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【エッセイ】シャネルはロキソニンっていう話

表参道に並ぶブランドショップ。

ピンヒールで颯爽と歩く綺麗なお姉さん。

全身抜かりなく手入れされたその体には

高そうな服にシャネルのバッグ。
    
  

歩くダイヤモンドだと思った。
  
  

眩しくて見ていられないほど

キラキラ輝いていて

その全てが喉から手が出るほど欲しかった。
  
  

このお姉さんは絶対幸せで

きっと素敵な恋をしていて

大きい家に住んでいて

なんでも買える財力があって。
  
  

全てを手に入れた女の完成形だと思った。
  
  

20代前半。
  
  

スーパーに行くと1つ1つの値段を

電卓で計算しながら買い物していた

田舎っぺ少女、あやかの遠い昔の記憶である。
  
  

そんな田舎っぺ少女も30代。

あの時憧れていた

お姉さんと同じくらいか

もっとお姉さんになった。
  
  

独立して数年。

もうスーパーで電卓を使わなくてもよくなった。

シャネルだって買いに行ける。
  
  
  

あれ?
  
  
  
  

大きな部屋も手に入れた。

素敵かはこの際置いておいて、恋もした。

エステもマッサージも旅行も買い物も

好きな時にできる。
  
  
  
  

私はきっと幸せ

私はきっと。。。

きっと、幸せなはずだった。
  
  
  

2020年。
  
  

灰色だった。
  
  

物質的な豊かさは

手に入れるその瞬間、

とんでもないチカラで私の痛みを消していく。
  
  

でもその持続時間はとても短い。
  
  

ロキソニンだと思った。
  
  

ブランドものを手に入れるたび、

まるでロールプレイングゲームで

課金アイテムを装備していくかのように

どんどん強くなっていく気がした。
  
  

気がした。

気がしただけだった。
  
  

好きなブランドの服を着て

最新コスメでメイクして

リッチな男に腕を絡ませ

シャネルを揺らして表参道を歩く。
  
  
  

満たされなかった。
  

なにひとつ。
  
  

家に着く頃、

ロキソニンの効き目は切れていた。
  
  

あの頃憧れたお姉さんたち。
  
  

私を通り過ぎて行ったあのお姉さんたちも

やりきれないなにかを

抱えていたのかな。
  
  

体中課金アイテムで固めて

私は強い。

だから大丈夫。

そう思って歩いていたのかな。
  
  

芸能人のインスタで

高級ブランドを頭から足の先まで

タグ付けしている姿も時々悲しげに映る。
  
 

そんな余計なお世話まで脳裏に浮かんだ。
  
  
  

2021年。
  
  

美しいものは好きだ。

今だってシャネルは可愛い。

ヴィトンだってプラダだって心躍る。

オシャレして街に繰り出す日だってある。
  
  

でも、それだけじゃ満たさないことも全身で理解した。
  
  

武器をいくら手に入れたって

持ち主に武器を使いこなすスキルがなければ

それはなんの意味も持たないのだ。
  
  

満たされないなにかを

外に求めているうちは永遠続く負のループ。
  
  

ロキソニンの効き目はとても短く、

飲み続けていると効き目が薄れる。
  
    
  
  
  
  
  
  
  

  

ノーブランドのジーンズにTシャツ。

お気に入りの白いスニーカー。
  

太陽がこっちを見ていて

ぴーが隣で笑ってる。
  

左手には大好きなタリーズのロイヤルミルクティ。
  

叶えたい未来はここにある。






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