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#読書記録

コーリー・スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

コーリー・スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

この感想を読書メーターに書いたのは、もう4年ほども前になる。こちらの本の感想である。

メリアム・ウェブスター社はアメリカ最古の辞典出版社であり、著者コーリー・スタンパーはウェブスター社の辞書編纂者である。

辞書の編纂者とは日本もアメリカも同じなんだなと、つくづく感じる。こつこつと用例を収集し、悶々と語釈に悩み、黙々と現代語に向き合う。そういう人たちだ。

さて。
本書の目次である。

Hraf

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『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』が“とても面白かった”ということ

『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』が“とても面白かった”ということ

言葉に関しても興味があって、辞書や校正に関する本はついつい読みたくなる。今回はこちらの本である。

とても寒い以前に、そういう話を聞いたことがある。見坊豪紀氏の書籍だったろうか。それを読んだとき、今度は私の方が飛び上がるほど驚いた。

なんで「とても寒い」に驚くんだ?

「とてもきれい」「とても美味しい」など、いつでもどこでもありそうな表現だ。どういうことなんだろう。

実は「とても」という言葉は

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石牟礼道子著『苦海浄土』

石牟礼道子著『苦海浄土』

水俣病を綴った本作は、著者が水俣病患者から見聞した内容を元にしているという。ルポルタージュとも称されることもあるようだが、だがしかしその文章はあまりに美しく優しく細やかで、まるで小説のようで頁を繰る手が止まることはない。『この作品は、誰よりも自分自身に語り聞かせる、浄瑠璃のごときもの、である。』とは著者の言葉であり、ああなるほどと大きく首肯するのである。現実か。それとも物語であるのか。

水俣病は

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【読書】半藤 一利『昭和史 1926-1945』

この国は、失敗から学ぶということをしない国なのだと、つくづく思う。終戦において、多くの公文書を焼き捨てたと聞いたことがある。学ぶつもりがあれば捨てはしないだろう。自分達が可能な限り善意を尽くしたのであっても捨てはしないだろう。失敗から学ばないのは政府や官僚ばかりではない。国全体がそうなのだろうと思う。公文書館があることをどれほどの人が知っていようか。公開を請求しても得られるものは真っ黒に塗りつぶさ

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【読書】北村巌『大逆罪』

「大逆事件」と言うとき、この国には四つの事件がある。「幸徳事件」「朴烈事件」「虎ノ門事件」「桜田門事件」。本書はこのうち「幸徳事件」「朴烈事件」について語ったものである。表紙の人物は朴烈と金子文子。第Ⅰ部が朴烈事件。第Ⅱ部が幸徳事件。朴烈事件のみならず、幸徳事件についてもいろいろと知れた。

朴烈が連行されたのは関東大震災の二日後である大正十二年九月三日。朝鮮人に対する虐殺が横行する混乱の中で名目

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