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またの名をおみそ汁ガブ夫。 本棚 https://booklog.jp/users/1…

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またの名をおみそ汁ガブ夫。 本棚 https://booklog.jp/users/12d1dbe209708eb3 好きなNetflixドラマは「ダーク」です。第32回やまなし文学賞。

マガジン

  • [小説]夏の犬たち

    全13回。頭を洗わない女子大学生のよもぎは今日も男の体を眺めていた。

  • 本の感想

  • [小説]子どもの範疇

    「マンガ雑誌をつくりたい」1994年を舞台に、小学5年生の翠子のささやかな願いと心のざわめきを描く小説

  • 勝間和代十夜

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2023年に読んでおもしろかった本

2023年はさほど本が読めず、また悲しいかな読めてもどんどん内容を忘れていきました。そんなぼんやりした記憶の中でも「おもしろかったな」と印象に残った本です。 ◾️『われらみな食人種 : レヴィ=ストロース随筆集』レヴィ=ストロース 以前にレヴィ=ストロース入門の新書を読んだときに、いとこ婚の分析のところが複雑すぎて頭が煮えたってしまった記憶がある。しかしこれはエッセイなのでそこまでむずかしくない! サンタクロース論でなまはげもサンタの親戚なのだと知る。食人/食肉論もおもし

    • 新学期・ブレイバーン・選評

      新学期が始まるので、子供のスモックの胸の部分に布名札を縫いつけるということをしていたら、1枚につきおよそ40分以上かかってしまった。 進級のたびに毎年やっていることで、最初の年は「こんなん5分10分だろう」とたかをくくっていたら、思っていたよりも時間がかかることにげっそりとしたものだった。効率よく素早くやろうとするほどに、てきめんに無残に縫い目が乱れた。布用ボンドという手もあるが、あれは繰り返し洗濯すると取れてきてしまう。翌年からは早く仕上げようとするのは諦めて、いっそ目を細

      • 「クレソン」新聞連載と表彰式

        昨日3月16日から、やまなし文学賞受賞作「クレソン」の連載が山梨日日新聞で始まっています。全20回(日曜・月曜と、祝日翌日は掲載休み)で、甲府市の画家の古屋良昭さんによるとても印象的な挿画も掲載されています。 また昨日は山梨県立文学館で表彰式もありました。 選考委員の町田康さん、堀江敏幸さん、青山七恵さん、それに三枝昻之館長ともお話しさせてもらいました。関係者の方やそのご家族の方にも声を掛けてもらい、自分は緊張でうわずりっぱなしでしたが、あたたかい雰囲気にほぐされていきま

        • やまなし文学賞を受賞しました

          昨年秋に応募した「クレソン」という題の小説が、このたび第32回やまなし文学賞を受賞しました。 応募総数は621編で、選考委員は町田康さん、堀江敏幸さん、青山七恵さんです。なんと……。受賞の連絡をいただいたとき、喜びとあわせて現実感のなさにすうっと血の気が引いていきました。 「クレソン」は3月中旬より山梨日日新聞で連載され、のちに「やまなし文学賞作品集」として刊行されるそうです。機会があれば、ぜひみてみてください。

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        2023年に読んでおもしろかった本

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        • [小説]夏の犬たち
          13本
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          2本
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        • 勝間和代十夜
          3本

        記事

          2023年に買ってよかったもの

          去年買って生活が便利になったり改善されたものを記録します。 無印良品 ウールクルーネックTシャツ Tシャツとあるけれど、透け感があるので冬のインナーとして使用。3枚買って毎日着ています。ウール100%なのでサラッとしていて温かく、防臭効果が高い。旅先で着替え用を1枚忘れたときに二日連続で着ても汗や臭いが気になりませんでした。 ポルトガル製のウール混ソックス 足が冷えやすいので秋冬に履いている。化繊だけのものだと汗をかくとジトッとして後から冷える感じがあるけれど、これは

