、誰が忠義を見せるのか。どう転ぶも地獄の展開ですけど、もう楽しみで仕方ないですね。

一応、最後に書いておきましょう。いいかい、視聴者のみんな。大河ドラマだから、ほぼフィクションではあるけど……「一向一揆」っていう事件そのものは現実だし、実際に人死にもたくさん出たんですからね……。

だからさ、ね。歴史って、面白いでしょう?(悪魔の笑み)

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