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【レポート】住まい、という場づくり。大きな視座と小さなアクションについて(事前オンライン説明会Vol.3)

こんにちは、事務局の渡辺です。2021年5月16日(日)、場の発酵研究所の事前オンライン説明会Vol.3を開催しました。テーマは「住まい、という場づくり。大きな視座と小さなアクションについて」。自宅という住まいからオンライン参加するという状況で話すには、とてもおもしろいテーマだと思っていました。

みんな、様々な場所からオンラインに集まりました。鹿児島、島根、大阪、滋賀、奈良、東京からの参加。出張先や車の中という人もいましたが、大半は自宅から。ベランダから、という人も。住まいというテーマのためか、皆さんの背景に映る風景が気になる日でした。

場づくりは、場「づくり」か。問いを深める研究所。

発起人の1人である坂本より、場の発酵研究所のコンセプトを説明しました。同じく発起人である藤本との対話から、研究所のコンセプトに繋がる問いが生まれたといいます。それは、『場づくりは、場「づくり」か。』

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坂本:僕たちが「場づくり」と言ってきたものは、空間を作るだけじゃなくて、空気感や雰囲気をつくる、ということも含まれます。「つくる」と言うとグイグイと能動的につくっていくイメージが思い浮かびます。しかし自分たちはやってきたことは、そうでもないなと。引き算のような要素や、何もしないような要素もあると思います。それは「つくる」という言葉では表現しきれないものがあり、もしかしたら「発酵」という表現が近いのではないか。そんな話から始まっています。

坂本の本拠地である東吉野村のオフィスキャンプ東吉野で、坂本と藤本は『場づくりは、場「づくり」か』というテーマで合宿を開き、問いを深め続けたそうです。これをもっと長期に渡って思考し続けたい。全国のいろんな人たちと学び合いたい。そんな経緯から立ち上がったのが、場の発酵研究所です。

場の発酵研究所スケジュール_アートボード 1

▼研究所の詳しい内容はこちらの記事に!

住まい、という場づくり -大きな視座

さて後半のテーマトークへ。「住まい、という場づくり。大きな視座と小さなアクションについて」。前回の説明会では生活や仕事などの境界線がテーマでしたが、住まいもまた、完全なる私的空間だという人もいれば、仕事と生活が混在しているという人、地域に開いていていろんな人が入ってくるという人、もいると思います。住まい、とは何だったのでしょうか。まずは坂本から「大きな視座」について話しました。

ホンマタカシ氏による写真集「東京郊外 TOKYO SUBURBIA」には、おもに高度経済成長期以降に造られた郊外の写真が収められています。その写真を引用しつつ、住宅の変化について話しました。

坂本:高度経済成長期より以前は、その場所に住み始めた人たちが、そのエリアにふさわしい機能を自分の住まいに取り付けていました。住まいは自分でつくるものであり、みんなで作るものでした。特に人口の少ない山間地域では、みんなで茅葺の屋根を作っていたわけです。そんな営みが連続する形で"まち"が形成されていた。しかし近代の日本には郊外が増えました。郊外にはまず、そのエリアを開発して商品として売りたい、という人たちが現れました。住民の手づくりによるボトムアップ型の住まいづくりから、郊外のようなトップダウン型の住まいづくりに変化したのです。自分自身も郊外型のニュータウンから人口1700人の山間部に移住して、その違いに驚きました。どちらが良いか悪いかではなく、そんな違いがあることを知っておくことは、自分なりの"住まい"を考える上で重要だと思っています。

そんな坂本の話を聞きながら思い出したのは、ジェイン・ジェイコブス氏の名著「アメリカ大都市の死と生」。1950年代のアメリカで進められたトップダウン型の都市計画を批判し、生活者のあり方を重視するよう提言して大きな影響を与えました。都市に多様性をもたらす条件などが解説されていて、出版後60年が経つ今でも参考になる知見がたくさんありました。

ガンジーやキング牧師に影響を与えたヘンリー・デイビッド・ソローという思想家が、湖畔の丸太小屋で1845年から2年間自給自足しながら書いた「森の生活」という本で次のように言っています。人生において"住まい"のあり方を再考させられる問いかけだと思います。

ようやく家を手に入れると、人は豊かになるどころか、金銭面でも精神面でも貧しくなる。人が家を手に入れたのではなく、家が人を手に入れたからだ。(ソロー)

住まい、という場づくり -小さなアクション

では小さなアクション、とはどんなものがあるのでしょうか。僕(渡辺)自身の具体的な話をさせてもらいました。

渡辺:20代は住む場所を選ばずという感じで、会社に指定された社員寮に住んだこともありました。今も都市部に住んではいますが、ご縁に恵まれて、築100年の木造長屋に住んでいます。点々と住んだ無機質な住まいを通じて何となくイメージしていた理想の住まいですが、今の家は腑に落ちる感覚があります。木の質感や小さな庭の手入れから自然との繋がりを感じることができるこの長屋は、「いきている長屋」として冊子にコンセプトや経緯がまとめられています。自分が求めるイメージについて知る、改修する、細かな手入れをする、といったことはもちろん、この家の歴史を紹介することもまた、小さなアクションといえるのではないかと思っています。

自宅を仲間たちと一緒にリノベーションしているという参加者もいました。その土地や家を買う購買力はもちろん必要ですが、その割合が低い代わりに、自分で作る能力があることや、頼ることのできる仲間がいること、これら全ての要素を掛け合わせて、住まいをつくる。これはまさに、「場の発酵」のような意味合いがあると感じます。

消費行動の一環で家を買うことは「100%の家を買う」ということになりますが、それでは最初がピークで、住み始めると価値が減っていってしまうと。それではパソコンなどの機械と同じではないかと。一方で手づくりによる工芸や民芸には、使えば使うほど価値が上がるものもあると。なるほど、住まいという場づくりには、手仕事の愉しみのような要素も含まれるのかもしれません。

そんな視点で自宅を見渡すのは初めてだ、という参加者もいました。そんな新たな視座や問いを得て日常を見直す、これはまさに、場の発酵研究所の価値そのものと言えます。

いよいよ申込み期限が迫ってきた場の発酵研究所。
皆さんと問いを深める時間を楽しみにしています。

参加枠について

1. 特待生参加:100,000円(税込)
2. 一般参加 :120,000円(税込)
3. 一般(応援)参加枠:140,000円(税込)
4. 学生参加枠:80,000円(税込)
※いずれも
全18回の講座参加費
みんなの研究費(15,000円)
期間中のメンタリング / 相談(1h程度)すべての費用を含みます。

1. の特待生参加については、申し込みフォーム以外に別途「研究計画書」を提出いただき、選考させていただくというプロセスがあります。


  ① 場の発酵研究所において研究したいテーマ
  ② 検証したい仮説
  ③ 研究方法 / 研究計画
  ④ 研究の成果イメージ / 影響」
をA4一枚以上で、申し込み時にご提出ください。

「ちょっと面白そうじゃん」「育成や普及に協力したいと思っているよ」という方は、一般(応援)参加枠にぜひ。それぞれ、参加中の特典にはいっさい変わりがありません。

申し込みはこちらから

https://forms.gle/9RS63dFTwAjunjvg8
〆切:5月23日(日)



この記事が参加している募集

いつもご覧いただきありがとうございます。一緒に場を醸し、たのしい対話を生み出していきましょう。