          2023年に買ってよかったもの

          イーディス・パールマンを繰り返し読む

          2023年はイーディス・パールマンという短編小説作家を知って、その作品を繰り返し読む年でした。現時点で邦訳は『双眼鏡からの眺め』(早川書房)、『蜜のように甘く』『幸いなるハリー』(ともに亜紀書房)の3冊が出ていて、そのどれもが本当にすばらしかった。人間あんまり見事なものを目の当たりにすると呆然として言葉を無くしてしまうものだけれど、イーディス・パールマンの作品群にもそういうものがあった。一編読み終えるごとに力なく頭を振るような 作者は登場人物たちに入れ込みすぎない。共感のぬ

          イーディス・パールマンを繰り返し読む

          段取り八分『ザ・キラー』

          Netflix映画『ザ・キラー』(デヴィッド・フィンチャー監督)を観ました。仕事のできる殺し屋がうっかりミスをしてしまい、クライアントから落とし前の襲撃を受ける。その報復を粛々としていくというあらすじ。 この「粛々と」部分がおもしろくて見入ってしまった。「段取り八分、仕事二分」という言葉があるけれど、この「段取り八分」部分を大変に冴え冴えと見せている。それで残りの「仕事二分」は状況に翻弄されつつもなんとかシャンシャンと収めていく。現実世界のもっとずっと地味な仕事もおおよそこ

          段取り八分『ザ・キラー』

          生活など召使いに任せておけ

          などとうっすら考えていたことがある。若い頃、召使いもいないのに。生活のような些事は脇に置いて、もっと重要で大切なことにかまけるべきだと。自分のささやかすぎる暮らしにはあまり目を向けず、いい本や映画、音楽、美術、そういった素晴らしいものに意識を向けよう。そういうマインドでいたら案の定、すべてのものが仮置き、仮決めで、仮暮らしの砂の中になにもかも埋もれていった。 ところがここ最近は生活ばかりである。生活ハイと言ってもいい。具体的には、家中の収納の見直しと殺風景な壁面の装飾の検討

          生活など召使いに任せておけ

          事務の仕事

          30代初めのころ、大学という場所で働いてみたくなり、それまでの仕事を辞めてとある私大の契約職員になった。職種はいわゆる事務の人である。契約満了までの数年間を働いた。 その仕事で毎日のように業務連絡のメールを送り、毎月の打ち合わせで顔を合わせた先生がいた。昨日その人の訃報を聞いた。 事務的に処理するような書類仕事の中ですら、独特の文体の、こんな言葉に何度も接した。事務仕事をしながら世界への不安が取り払われるというのは不思議な経験だった。そのことをここに記録します。

          事務の仕事

          娘は母をいかに殺す/殺さないのか「水星の魔女」

          「父殺し」という言葉がある。「オイディプス王」「カラマーゾフの兄弟」「スターウォーズ」など、物語の中で繰り返し描かれてきた「息子が父親を殺す」というモチーフを指す。この言葉に、女の自分はどこか他人事というか、蚊帳の外のような感覚を抱いてきた。息子が父親を殺すなら、娘は母親にどう立ち向かうか、という物語はあまりに少ない。父親が息子に立ちはだかる壁なら、母親と娘というのは重なり合うベン図の二つの円のような関係で、どこからが自分でどこからが相手かわからないような曖昧な領域がある。娘

          娘は母をいかに殺す/殺さないのか「水星の魔女」

          ガンダムとアニメわからない人(じん)の観る「水星の魔女」

          「機動戦士ガンダム 水星の魔女」を配信で楽しく観ています。自分は年に1シーズン、アニメを観るか観ないかという人間で(最近ので記憶に残るのは映像研とイド:インヴェイデッドくらい)、ガンダムは20代の頃、職場でファーストの漫画を「これ知ってれば世間のおじさんとの会話に困らないから」とゴルフでも勧められるような具合に貸されて読んだくらい。 そういう何もわかってないのがアニメのガンダムを初めて観て、楽しむなかで初心者っぽい素朴な感想がいろいろ積み上がっていきました。 (以下、作品

