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【思った通りとはいかない(山エッセイ)】

ようやく真夏の感じが出てきたのは嬉しい。でも外気温36℃はあまりにも暑い。

これでは低山に登るのは辛い。去年は熱中症になりかけたし今年は灼熱の沼津アルプスで地獄を見た。この時期に登るのならアルプスや八ヶ岳などの高山なのだろうけど、遠出するほどの時間も取れない。それでも山には登りたい。

朝、気温が上がる前なら、沢沿いの高尾山6号路なら涼しいかも知れない。一縷の望みをかけて朝七時から高尾山を登った。人気者の高尾山でも真夏だし、朝から登れば静かに独り歩きを楽しめる。思った通り、高尾山口の駅に着いた時は涼しく、登山者の姿もあまり見られない。

が、涼しいとはいえ真夏の直射日光のアスファルトの上に比べたら涼しい程度で暑いものは暑い。高尾山を流れる沢はそれほど水量も無いせいかあまり涼しさを感じられない。沢沿いの心地よいハイキングとはいかず、結局汗だくで登る羽目に。しかも耳元で羽虫がプンプン飛びまわる。静かな山歩きを楽しむどころじゃなかった。立ち止まると虫にたかられるので森の中の景色を楽しむ余裕もなく、コースタイムを半分に縮めて足早に山頂へ辿り着く。朝なら涼しいだろう、静かだろうと甘い考えで登り始めた私を高尾山は容赦なく打ちのめした。

今日の登山は失敗だった。涼しさもなく静けさもなく、特に楽しむポイントもなく終わった。なに、こんな日もあるさ……などと、勝手に失意に沈む私の目に飛び込んで来たのは夏の富士山だった。

朝から山頂へ立ったおかげか遠くの空も霞んでおらず、珍しく富士山の姿がハッキリと見えた。暑さも忘れて真夏の富士山を眺めた。

思った通りとはいかない。でも思い掛けない幸運のある日だった。

普段はあまり見られない夏の富士山


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