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ガンダムとアニメわからない人(じん)の観る「水星の魔女」

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」を配信で楽しく観ています。自分は年に1シーズン、アニメを観るか観ないかという人間で(最近ので記憶に残るのは映像研とイド:インヴェイデッドくらい)、ガンダムは20代の頃、職場でファーストの漫画を「これ知ってれば世間のおじさんとの会話に困らないから」とゴルフでも勧められるような具合に貸されて読んだくらい。

そういう何もわかってないのがアニメのガンダムを初めて観て、楽しむなかで初心者っぽい素朴な感想がいろいろ積み上がっていきました。

(以下、作品の内容に触れています)

・キャラクター画の引きの強さ
アニメを知らない人間なりに、キャラクターの絵を見て「ここに2023年のアニメ表現の粋が凝縮されてるんだろな…」と感じるところがありました。特に好きな表現は、ミオリネの前髪やシャディクの顔の横の髪が一筋落ちているのが、最後に少しだけクルッと翻っているところ。アニメのキャラクター表現の変遷も全然わからないのですが、眉間の間に前髪の束が流れてるのが今っぽいんだな、現実もうざバングとかいって長い前髪流行ってるもんな…ということも思ったり。どのキャラクターの細部にも、フェティッシュなまでのこだわりを感じて、こういう部分を楽しめるのは、キャラクターデザインにこだわる大きな企画のアニメならではと感じました。

・女性キャラクターのバリエーションがおもしろい
スレッタ、ミオリネのWヒロインのキャッチーさだけでなく、ほかの女性キャラクターも豊富なところに良さを感じました。中年以上の女性キャラクターも充実しすぎている。ペイル社の4人組CEOとか映るだけでおもしろい。
なかでも特に感心したのはベルメリアのキャラクターで、「地味で優しそうな40代のお母さん」みたいな風貌性格の人物に「倫理的に問題のあるマッドサイエンティスト」の役割をあてているのが新鮮でした。過ちを責められて泣き崩れるシーンの弱さとふてぶてしさ、そのキャラクター表現に思わず笑ってしまいました(いい意味で)。

・ガンダムの定義の謎/自由さ
「水星の魔女」では独自の設定のもと、ガンダムをほかのモビルスーツとは異なる存在として描いています。とすると、過去の「ガンダム」シリーズだと、他のモビルスーツとガンダムをどう区別してるんだ…?というのが疑問として浮かんできます。歴史ある「ガンダム」シリーズで、こんな風に「水星の魔女」だけのオリジナル定義を作っていいのだろうか。ガンダムに人格まで乗ってるし、旧来のファンは「こんなものガンダムではない」とか怒ったりしないのか?その辺かなり自由なのかな…?とシリーズの懐の深さを感じました。

・プラモ販促アニメの側面
いろんなモビルスーツがたくさん出る!出るのが少しだけでも、かっこいい戦闘シーンをやる! ファンからしたら当たり前のことかもしれないけれど、そうか、プラモの販促アニメでもあるから、たくさん出す縛りがあるのかと、なんか変なところで感心してしまいました。

・しかしモビルスーツがわからない
どれがどの会社、どの陣営のものだったか、見た目や名前もなかなか覚えられない。動きの良し悪しがわからない。これは自分のガンダム蓄積のなさからくる見る目のなさで、ゲーム機は全部ファミコンになるおかんと同じ現象です。完全に雰囲気だけで見ていました。

・対立構造が複雑
「ベネリットグループ内の権力闘争」「宇宙議会連合とベネリットグループの緊張関係」「宇宙議会連合のハト派タカ派」「地球と宇宙の対立関係」「プロスペラの復讐」と対立構造が複雑で、ときに「敵の敵は味方」のように互いを利用し合うので、「この行動でどの陣営が得してどこが損するのか」がすぐにわからず、ここもけっこう雰囲気で見ていました…。

・室町時代か鎌倉時代
この世界では国家が衰退し、代わりに企業が大きな権力を持っているという設定が、当初、頭ではわかってもなかなか飲み込みづらかったです。殺人や違法行為、テロが一体誰によって裁かれるのか、謎すぎる…。しかし、途中から、「これはSF的な未来世界が舞台ではあるけど、社会としては室町時代や鎌倉時代みたいなものなんだ」と受け取るようになって、あれか、大河ドラマみたいな世界だと思えばいいのか!と納得するに至りました。序盤は学園恋愛ものみたいな雰囲気も出していたのに、回を重ねるごとにどんどん室町時代になっていく。なるほど、これがガンダムなのか…。

・元ネタ
冒頭の菜園シーンや決闘は「少女革命ウテナ」から、プロスペラの復讐譚はシェイクスピアの「テンペスト」から、と元ネタについて色々言われているのは知っていました。
ほかに自分がネタ元として連想したのは「デューン 砂の惑星」。パーメットという物質(元素?)を制したものが宇宙を制するというストーリーに、砂漠の惑星デューンから採れる物質メランジを巡る全宇宙規模の争いが重なりました。もっと教養あらたかな人なら、さらにさまざまな元ネタ・引用元が掘り出せる作品なんだろうと想像します。

・展開の速さ
ながら見を許さない展開の速さで、一瞬だけ映る登場人物の表情がなにかの伏線になっていたりと、情報がみちみちに詰まっているのを感じます。海外ドラマにも似た造りで、1、2シーズンを通してずっと退屈しませんでした。

こんなに感想が出てきたのも楽しんだ証で、初心者にもサービス精神あふれる作品だったおかげでしょう。最終話まであと少し、配信待ってます。

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