          ガンダムとアニメわからない人(じん)の観る「水星の魔女」

          笑うしかない居心地の悪さ「アトランタ」

          悪夢というほどではないけれど、変な汗をかいて目覚める夢がある。往来でズボンを穿いていない。駅に行きたいのにたどり着かない。試験前なのに授業そのものに出ていない。 こういう夢には妙なリアルさがあって、非現実的というよりも、超現実的と言ったほうがいいような変な後味がある。 ドラマ「アトランタ」S1に感じるのは、そんなちょっと嫌な夢にあるような超現実感と困惑させられるおかしみだ。 ドナルド・グローヴァー(a.k.a チャイルディッシュ・ガンビーノ)演じる主人公アーンは名門プリンス

          笑うしかない居心地の悪さ「アトランタ」

          小説講座に行ったら小説を書けるのか

          もう10年ほど昔になりますが、小説を書けるようになりたくて大阪文学学校の小説クラスというところに毎週土曜に通っていました。 それ以前もごく短い小説を書いて同人誌に載せたり、文学新人賞に応募して一次落ちしたことはあったのですが、どうにもそこから書きあぐねるというか行き詰まりを感じていたのです。 小説なんて基本一人で取り組むもので、学校に行ったからって書けるようになるのか…?と半信半疑でしたが、結論からいえば、1年半(だったか2年だったか、記憶が曖昧…)通った結果として、なんか

          小説講座に行ったら小説を書けるのか

          Netflixドラマ『ダーク』と『1899』へのファンレター

          Netflixドラマ『ダーク』を観たのはもう2年も前になるのに、今でも視聴中のあの時間をうっとりと思い出してしまう。 ドイツのドラマである。自然豊かな小さな田舎町を舞台に、狭い人間関係がいろいろと入り組んでいる風である。そこに子供の連続失踪事件が起こる。 陰鬱なミステリーサスペンス風に幕を開けるこの作品は、実は超ド級のSFかつ、のっぴきならなすぎる人間ドラマである。こんなの今まで見たこともないと度肝を抜かれまくる物語である。 どうぞシーズン1の5話、5話まで観てみてくだ

          Netflixドラマ『ダーク』と『1899』へのファンレター

          [小説]夏の犬たち(13/13)– 野良のけものたち

          <第一話 <前の話  ビルボが逃げてしまった翌日、君が熱で寝込んでいる間に僕は一人でビルボを探していた。普段散歩していた林道や遊歩道だけでなく、人が入るのを禁じられているような山裾の林の奥にまで足を踏み入れた。間伐もあまりされていないような鬱蒼とした木々の間でコンパスを頼りに何時間さまよっていただろう。  小さな鳴き声が聞こえて、そこに向かうと赤黒い血にまみれてうずくまるビルボの姿があった。近づいてみると、もうずいぶん長いこと放置されていたらしい錆びついた害獣用のトラバサミ

          [小説]夏の犬たち(13/13)– 野良のけものたち

          [小説]夏の犬たち(12/13)– 手紙

          <第一話 <前の話  二月以上は空けていた自分の部屋は、由莉のマンションと比べて狭苦しいのにもかかわらず、がらんとして感じられた。買ったものを食べて昼寝をしようと横になると、頭がむずむずして寝られないのだった。由莉につけられた香水の香りはとうに消え、ベタベタと脂ぎる頭皮のにおいが気になる。毎日洗髪してたから、頭の汚れに敏感になっている。それを認めたよもぎは、なんだか自分に裏切られたように思った。  観念したように立ち上がり、浴室の前に行ってのろのろと服を脱いだ。ずっと使っ

          [小説]夏の犬たち(12/13)– 手紙