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[小説]子どもの範疇

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「マンガ雑誌をつくりたい」1994年を舞台に、小学5年生の翠子のささやかな願いと心のざわめきを描く小説
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記事一覧

自分の名前が呼ばれたような気がした | 子どもの範疇 第15話(最終回)

<第一回 <前の話 「こんなことして、ひどいんじゃないですか」  青木が振り向いた拍子に…

ayakomiyamoto
5年前
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頭から消してしまえば逃げられると思っていたことに捕まってしまった | 子どもの範疇…

<第一回 <前の話  その夜、翠子は南さんが電車に乗ってしまう夢を見た。  南さんを引き…

ayakomiyamoto
5年前
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これから一緒に本をつくろうよ | 子どもの範疇 第13回

<第一回 <前の話  翠子は自転車に乗って本屋兼文具屋に向かっていた。日曜の午後だった。…

ayakomiyamoto
5年前
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ロリコンみたいかなって | 子どもの範疇 第12回

<第一回 <前の話 「あなた橋本くんの妹さんなんだ。橋本くん元気?」 「はい、元気に高校…

ayakomiyamoto
5年前
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本格派のコピー機 | 子どもの範疇 第11回

<第一回 <前の話  いまにもおほんと咳払いでもしそうな態度で「すぐだからね」と言うおり…

ayakomiyamoto
5年前
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こんなに満ち足りた気分になっていいものだろうか |子どもの範疇 第10回

<第一回 <前の話  休み時間に一組をのぞきに行くと、南さんが普段通りに学校に来ている姿…

ayakomiyamoto
5年前
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月野うさぎと地場衛が中学生と大学生なのはアニメ版だけの話 | 子どもの範疇 第9回

<第一回 <前の話  記憶をたよりに角を一度か二度を曲がると、南さんの住むマンションがあらわれた。一分ほど、建物に入るかどうかを躊躇したのち、えいやとドアを押す。「押す」ではなく「引く」のドアだったと気づいて、あっと思ったときには体はもうマンションの中に入っていた。  エントランスの奥にある自動ドアの前まで来ると、翠子は立ち止まってしまった。ドアの横に鍵穴と番号の並んだボタンがあって、鍵を使うか部屋番号で呼び出さないと開かないようだった。南さんが住んでるのは四階にあるエレ

「南さんって青木先生となんかあるの?」| 子どもの範疇 第8回

<第一回 <前の話  マンガ雑誌・仮称『アルマジロ』についていろいろなことが決まってしま…

ayakomiyamoto
5年前
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雑誌の名前を決める | 子どもの範疇 第7回

<第一回 <前の話  こずちゃんの家は外壁がケーキのように真っ白で、庭にはどの季節にも花…

ayakomiyamoto
5年前
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少年ジャンプには付録がない | 子どもの範疇 第6回

<第一回 <前の話  ほかの雑誌も見てみたいと思って、翠子は兄の部屋のドアを叩いたのだっ…

ayakomiyamoto
5年前
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「好き」には「本当」と「本当じゃない」があるという | 子どもの範疇 第5回

<第一回 <前の話  帰りのエレベーターに乗って、4、3、2……と扉の上にあるライトが順…

ayakomiyamoto
5年前
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南さんが住むマンション | 子どもの範疇 第4回

<第一回 <前の話  ガラスの重たそうなドアを開いて南さんは中に進む。南さんの住んでいる…

ayakomiyamoto
5年前
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みんなが教育実習生にまとわりついている | 子どもの範疇 第3回

<第一回 <前の話 それからしばらく南さんに声を掛けることができなかった。休み時間や放課…

ayakomiyamoto
5年前
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南さんは特別な人 | 子どもの範疇 第2回

<第一回  自分はマンガの筆を折り、かわりにマンガ雑誌の編集者になるのだと、前の日に覚えたばかりの言葉を二つもつかっておずおずと宣言したときのこずちゃんとおりっぺの反応は、まことにふんにゃりと手ごたえのないものだった。  こずちゃんの首は畳と並行になるくらいに傾げられ、おりっぺは足首にできた虫刺されの跡に気を取られて上の空になりかけていた。それにひるまずに熱を込めて説明していると、翠子の膝に畳の目が食い込んでいった。 液体がじわじわと染み込むように、ようやく翠子の