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キリング・ミー・ソフトリー【小説】130_会いに来いよ


中旬頃から莉里さんと連絡が滞りやすい状況に陥る。またも愛情を試されるかのような行為には嫌気が差す。近付けたと思いきや遠ざかって、結局どうすれば満足?
身勝手な振る舞いはさておき、こちらは持ち前のパソコンスキルとやらを活かして高校時代(帰宅部で暇潰し)に取得した資格のレベルを上げ、今月試験へ挑むが特に問題もない。


更に去年の前・後期で一先ず学んだ内容を腐らせまいと簿記検定を受けることに決めた。勉強に専念する環境を与えられ、却って好都合。これまで机に向かうなり睡魔に襲われてしまい、機会を失った諸々も次こそは頑張る。経済とか経営などの学部に身を置く成果を是非残さなくては。


英語能力テストのスコアを真司と競い合う約束を交わすも既に進路を定める彼とは異なり、揺らぎ遊び呆けただけあって、出来れば2年生のうちに地道な積み重ねを始め、さもこの後を計画的に見据えた人間かの如く……いずれ役立つ。


勿論、淳と共同のチャンネルでオリジナルを2人で弾き、動画投稿サイトに載せるという活動も忘れてはならなかった。
だが、新作の曲調は大概が荒れ狂ったもの。
「いい加減、俺がイラッとしてきたわ。〈待て〉が長過ぎる。」
知成と昼食を楽しむ、たかがそれのみで従来とは桁違いの視線を浴びる。世にも喧しい休憩。


「つーかしばらく放置プレイで宙ぶらりんにすんでしょ、どうせ消されんの。もう、俺マジ忙しくていちいち構ってらんねえわ。」
「あれフツーに惚れてるじゃん。なんで拗れるってか素直になれんかなあ。」
「ならもっと来るよ。莉里さんは自己肯定感高めて承認欲求満たすのが趣味。俺に好かれることでね。」


時を経て分かり切った為、逐一動じず。ごちそうさまと手を合わせれば知成が溜息を吐く。
「はあ、ちーがついに汚れちまった。俺ツラい。」
「知らんがな。」
ちーには誰よりも幸せになって欲しいと彼は訴えた。しかし、とうにその定義さえ朧げ。


部屋へと眠る莉里さんのストールから、日増しに香水の匂いが薄れる。



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