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社会科学

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2022年9月の記事一覧

『日本の海上権力――作戦術の意義と実践』下平拓哉著、成文堂、2018

はしがき i第Ⅰ部 戦略・作戦・戦術第1章 「作戦術」とは何か  3はじめに  3

空母4隻を失った日本海軍のミッドウェー海戦における大失敗は、太平洋戦争の流れを大きく変えた。また、米国のベトナム戦争における予想外の失敗は、米国内のみならず世界中を震撼させた。米海軍は、これらの失敗を「作戦術(operational art)」の無視あるいは欠如によるものと分析している。しかしながら、米海軍大学の

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『講座スラブ・ユーラシア学 第3巻 ユーラシア』松里公孝編、講談社、2008

序章 帝国と心理地理、そして跨境史 松里公孝 11はじめに

本書は、21世紀COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築――中域圏の形成と地球化」の研究成果を日本語社会に還元する『講座』全3巻の掉尾(ちょうび)を飾る巻である。この巻は、今後のスラブ・ユーラシア地域を理解する手引きとして、帝国、心象地理(あるいは空間表象)、跨境史(トランス・ボーダー・ヒストリー)という3つのコンセプトを提唱してい

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『講座スラブ・ユーラシア学 第1巻 開かれた地域研究へ』家田修編、講談社、2008

第1部:中域圏とは何か第1章:中域圏 家田修著 27-63第2章:空間の科学 松里公孝著 64-88はじめに

21世紀COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築――中域圏の形成と地球化」が始まった頃しばしば寄せられた反論は、「地球化の時代に地理的位置など意味を失った。現代人は飛行機で移動し、インターネットから情報を得るのである。地域を中域圏などという名称のもとに括ることには意味がない」というも

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『ポスト社会主義の政治』松里公孝著、ちくま新書、2021

序章 準大統領制とは何か旧社会主義国に広がる準大統領制

30年前(1989-91年)、ソ連・東欧の社会主義体制体制は崩壊した。議会制=ソヴェト制の外観の下、一党制またはヘゲモニー政党制*を採用していたこれらの国々は、複数政党制を前提とする新しい政治体制を選択することを強いられた。

かつてのソ連・東欧地域には、こんにち28の承認国家、3つの半承認国家(コソヴォ、アブハジア、南オセチア)、4つの非

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『「核の忘却」の終わり : 核兵器復権の時代』秋山信将・高橋杉雄編、勁草書房、2019

はじめに[秋山信将]本書は、笹川平和財団によるプロジェクト「核不拡散・核兵器の役割再検証」の成果である。同プロジェクトは、2015年に立ち上がり、足掛け4年の間、核兵器保有国の核政策の現状について分析・議論を重ねてきた。

その間、核をめぐる情勢は大きく変化した。

一方ではオバマ大統領の広島訪問(2016年)や核兵器禁止条約(TPNW)の採択(2017年)など、核軍縮進展の期待が高まるような動き

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