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自由は退屈、だから働く

「もしも死ぬまで生活ができるだけのお金が手に入ったらどうする?」

わたしは生きていくのに困らないだけのお金が手に入っても、仕事はやめないと思う。


このことを書こうと思ったきっかけはこのnote。

(2日連続で他人のnoteを掲載しているけれどたまたまだよ)

bar bossaを経営されている林伸次さん。林さんがnoteで書かれていることに考えるきっかけをもらうことは多い。そして、毎週水曜日にやってらっしゃる質問コーナーもおもしろくて好きだ。

ここに書かれているように、先日アメリカで看護師の女性が宝くじを当てた。その額なんと、日本円にして830億円。アメリカで過去最高額だそうだ。

わたしもちょうどお昼のニュースで宝くじを当てたという報道を見ていて知っていた。そしてこの宝くじを当てた女性が「仕事先に明日から来ないって連絡したわ!」と言ったところも見ていた。

この女性のように、宝くじが当たったら私は仕事をやめるだろうか。

答えはやめない。だって、自由は苦痛と知っているからだ。


「自由は苦痛」ということに気がついたのは世界一周をしているときだった。わたしは貯金を切り崩しながらの旅のスタイルだったので、旅の半年間は働いていない。基本は毎日移動するか観光がてら街を歩くか、時間がきたらごはんを食べて寝る。そういう毎日だった。

もちろん働かない日々は気楽だった。今までしていた接客業のように、お客さんに気を使う必要もない。売り上げなんて考えなくていい。お盆・正月関係なく好きなことができる。働かない日々は天国で、ずっとうらやましく感じていた日々だった。

しかし、実際やってみるとどうだろう。暇なのだ。

もちろんいろいろな国をまわる旅だったので、ずっと同じ国にいるわけではない。1週間ごとくらい、最大でも2週間で国や都市を変えるから街並みや人は変わる。文化や宗教、もちろん食べ物だって変わるから毎日めまぐるしい。さまざまな変化が向こう側からやってくる旅は楽しいけれど、飽きるのだ。

飽きるというか、旅自体が日常の当たり前のことなってくる。さらには毎日何かを自分で作るわけでもない、観光といった受動するだけの日々で、どんどん退屈になるのだ。

特にわたしは観光スポットに行くよりも街中を歩いたり市場をぷらぷらとする、その国の日常を見る旅が好きでそんなスタイルを取っていた。だから毎日地元の人と絡んだりといった刺激はあるのだけれど、やっぱり退屈になってくる。本を読んだりもするけれど数に限りがあるし、大好きな映画もそういうときはなぜか見る気がしない。旅の後半から写真を撮り始めたり現地人の家に泊めてもらったり、自分から何かをしようと始めたけれどそのときはすでに旅に出て3ヶ月、遅かった。

そのうちだんだん「働きたいな」と思う日々がやってきた。

自分でも不思議だった。あんなに嫌で「働きたくない」「休みが待ち遠しい」と思っていた日々が、恋しくなったのだ。日本にいて働いていたときからは考えられない。

でも、働いているときはどんなに苦痛でも毎日「生産的な何か」をしていたから、恋しくなったのだと思う。旅中はあまり自分から何かを作り出すことがない。強いていうなら現地にある材料でどうにかして日本食を作ろうとがんばったときくらい。あのときは見慣れぬ現地の材料で試行錯誤してまちがいなく生産的だったけれど、それ以外の観光といったシーンでは生産的だったと思えない。

旅に出て4か月経った頃にわたしは「帰ったらすぐに働こう」と決めていた。よく帰ったあとに会った友だちには「しばらくのんびりするの?」なんて言われていたけれど、もうのんびりする時間は十分だった。何をしても良い時間はもうたくさん味わったし、これ以上自由に過ごすのはもはや苦痛だった。

確かに仕事はしんどい。どれだけやってもダメなときとかうまくいかないときはやっぱり弱気になる。いまわたしは幸い好きでやりたかったことを仕事にしているけれど、それでもつらいときもある。けれど、もう一度自由な時間が欲しいかと問われれば、わたしは即答で「No」と言う。もう自由はこりごりなのだ。


この宝くじを当てたアメリカ人の女性が仕事を辞めるのはとても良い選択だと思う。830億円もあればいくら物価の高いアメリカとはいえ暮らしていけるだろうし、海外旅行だっていくらでも行ける。今まで彼女がずっと仕事に人生を捧げてきたのならば、これを機にゆっくりしてほしい。でももし「自由はもういいわ」と思う日が来たら、そのときはあっさり仕事に戻るのも素敵だと思う。

彼女は看護師らしいので資格があればある程度仕事はあるだろうし、キャリアもありそうな人だった。だからいつでも仕事復帰できるだろう。そのときは自由を感じた分、働くことのおもしろさと重要さがより身にしみているだろうから。





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